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東京の3週間後?コロナ爆発下のNY、感染対策の徹底ぶり

杉本佳子

杉本佳子

杉本佳子
ファッションジャーナリスト兼美容食研究家
1988年よりニューヨーク在住。1989年よりファッションジャーナリストとしてファッション、ファッションビジネス、小売りビジネスについて執筆。2013年より美容食研究家としても活動し始め、ブログ「YOSHIKOlicious Beauty」とインスタグラムを通じて、美肌効果の高い食材をなるべく使い、美味しくて見た目がお洒落な料理紹介している。見た目がきれいだと気分が上がり、食べて美味しいので嬉しくなり、美容と健康にいいのでさらにハッピーになる「3回ハッピーになる料理」がモットー。ファーマーズマーケットなどで買う生命力のあるオーガニックの食材をなるべく使う。食材の意外な組み合わせでも定評がある。

連載「負けない、メゲない。60代「NYでパートナー探し」の道」の関連トピックに特化した発信をThreadsでやっています。興味をもっていただける方は、是非フォローしてくださいね!

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3月12日、日本の7都府県への緊急事態宣言より約3週間早く、国家緊急事態宣言が出たアメリカ。3月22日にはニューヨーク州に自宅待機の行政命令が発令されて、約1ヶ月。4月16日には自宅待機命令が5月15日まで延長されました。日本で言われる「自粛」よりさらに厳しい「自宅待機」が義務付けられたこの街ですが、引き続き高度の緊張状態は続いています。「東京の3週間後の姿か?」とも言われるニューヨークの「今」が少しでも参考になればと、3月のレポートに続き、特別篇にてご紹介したいと思います。

 

地下鉄やバスに乗らないのも「エッセンシャルビジネス」で働く人を守るため。強い意識を社会で共有

 

この1ヶ月間、ニューヨークの状況は本当に目まぐるしく変わりました。毎日朝から晩まで救急車のサイレンが聞こえ、セントラルパークや、テニスのUSオープンの試合会場にまで野外病院がつくられ、中心部のマンハッタンに巨大な遺体安置場も作られました。3月末には約2分に1人の割合で、感染者が亡くなり、現在ニューヨーク市だけで、新型コロナウイルス肺炎で亡くなった方は1万人を超えました。私の周りでも、コロナで亡くなった人や闘病中の人を複数知っていることが珍しくなくなり、心痛む日々が続いています。

 

この自宅待機令発令中は、いわゆる「エッセンシャルビジネス(=生活維持や感染克服のために必要不可欠な仕事)」に携わっている人以外は、食料品と医薬品の買い物、近所での散歩や犬の散歩、ジョギングやサイクリングなどの軽い運動のための短時間の外出(同居する家族を除きすべて単独行動)のみ認められていますが、ソーシャルディスタンシングが実行されていないとみなされたら、最高1000ドルの罰金が科されます。

 

エッセンシャルビジネスのリストにはスーパーマーケット、薬局、ごみの収集、病院、ハードウエアストア(金物店)、ガソリンスタンド、車の修理会社、銀行、郵便局、動物病院とペットストア、ファーマーズマーケット、交通機関、タクシー、レンタカー会社、運送業、アニマルシェルター、酒屋、ニュースメディア、コインランドリーなどが含まれています。

 

今、ニューヨークでは、こうした仕事に就いている方々(エッセンシャルワーカー)を徹底して守る意識が社会に共有されています。たとえば最近、ある不動産会社から届いたメールにこんな写真がついていました。どうやら地下鉄構内の、いわゆるマナー広告のようです。

 

「家にいよう/感染を止めよう」という地下鉄運営会社によるキャンペーンの一環と思われるサイン。「エッセンシャルワーカーですか? → いいえ → なぜここでこれを読んでるの? → 家に帰りましょう」と、キッパリ! 

