前回に引き続き、歯科治療を根本的に見直す最新ケアをご紹介。今回はフィンランドの歯磨き事情です。フィンランド人は日本人より歯を磨かないのに、虫歯や歯周病にかかる人が少ないそう。その背景には予防とメンテナンスについての考え方の違いがありました。
フィンランドの歯磨き回数は1日0.9回
「成人の歯は全部で28本。これが日本人の場合、80歳で残っているのは、わずか10本というデータがあります。しかも歯科医を受診した回数が多いほど、歯が少ないのです」(辻村傑先生)
手をかけるほど成績が悪いといえる、日本の歯科医療の現実…。保険制度は安価に手軽に治療ができる、すばらしいシステムです。しかし、歯科に関しては、それが逆に歯を失う原因になっているという皮肉な側面もあるのです。
「フィンランドでは歯磨き回数の国民平均が1日0.9回、日本は2回以上。それでも圧倒的に日本人より虫歯や歯周病が少ないのです。その背景には、歯のケアに対する考えが根本的に違い、予防とメンテナンスが徹底されているということがあります」
今、日本でもこうした北欧式の予防管理が注目されています。最先端の検査技術で虫歯や歯周病になるリスクを科学的に解明して、口腔内の健康を維持するシステムです。
例えば、サリバテストという唾液検査を行うと、唾液の量や虫歯菌の種類と数、唾液の中和力などが判定できます。唾液の中和力とは、食事によって酸性に傾いた口の中を、元の弱アルカリ性に戻す唾液の力のこと。これらを総合的に見て、その人の虫歯リスク、それに見合うケア方法を個々に指導してもらうことができます。
サリバテスト(唾液検査)
菌の種類や数、中和力など、8項目を調べて、虫歯や歯周病のリスクを測定。自分の口内環境を知り、管理に役立てます。各項目の値が8角形の外に近い方が、口内環境がよいといえます。
ミュータンス菌は、ムシ歯を引き起こす病原性が最も強く、数が多いとムシ歯になる確率がとても高くなります。
ラクトバチラス菌は、ムシ歯や不適切な詰めものの中にすみついており、口腔環境が不良であるほど増殖します。
食事をとるたびに、口の中は数分で酸性になり、飲食回数が多いと、長時間酸性の状態が続くため、ムシ歯になりやすくなります。
ムシ歯予防は、まず毎日の歯みがきから。磨き残しはやがてプラークと呼ばれる細菌の塊となり、ムシ歯の原因になります。
フッ素はムシ歯予防に特に効果があり、ご家庭でのフッ素の使用と、診療所でのフッ素塗布を組み合わせると予防効果はさらに高くなります。
過去ムシ歯にどれだけなったのかというデータは、今後のムシ歯予防にとって重要です。過去にムシ歯で治療した歯の本数を調べます。
ムシ歯に対する抵抗力のうちで最も大きな力は唾液です。分泌量が多いほど、ムシ歯の予防効果は高くなります。
次回は口内環境に合わせた的確なケア法をご紹介します。
撮影/中川十内 イラスト/内藤しなこ 構成・原文/山村浩子
撮影協力/つじむら歯科医院