【お話を伺った方】
管理栄養士として大手企業社員食堂、病院、保育園に長年勤務。食育、災害食、SDGsに力を注ぎ、2014年に管理栄養士の業務を行う会社を起業。レシピ開発を行うほか、全国で講演・講座・ワークショップを行う。NHK「あさイチ」、日本テレビ「ヒルナンデス! 」「ZIP! 」、TBS「マツコの知らない世界」「王様のブランチ」などテレビ・ラジオに出演多数。缶詰レシピ、レトルトレシピの達人としても活躍中。『からだにおいしい缶詰レシピ(法研)』『体と心がよろこぶ缶詰「健康」レシピ』(清流出版)ほか著書多数。
味つけしてある缶詰は、缶汁を調味料代わりに
今泉: こんにちは。管理栄養士・防災食アドバイザーの今泉マユ子です。
今日は、蒲焼きの缶詰で、冷や汁風のご飯を作ります。
ギリコ:冷や汁! いいですね。食欲のない日もサラサラと食べられそうです。
今泉:サンマ、またはイワシの蒲焼き缶はありますか?
ギリコ:はい。サンマもイワシもあります。ふと、うなぎの蒲焼きが食べたくなったときの代用品にしています。
〔上の写真:今回使用したのはマルハニチロの「さんま蒲焼」。缶の裏面の栄養成分表示には、1缶分当たりのDHAやEPAの値も記載されています〕
〔上の写真:こちらも備蓄してあるマルハニチロの「いわし蒲焼」。缶裏面の栄養成分表示を見ると、DHAの値はさんまより低いですが、EPAはいわしのほうが高い!〕
今泉: お弁当のおかずや、おつまみとしても人気のようです。サンマやイワシには脳の働きを活性化して認知症予防に役立つといわれるDHAやEPAが多く含まれています。
また、骨ごとやわらかく調理してあるので、サンマやイワシの骨が丸ごと食べられて、カルシウムたっぷり。
栄養的にもとてもいいと思います。
そして、かば焼きの甘じょっぱい(又は甘辛い)タレも缶に入っているので、この缶汁を調味料として使うこともできます。
イワシでもサンマでも、どちらでもおいしくできますが、今日はサンマの蒲焼きを使いましょう。
あとは…ギリコさん、備蓄食材の中に、何かお茶はありますか?
ギリコ:はい。麦茶、ウーロン茶、緑茶、あとジャスミン茶も1本だけですが、あります。
今泉:ジャスミン茶がいいですね! エスニック風に仕上げましょう。
器にサンマの蒲焼き缶、お茶を入れてご飯にかければ出来上がり
今泉:作り方は簡単です。サンマの蒲焼き缶をボウルにあけて、スプーンなどでサンマの身を崩します。
缶の中に入っていたサンマです。
骨ごと食べられるくらいやわらかく煮てあり、スプーンで崩せるくらいです。
お茶と白すりごまを加えて軽く混ぜたら、あとはご飯にかけるだけ。
お茶の量は好みで調整してくださいね。
仕上げに、今日はトマトとパクチーをのせてみましょう。
今回はボウルを使いましたが、食べるときに使う器で作れば、そのまま食べられてしかも洗い物も減ります!
ギリコ:本当に手軽に作れますね!
★サンマの蒲焼きエスニック冷や汁風
〔材料(1人分)〕
炊いたご飯…100g
サンマの蒲焼き缶…1缶(100g)
ジャスミン茶…100~150ml
白すりごま…大さじ1
好みでトマト、パクチー…適量
〔作り方〕
① 器に缶汁ごとサンマの蒲焼きを入れて崩し、ジャスミン茶と白すりごまを入れて混ぜる。
② ①をご飯にかけて、食べやすい大きさに切ったトマトやパクチーをのせる。
ギリコ:なんだか、おしゃれな感じ!
ジャスミン茶と一緒だと、脂ののったちょっと濃い味のサンマの蒲焼きが、さっぱりした味わいに。
パクチーの香りもよいアクセントですね。パクチーは大好きなので、「追いパクチー」しちゃいます。
今泉:三つ葉をのせてもおいしいですよ。
麦茶、ウーロン茶、緑茶で作ってもOK!
きゅうりのぬか漬け、みょうが、青じそなどを入れると和風の冷や汁風になります。
ギリコ:自分で漬けたきゅうりのぬか漬けがあります!
