こんにちは、いかがお過ごしでしょうか。
コロナ渦に見舞われているこの状況でも変わらずご相談が寄せられているものがあります。
それは離婚と財産分与についてのご相談。
そこで今回は離婚とお金についてご紹介します。
連載の第14回、第15回目でも離婚とお金について取り上げましたが、今回は夫の方から離婚を切り出されたケースです。
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相談者:K子さん(52歳、パート主婦)
家族:夫(会社員 58歳)、ひとり息子(22歳 社会人)
住居:持ち家(住宅ローンの返済まであと2年)
『相談内容』
夫が10か月前に突然家を出ていきました。
「出張」といっていつものように出かけたのですが、帰る予定日になっても何も連絡がないので「夕飯どうするの?家で食べるの?」ってメールしたら「いらない。そっちには戻らない。今後のことを相談したいので、いずれこちらからまた連絡する」って。
冗談かと思ったら……本当に帰ってこなかったんです。
最初は何が起きたかわかりませんでした。
それ以来夫は電話にでないし、ラインも既読にならない。
頭が醒めれば戻ってくるかと期待しましたが、3週間経っても音沙汰なし。
それで一か月待ったところでとにかく夫の会社へ行き、昼休みに待ち伏せしました。
夫を捉まえて話をきいたら、
「別れたい。財産は半分渡すから」
と言うばかりでそれ以上は、理由はもちろん、どこでどう暮らしているのか頑として何も言いません。
夫婦だけで解決したかったのですが、さすがに父親が家にいないのを不審に思った息子から「父さん、どうしちゃったの」ときかれ、やむをえず夫がもうこの家には戻るつもりがなく、私と別れたがっていることを話しました。
それで今度は息子が夫と話をしにいってくれたのですが、信じられないことに「父さんには彼女がいるんだって。随分年下らしいよ、意外にモテてたんだね」というではありませんか。
相手は夫の勤める会社の東北にある営業所で以前働いていたらしいということも息子の話で知りました。
それで謎が解けました。
夫は昔東北エリアを担当していて、年中出張に行ってたんです。
息子の話から察すると、どうもそのときに知り合ったらしい。
だとすると場合によっては10年近くもの間浮気されていたことになります。
しかも若いコと。
なのに私、まったく気づきませんでした。
家のローンはあと2年、ちょうど夫が定年になる60歳で返済終了です。
息子も春から社会人になりました。
今はコロナ騒ぎで会社に行けずうちにいますが、いずれお金が貯まったら一人暮らしをしたいようです。
息子を無事に社会に送り出し、やっと私もラクになるわって思った矢先に夫にこんな目に遭わされるなんて……私が何したっていうんでしょう。
結婚して子どもができ、それで会社をやめて家庭に入り、夫と息子の面倒をひたすら見てきたというのに。
今回のことがあって、いろいろ自分なりに結婚生活を振り返ってみました。
そりゃ、義母や義姉とはお世辞にもうまくやってきたとはいえなかったし、夫より息子のことをついつい優先にしてきたのは認めます。
でもそんなのうちだけじゃない、どこの家庭でもよくある話でしょ?
だからこんな裏切り行為をされる理由が私にはわかりません。
……ごめんなさい。
肝心のお金のことを説明しないとけませんね、今日はそのために来たのですから。
出ていった後も夫からは光熱費と食費など必要最低限の金額は振り込まれてきます。
ただ一番大きな金額が入っていた定期貯金の通帳と印鑑は夫に持ちだされています。
財産は夫名義の自宅、定期貯金2つと普通貯金です。
普通貯金のほうは光熱費の引き落としなどに使うためのものだったのでもともと残高は100万円もありません。
そういえば夫は株をお遊び程度にやっていたみたいですが、私はまったくそれについては何も知らされていません。
あ、それとおととし義父に続いて義母が亡くなったのですが、夫はいくばくかすでに相続しているか、これから相続するはずです。
けれどこれも詳しいことはきいていませんでした。
夫からやっと連絡がきたのは出ていって半年経ったとき。
「離婚してほしい、財産は半分わたす。
なので一度話し合いたい」
といってきましたが、黙殺しています。
夫に何をどう言いくるめられたのか、最近では息子も
「ここまできたら別れてすっきりしたほうがいいんじゃない。
母さんもこれからは好きなように暮らせばいいんだよ」
と言うようになりました。
けれど私と離婚したあと相手の女性と一緒になるつもりだとしたら、、、、
夫の思うようにさせてたまるか、意地でも離婚してやるもんかって思います。
なぜかというと出ていった後も夫から最低限の生活費は振り込まれているので今のところは暮らしていけるからです。
でも今はよくても将来は経済的な心配があります。
夫が定年後引き続き生活費を振り込んでくれるのだろうか?と。
定年後再雇用制度を利用して夫が働き続けたとしても、収入は確実に減ると思います。
私も息子が高校に入った後、近所のゴルフ練習場でパートをしていますが月に手取り7万円いくかどうかです。
だったらいっそのこと財産を処分して半分もらい、老後の計画を立てたほうがいいのかと心が揺れ動いています。
あと相手の女性にも慰謝料を請求してやりたいです。
ちょっと前に舞台女優の夫がほかの有名女優と浮気したって騒ぎがあったとき、舞台女優が夫の浮気相手の女優に慰謝料を請求するのではっていうネット記事があって「だったら私も請求できるよね」って思いましたが、できますよね?
……話が長くなってしまいましたが、経済的に見て離婚したほうがいいでしょうか?
それとも離婚しないで別居を続けたほうがいいでしょうか?