 

エッセンシャルワーカー以外の人は、公共交通機関の利用を控えるよう言われています。そもそも地下鉄は感染の可能性が高い場所の1つ。運転士さんの間でも感染が広がり、運行本数が25%減っています。そのため、最近の地下鉄は結構混んでしまうことがあり、エッセンシャルワーカーの方々が通勤に時間がかかって困っているとニュースでも見ました。私たちが無事に暮らしていられるのは、エッセンシャルワーカーの方たちが危険を冒して働いていてくださっているから。彼らにほんのちょっとでも楽をしていただくためにできることの1つは、地下鉄が少しでも混まないことに貢献することです。

私は感染予防のためしばらく地下鉄に乗っていないのですが、こんなサインを見せつけられると、彼らのためにも乗るべきではないな、と実感しました。

 

ちなみに、この不動産屋さんからのメールには、「家があるなら、そこにいてください。家が必要なら、探すお手伝いをします」とのメッセージが書かれていました。思わずくすっと笑ってしまいましたが、こういう時はユーモアも大事ですね。

 

 

ニューヨーカーのもうひとつの足であるバスも、運転手さんの感染が増えて、やはり運行本数が減っています。運転手さんに誰も近づけないように、今はこのように車内に規制がされています。通常は前から乗ってお金を払うのですが、現在は運転手さんからより遠い、後ろのドアから乗ります。料金はなんと無料です。

 

 

バスの前方3分の1ほどが、通行禁止地帯に。接触を減らすためにバス料金を無料にするという徹底ぶりです
車内がガラガラで窓が開いていたら、地下鉄よりはバスの方が感染のリスクが少ないかもしれません。でも、ソーシャルディスタンス(約1・8メートル)がとれないくらい人が乗っていることがありますので、やはり私は、特別なことがない限り乗らないようにしています。

 

うつさない、うつらない。個人間の感染防止策も、一段とレベルアップ!

 

それでも最近、ニューヨークのクオモ州知事が、「ニューヨークの感染状況はピークに達した」と宣言し、ニューヨーカーはみんな、ほっと胸をなでおろしました。コロナで入院する人が減少し続けていることが主な理由ですが、まだまだ油断は禁物です。州や市も、そして個人も、さまざまに感染予防の工夫を続けています。

 

ニューヨークのデブラシオ市長は先週、外に出る時には「フェイスカバー」をするようにと呼びかけました。「マスクでなくてもいい、バンダナでもスカーフでもなんでもいいから」と。市長は15日の記者会見では、フェイスカバーをしていないお客の入店を断るようにと、スーパーマーケットに呼びかけ、言うことを聞かないお客がいたら警察に通報するように呼びかけました。また、公共の場で他者と一定の距離をとれない時はマスク(フェイスカバー)をしなければいけない、地下鉄、バス、タクシーなどでは運転手も利用者もしなければいけないという行政命令が4月17日から施行されることになりました。

私はニューヨークに住み始めてもうすぐ32年になりますが、アメリカ人はマスクをとても嫌がります。その見た目から「病気をもっている人」という強いイメージがあるからです。でもコロナが流行し始めてから、マスクは急激に一般化しました。マスクだけでなく、ラテックスの手袋をし、サングラスをかけ、帽子をかぶっている人の姿をストリートで本当に多く見かけるようになりました。

ストリートでは、若者のための非営利団体がマスクと手袋のセットを無料で配布する光景も見られるようになりました。

 

このようなラテックスの手袋も、出かける時の必需品になりました。私の手を見て「キミはもう持ってるから」と、私にはくれませんでしたが。はい、大丈夫です。(笑) 

 

この時の私はこのようないで立ちでした。写真には映っていませんが、手にはもちろんラテックスの手袋。オーガニックの食材が多いホールフーズマーケット前で、店内に入るために並んでいるところです。スーパーマーケット、ドラッグストア、魚屋さん、銀行、酒屋さん、どこに行っても「ソーシャルディスタンス」をとれるように入店人数を制限しているので、営業中のところは行列ができています。

 

路上には、以前は見なかった青いバッテンマークが。ここを目安に並んでくださいということですね。店の入り口には、持ち手が消毒された買い物かごが用意されています。

 

店内で見かけた、見慣れない巨大な袋の中身はスープ! おこもり生活の長期化で、家族の多い家庭には、こういうサイズが重宝されるのかもしれませんね。全体に店頭の食品は品薄傾向。全国的な感染拡大により、生産者への感染の影響も懸念されています

 

窓のないスーパーマーケットに買い物に行く時は、特に気をつけます。買ってきたものは、包装がついているものは消毒用アルコールをしみこませたペーパータオルでふいて除菌し、そうでない野菜や果物は、冷蔵庫に入れなくてもいいものであれば、しばらく手を触れないようにします。

もちろん帰宅後の手洗いはしっかりするうえ、携帯電話、鍵、クレジットカードなど、外出中に触れたものはすべて除菌しています。

 