しかも、みょうがと青じそは昨日の晩、カツオのお刺身を食べたときの残りがちょうどあります。
〔上の写真:急遽、味変を楽しむため作ってみた和風バージョン。ぬか漬け歴12年のギリコですが、料理にぬか漬けを活用したのは初めて〕
ギリコ:これもおいしい! 先ほどとはまた違った感じ。
あっさりしていておいしいです。
非常時に誰もがすぐに使えるよう、備蓄食材の「見える化」を
ギリコ: ところで、今泉先生。さっき、ふと疑問に思ったのですが、先生はなぜ「防災食」に関する仕事をするようになったのでしょうか。何かきっかけがあるのでしょうか?
今泉: きっかけは、2011年3月11日に起きた東日本大震災です。
当時、下の子は幼稚園の年長組で卒園式の前でした。
「お留守番してみたい」と言われ、私が少し外出したときに地震が起きました。
パパと中学1年生だった娘が帰宅できたのは、次の日のお昼過ぎ。
幸い私は30分程度で自宅に戻れたのですが、もしもっと遠くに出かけていて、何時間も帰宅できなかったら、息子は一人で食べるものもなく、どうしていただろうと不安になりました。
というのも、家にたくさん食品はありましたが、小さな子どもが一人で食べられるものは、当時の私の家にはほとんどなかったということに気づいたんです。
こうした経験から「食」を仕事にしている身として、災害食に強い関心を持つようになりました。そして、防災食を研究し、管理栄養士としてそのノウハウを広める活動をするようになりました。
ギリコ:震災での経験が、現在の防災食アドバイザーとしての活動の原点だったのですね。
東日本大震災の経験から、防災や備蓄を心がけるようになった人も多いと思います。
また、それ以降も各地で災害が起きています。今、それぞれが災害時にどのように行動するか、きちんと考えておく必要がありますね。
今泉:食材を備蓄する際には、管理の仕方にもちょっと気をつけていただけるとよいと思います。
保存は温度変化や湿気が少ないところで、という基本はみなさんすでにもうよくご存じかと思いますが、さらに、ぜひ皆さんにお伝えしたいのが、備蓄食材の「見える化」です。
ギリコ: 「見える化」というと?
今泉:まず、備蓄食材はパッと「見える」場所に置くことです。
わが家では本棚に並べています。
ギリコさんも扉を開ければすぐに「見える」ように、リビングのクローゼットに備蓄している食品を整理して置いているので、とてもよいと思います。
パントリーの奥にしまいこんだり、非常持ち出し袋にしまったままだと、いつのまにか押し入れの奥のほうに追いやられてしまったり、存在すら忘れられてしまうことが多いみたいです。
そうなると、いざというときに取り出せない、なんていうことになり兼ねないです。
また、「食料品や日用品などの生活必需品を少し余分に買っておき、古いものから使い、使うごとに買い足していく」というローリングストックを実践するには、常に「今、何が家の中にあるのか」が、パッと見てわかる状態であることが大切です。
「備蓄品パトロールの日」と「防災食の日」を決めて、賞味期限切れを防ぐ
今泉:さらに、おすすめしたいのが「賞味期限の見える化」です。
缶詰は見える場所に黒マジックで賞味期限を記入(付箋やマステに書いて貼ってもOK)、レトルト食品は賞味期限の順番に並べて期限の近い物から食べる、賞味期限ごとにかごや棚を分ける、など家族でルールを決めて、賞味期限を意識して賞味期限切れを防ぎましょう。
また、カセットガスボンベやアルコール消毒液にも使用期限があるので、購入した日や使い始めた日を記入するのもおススメです。ちなみに使用期限の目安は、カセットガスボンベは製造から7年、アルコール消毒は3年以内の使い切りが推奨されています。
あとは、「備蓄品パトロールの日」と「防災食を食べる日」を決めるとよいですね。
例えば、
備蓄品パトロールの日…毎月○日
防災食を食べる日…第4土曜日
というふうに決めて、備蓄品パトロールの日に「賞味期限が近い!」と気づいたものを、次の防災食を食べる日に食べるようにすると、賞味期限切れになってしまうことを防ぐことができます。
ギリコ:うーん。ちょっと面倒だけど…。少なくとも、誰でもすぐに取り出せる場所に何があるかパッと見ればわかるように食品をストックしておくことだけは、必ず続けます。
そして、備蓄食材を準備できたら次のステップは、いかに上手にローリングストックしていくかですよね。
缶詰でこんなに簡単においしい料理が作れるなら、これからはローリングストックを順調にできると思います!
取材・文/瀬戸由美子
★今泉マユ子さんのオフィシャルブログ「レトルトの女王 缶詰の達人♪」はこちら!