夫の裏切りは許せませんし、イヤがらせと思われようとも最初は離婚には応じないつもりでいました。
けれどもう夫婦に戻るつもりはないのだし、最近はこのまま時間だけが過ぎていくのも果たして自分にとって得になるのかと考えるようになりました。
父は亡くなりましたが、母は一人で暮らしています。
「まだまだ大丈夫よ」と言っていますが、いずれ近くに住むか同居したほうがいいのではと考えていたところですし、今はとにかく自分が経済的に少しでも安心して暮らせるようにしたいのです。
私は、まずは何をどうしたらいいでしょうか。
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不倫関係からの離婚の申し出とは、K子さん、お辛かったですね。
まず、K子さんのやるべきことは、2つです。
●自分のこれからの人生をどう楽しむか、将来をどう描くかということを考えること
次に
●「稼ぎ力」をつけること
です。
というのも、離婚はお金(慰謝料や財産分与、あるいは養育費)の問題でもありますが、そのお金を考えるうえで大事になっていくのが経済的自立と精神的な自律です。
(※自立……他からの助けや支配なしに一人で物事を行うこと/自律……自分で立てた規範、考えに従って行動すること)
たとえ、慰謝料や財産分与で希望の額(二人で築き上げた財産の範囲の中で)を手にしたからといって、それだけでは人生100年時代といわれる今、K子さんの今後の生活ややがて訪れる親の介護を考えると安心できる金額にはなりません。
財産分与とは、今までの夫婦として努力して貯めた分の清算です。
清算したお金だけを頼りに生きていくのではなくて、新たな人生をこれから自分で切り開いていくために、自分自身の稼ぎ力をつけることはとても大事なのです。
10年もの間隠していた夫の不倫に対して、
「悔しい」
「夫の思うとおりになんか、させたくない」
そういうお気持ち、お察しします。
きちんとご夫婦として向き合い話し合う時間もなく、好きな人ができてその人とは別れられないから(妻であるK子さんに)別れてくれとは、なんと都合のよい言い分なのでしょう。
怒って当然だと思います。
でも別居の10か月間で
「もう私たちが夫婦に戻ることはありません、なのでこのまま時間だけが過ぎていくのも、果たして自分にとって得になるのかと考えるようになりました。」
という気持ちの変化もおきたようですね。
離婚後は、別れていく夫がどのような暮らしをしようが、K子さんには関係ないこと。
K子さん自身の幸せになる人生設計が必要です。
これからステキな男性が現れるかもしれません。
いくつになっても女子は女子。
大いにときめいたりしちゃいましょう。
そんな心の余裕も持ちながら、財産分与されたお金と今後働いて得たお金でこれからどのように生きていくのか。
それを考えるのが自律です。
そして、経済的に困窮しないように、手元にあるお金を上手に使い、働いて稼ぎ力をしっかりとつけていく自立が今後求められていきます。
離婚は、人生のリスタートです。
繰り返しますが、慰謝料や財産分与で手にしたお金を活きたものにするためには、K子さんが自分の幸せに向かって、人生を歩き出す必要があるのです。
当初にくらべればだいぶ心が落ち着いてきたとは言え、本意ではない離婚に臨むわけですから、離婚時に相手に請求できるお金(慰謝料)と、夫婦であったときに築いてきた財産を分け合う(財産分与)では損をしないようにしていきたいですよね。
なので慰謝料と財産分与についてしっかりと知識をつけて、離婚の協議に臨みましょう。
まずは、K子さんが気になっている慰謝料について少し説明しましょう。
〈慰謝料とは〉
慰謝料って、離婚するときには誰でももらえると思っている人が多いですけれども、違うんですよ。
肉体的、精神的苦痛に対する慰謝料を支払う義務がある場合に限って、慰謝料は請求できるのです。
慰謝料は、夫(妻)が
・浮気・不倫相手と不貞行為をしたことで夫婦関係が破たんした場合
・ DV、不貞行為、モラハラといった不法行為によって被った精神的なダメージを受けた場合
それをお金に換算して、その損害を償うためのものです。
損害賠償とも言えますね。
たとえば
「価値観の違いを我慢してきたのは、精神的な苦痛だった」
というだけでは、慰謝料の請求を認められるケースは少ないです。
今回のK子さんの場合は夫が不貞をしていたことを認めるか、K子さんがその事実を証明できれば慰謝料の請求ができます。
夫は息子さんにはすでに打ち明けているようなので、おそらく離婚の具体的な話し合いとなれば不貞のことを隠すつもりはないのではと思います。
また夫だけでなく不貞した相手がK子さんという妻の存在を知っていてその関係を続けたのであれば、相手にも請求することができます。
〈慰謝料の相場〉
慰謝料の相場をよく聞かれますが、私がこれまで23年間ご相談を受けてきた中での範囲でいうのであれば50~500万円です。
調停で話し合われる場合は、大体が200万円でした。
500万円のケースはレアでした。
「妻には何の落ち度もないのだが、彼女とは別れられない。申し訳なさでいっぱいだが、どうしようもない気持ちを金額にした」という理由で払っていました。
本心かどうかは、わかりません。
K子さんが夫に対して慰謝料を請求するのであれば、時効がありますので早めに行動を起こされた方がよいです。
〈慰謝料請求の時効〉
慰謝料請求の時効は,下記期間のいずれか短いほうで完成すると法律で定められています。
①配偶者の不貞行為および浮気・不倫相手を知った時から3年間
②浮気・不倫関係が始まったときから20年間
K子さんの場合は、配偶者の不貞を知ったのはつい最近のことですから、3年以内に請求すれば問題ありません。
慰謝料は離婚をするかしないかにかかわらず相手に請求できるものですから、K子さんのように離婚がまだ決まっていなくても請求することができます。
次回は財産分与についてご説明しますね。
明るく気さくな人柄でギリコもファンになってしまった安田さん。
安田さんが所長の「元気が出るお金の相談所」↓