ちなみに、この日初めて、スーパーマーケットで「フェイスシールド」をつけて買い物カートを押している女性を見かけました。サンバイザーから下に向けて透明のカバーがまっすぐ下がっているようなものです。その女性がすらりとしたエレガントな雰囲気だったせいもあるかもしれませんが、全然違和感はありませんでした。もしかしたら、ちょっとお洒落なファッションアイテムになるかもしれない? と思ったほどです。目の粘膜からの感染予防のために、目元を守ることは大切ですが、サングラスですと細かい表示を読んだり色を確認したりしづらいことがありますので、透明のフェイスシールドの方が便利かもしれないとも思いました。

 

こちらのスーパーマーケットは、3月下旬くらいからでしょうか、レジの人とお客さんとの間に透明な仕切りをつけました。スーパーマーケットで働いていてコロナで亡くなった若い女性の記事を最近見ました。人が殺到するスーパーマーケットは、やはりエッセンシャルビジネスであり、ゆえに過酷な現場なのです。

 

日本ではまだ、近距離での対面販売の危険性がそれほど叫ばれていないようですが、実際ニューヨークでは無防備でいたために感染が起きているのです

 

弱い人を守り合う、ニューヨーカーたちの姿に心が温まる場面も

 

こんなに厳しいNYの日常ですが、少し心温まる変化もあります。

コロナが流行り始めてから、朝の1時間ほどを高齢者に限定しているスーパーマーケットが多くなりました。シニア層は特に感染が心配されますし、行列に並ぶのは体力的にも大変でしょう。このスーパーマーケットは、朝6時から7時までをシニア・アワーにしています。それにしても開店時間が早い! 私が7時ちょっと過ぎに行ったときは、さすがに並ばずに入れましたが、朝8時を過ぎると行列ができていることが結構あるんです。

医療従事者であることを名乗り出れば、レジを優先的にすませて早く店を出られる配慮をしているスーパーマーケットもあります。

 

小さい字のほうが、「シニア時間」の案内文。その下には「ソーシャルディスタンシング」の、わかりやすい表示も

 

買い物に出かけるより宅配を頼む方が安全と言われていますので、宅配を頼む人も多いのですが、希望の配達日時の予約が難しくなっています。そこで、外出が特に困難なシニアの方々、からだの不自由な方々、免疫の低い方々のために、買い物を代行して届けるボランティアグループもできています。インビジブル・ハンズ、コロナ・クーリエズといったこれらのグループは、ドアの外側に買ってきたものを置いて、それを依頼者に知らせ、直接会って渡すことはない「コンタクトレス」方式です。インビジブル・ハンズは3人の20代の若者たちが始め、コロナ・クーリエズはサイクリストたちが始めて自転車で買い物と配達に回っています。若い人たちのこうした自発的な活動に、希望を感じています。

 

失業者も大量に出ていますので、無料の食事も多く配られています。ニューヨークの公立校は閉鎖になって1週間で、オンライン授業の開始と共に、平日1日3食、取りに行けばもらえる食事のサービスを始めました。栄養源を給食に頼っている子供たちがいるためです。最初は子供だけでしたが、失業した人たちのために、大人も取りに行けば誰でももらえるようになりました。

 

ニューヨーク市はさらに大量の食事を無償で提供するために予算を増やし、11000人のタクシー運転手をその配送のために雇うと発表しました。タクシーも感染の危険が高いとみなされて利用する人が激減していますから、タクシー運転手の方々にも少しは手助けになることでしょう。失業者のために無料の食事を提供しているレストラン、病院で働く人たちのために無償で食事を届けに行っているレストランもあります。ラーメン屋さんの中村屋ニューヨーク店では、日頃から衛生管理で使っている自社製造の消毒液を、容器を持参した個人に無料でわけています。消毒液が手に入りにくくなっているためで、「レストランですが、食事を何も購入しなくてもおわけします」と呼びかけています。本当に心温まります。

 

エッセンシャルビジネス以外の営業はいまだ認められていませんが、励まされるようなメッセージを掲げている閉店中のレストランもあります。毎晩7時には、エッセンシャルビジネスで働く人たちに感謝の気持ちを示す2分間の拍手が街に鳴り響きます。まだ辛抱が必要ですが、ニューヨークはきっと大丈夫と思わせてくれます。

 

誰もが同じ状況に耐えている。そう思うだけで辛く寂しい気持ちが少し和らぎます

 

 

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