あなたのご家庭では、誰が家計管理をしていますか?
家庭によりますが、夫婦のどちらかが一括して管理するパターン、夫婦それぞれが生活費を出し合いそれ以外は干渉しないパターンなどが多いようです。
それぞれの家計管理の方法ごとに、メリット・デメリットをみていきましょう。
【パターン1:夫または妻のどちらか1人が家計を一括管理】
夫または妻が夫婦の収入をまとめ、それを生活費、お小遣い、貯金、投資、などに分けて管理しているパターン。
〈メリット〉
家庭全体のお金の流れが明確になり、無駄を省きやすく貯金額もわかりやすい。
〈デメリット〉
お金を管理している人に万一のことがあったら、その後の管理ができなくなる可能性も。
【パターン2:夫と妻が別々に家計を管理】
共働きで自分の収入は各自で管理するパターン。それぞれ毎月決められた額のお金を出し合い、生活費などはそこから出していきます。
〈メリット〉
自分のお金は自分が好きなように管理できる。
〈デメリット〉
「相手がちゃんと貯金をしてくれているはず」とお互い期待して油断し、気づいたらあまり貯金がないということになりがち。
それぞれメリット・デメリットがありますが、一括して家計全体を管理する方が、お金の流れがわかりやすくなるので、お金が貯まりやすくなります。
◆夫婦のどちらが管理していても、互いに家計の把握を
家計については、誰が管理するにせよ、夫婦で一緒に状況を把握しておくことが大切です。
先ほどご紹介したふたつのパターン別に、それができていない時の注意点をみていきましょう。
パターン1「夫または妻のどちらか1人が家計を一括管理」で危険なのは、夫に毎月定額の生活費をもらって、そのほかは夫が管理しているから全然わからない、という状態。
その場合、夫に万一のことがあったら大変!
どんな保険に入っているのか、どこの銀行を使っているのかわからず、どれだけ貯金があるのかわからないと、まさかの時に困ってしまいます。
まずは、取引のある銀行の名前と支店名、保険証書など書類の管理場所、といったことを教えてもらっておきましょう。
パターン2「夫と妻が別々に家計を管理」が危険なのは、相手が貯めてくれてるだろうと思ったらお互い好きなだけお金を使っていた、ということ。
相手の給与明細や口座残高などをお互い知っているに越したことはありません。
でもそれに抵抗があるなら、教育費、老後資金、など必要なお金の目標額を決めておき、そのためのお金を貯める共通口座を用意するなどしてお互いに貯金額をきちんと把握することだけでもしておくといいでしょう。
ここまで読んでみて、〝夫婦に必要なもの〟とは何だかわかりましたでしょうか?
それはお金について、しっかりと話し合うことです。
相手任せにして自分がノータッチになっていては、万一の時に困ってしまいます。
逆に自分だけが家計管理に孤軍奮闘しているのも、息切れしてしまいますよね。
そうならないためにも、普段からの話し合いは大切です。
そしてお金のことを話し合えている夫婦は、普段から自然と会話が多いはず。
つまり、会話がある夫婦ほど、お金が貯まりやすいと言ってもいいでしょう。
みなさんのおうちは、夫婦の会話は多いですか?
いまさら夫と積極的に話すなんて……と思ってしまうかもしれませんが、50代の今こそ意識してコミュニケーションをとってみてはいかがでしょうか。
◆老後の生活を資金面でシミュレーションしてみよう
余談ですが、家計相談にいらっしゃる方のうち、夫婦でいらっしゃる方は、お互いがパートナーのお金の状況について把握できている人が多いです。
もし、お金について情報共有していない、お互い話しづらいけれど知っておきたい、という方は、一度夫婦で家計相談に行ってみるのもひとつのいいきっかけになるかもしれません。
一方で、夫または妻のどちらかがおひとりで相談にいらっしゃる方は、あまりお金のことについてパートナーに開示されていない場合が多いです。
またおひとりでご相談にいらっしゃる方は、〝家計の見直し〟よりも「私が一人になった場合、経済的にどうなるのかを知りたい」という方が多いように思います。
もしかしたらいずれ離婚するかも(または、離婚したい)、という気持ちがあるのかもしれません。
離婚といえば、多くの方は知識として、離婚した場合には年金分割制度があることをご存知です。でも制度があることは知っていても、いざ離婚したとき、この分割制度でどれだけの額がもらえるかをわかっている方はほとんどいません。
実は、もらえる金額は本当に少ないのです。
というのも、分割できるのは婚姻期間の厚生年金部分だけですから。
分割制度は「合意分割制度」と「3号分割制度」があります。
「合意分割制度」は夫婦の合意か裁判により分割割合を決定し、上限は多い方の厚生年金金額の1/2です。
「3号分割制度」は、2008年4月1日以降に専業主婦(主夫)で国民年金保険の第3号被保険者だった場合が対象。
夫婦の合意は必要なく分割割合は厚生年金額の1/2と決められていますが、第3号被保険者だった期間だけが対象になります。
離婚したらお金の面で損をした、なんていうのは嫌ですよね。
でも現実として、離婚すると、女性側が厳しい状況になることが多いです。
もし離婚がすでに頭にちらついている方なら、まずはお金のことをプロの目で見てもらうのもいいかもしれません。
また夫と死別した場合についても、もらえる遺族年金が思ったより少ない額で驚かれる方が多いです。
老後のお金のことを考えると、一番いいのはずっと共働きをして一緒に長生きするパターン。
逆に、専業主婦や、扶養内で働くパート主婦は、夫に万一のことがあった時に心配です。
もし老後に不安があるのなら、少しでもいいから今から働きましょう!
そして、健康を維持しながら上手に暮しをダウンサイジングできるようにしておくことが大事です。
私にはスキルがないし、なんてい言う人もいますが、大丈夫。
50代はまだ若いから、今から資格を取ったり、何か好きなことでスキルを磨いたりするのも全然ありです。
「自分なんて…」とあきらめるにはまだ早いですよ!
【教えていただいた方】
1969年生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年に日本総合研究所に入社。在職中にFP資格を取得、98年に独立系FPとして転身。現在は、各種セミナーや講演、執筆、個人相談など幅広く活躍。CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格取得。「がんとくらしを考える会」理事、城西国際大学経営情報学部非常勤講師なども務める。著書に『がんとお金の真実(リアル)』『親の介護は9割逃げよ』『病気にかかるお金がわかる本』(共著)『お金が貯まる人は、なぜ部屋がきれいなのか「自然に貯まる人」がやっている50の行動』『終活1年目の教科書』など多数。
取材・文/倉澤真由美、写真/山田真由美