お酢といえば食欲増進…と思っていませんか? 今、スーパー調味料として注目されている「酢」の効果は、生活習慣病予防、免疫力アップ、疲労回復、食欲増進と多岐にわたります。その健康効果を知って、毎日の生活に上手に取り入れましょう!
今回の話を伺った先生
東京農業大学名誉教授。専門は発酵食品学、醸造学(酢)。テレビや雑誌、ラジオなどで“お酢博士”としてもおなじみ。著書・監修書に『やせる・若返る・病気が消える! お酢レシピ 完全版』(笠倉出版社)『自分で治す お酢で病気知らず』(エイ出版社)など
お酢のチカラ、知っていますか?
毎日「大さじ1」で健やかな体づくりを
人間とお酢のかかわりは、遠くメソポタミア文明の時代まで遡ります。日本には中国を経由して5世紀に伝わり、酢を醸造・販売するようになったのは江戸時代になってから。爽やかな風味で食卓を彩り、人々の健康を守ってきたお酢の健康効果について、お酢博士の小泉幸道先生が教えてくれました。
「私たちは体験的に、お酢に疲労回復、食欲増進、殺菌・抗菌など多くの健康効果を感じてきましたが、最近、それが科学的に解明されてきています。
酢は原料や製造法によって、その成分の種類や含有量が異なり、味や香りの特徴となります。一般的な酢の成分は、水分が約90%、酢酸が4〜4.5%、その他の有機酸(クエン酸やリンゴ酸など)が約0.4%、アミノ酸0.1〜0.6%、残りの1〜6%はミネラルなど。酢の健康効果のもとは、この中の『酢酸』です。酢酸は酸味と香りの素であり、お酢のさまざまな効能は、この酢酸の働きによることが研究で証明されているのです」
体内にグリコーゲンが不足すると疲労が蓄積しますが、糖と酢を一緒にとれば、特に肝臓のグリコーゲンがスムーズに補給され、疲労回復の効果が。
また、食欲増進に効くのは、酢の酸味や香りが味覚や嗅覚を刺激し、脳の摂食中枢に働きかけて唾液を盛んに分泌させるからです。
「食欲がないときは、最初に酢を使った料理を口にしてみましょう。唾液が自然に出てきて、食べ物が喉を通りやすくなります。食べ物を飲み込みにくいお年寄りにもおすすめです」
唾液には、粘膜に付着した病原体を殺し、咳やたんなどの形で体外へ排出する免疫の機能も。お酢で唾液量を増やして免疫力アップを目指しましょう。
酢酸は、高血圧の改善にも有効です。高血圧の人を対象に行なった実験では、大さじ1の酢を毎日とると、6週間で最高血圧が平均15㎜Hg、最低血圧が平均6㎜Hg下がったとの結果が。さらに酢酸には、脂肪の合成を抑制し、分解を促す働きもあります。やはり毎日大さじ1の酢をとることで、12週間後には内臓脂肪の数値が摂取前に比べて約5%下がったとの実験結果も出ています。お酢には、内臓脂肪を減らし、血中中性脂肪値を下げるといううれしい効果もあるのです。
食後の血糖値上昇を緩やかにし、糖尿病を予防・改善する、カルシウムを吸収しやすくし、骨を強くし、骨粗しょう症を予防、活性酸素を退治して老化を防ぐ…など、お酢の多彩な効能はほかにもたくさん!
「その高い健康効果を得るには、『1日大さじ1』以上のお酢を何らかの形で『毎日』とることが大切です。ポイントは、毎日とり続けること。朝でも夜でも効果は同じですが、なるべくなら食事と一緒がいいでしょう。お酢をそのまま飲むと、喉や胃の粘膜が荒れてしまいます。飲む場合は必ず5〜8倍に薄めて。お酢の酸味が苦手な人は、はちみつを加えたり、ジュースやミルクに混ぜたりすれば、酸味や香りが気にならなくなりますよ」
撮影/竹内章雄 スタイリスト/大畑純子 構成・原文/北村美香