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まず「壁は無難な白」をやめてみる。すると部屋の印象が大きく変わります。「みんなの憧れ、行正り香さんにきく〝50代。これからの住まいに思うこと〟」

50代になり、老後(人生の後半戦)を心地よく過ごしたい、それには住まいについて見直してみたいという人に向け、料理家であり、北欧インテリアに造詣が深いインテリアコーディネーターの行正り香さんに部屋づくりのポイント教えていただく連載。今回はインテリアと色の関係についてです。

行正り香
行正り香さん
料理家、インテリアデザイナー
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福岡県生まれ。高校3年生からカリフォルニアに留学。大学卒業後は広告代理店でCMプロデューサーとして活躍後、料理研究家となる。またデンマーク親善大使に選ばれるなど北欧インテリアに造詣が深く、インテリアコーディネーターやリフォームプランナーとして、多数の家づくりに携わる。料理レシピ本のほか、インテリア本、英語スピーキング教材など著書は50冊以上。2023年、東京国立博物館のアンバサダーに就任。館内のレストラン・カフェ「ゆりの木」の照明ディレクションのサポートを務める。最新刊は『人生を変えるリノベーション』(講談社)。

 

こんにちは、行正り香です。

 

前回は、絵画を飾ることで家のグレードが格段に上がること、ひいては一枚の絵を自宅に飾ったことで「その絵にふさわしい暮らしをしたい」と生活のクオリティまで大きく変わったお宅の事例などをお話ししました。

〔上の写真:行正さんに絵が部屋という空間、ひいてはそこに住まう人の心にどれだけ素晴らしい効果を及ぼすのかを実感させてくれたきっかけが、この絵。「洋画家、野崎義成さんの作品で、家の中にまるで森があるかのよう。特にコロナ禍で家にこもるしかなかった期間、この絵の存在は大きかった」〕

 

今回は〝色の決め方、使い方〟というテーマでお話をしていきたいと思います。

 

まずインテリアを考えるうえで大事なこと、それは大きい面積のものから色や素材を決めていくということ。

 

ここでいう大きいものの筆頭が、壁と床です。

 

 

◆壁の塗料は20色くらいトライアルして決定

 

壁の色は心地よさを左右するものです。

日本は真っ白い壁の家が多いですが、心地よい印象を与える壁の色は、真っ白よりもアイボリー。

そして日本の一般的な住まいの広さを考えると、濃い色より淡い色のほうがおすすめです。

 

アイボリーとひと口に言っても、1色だけではありません。

黄みがかった色、ピンクがかった色、ブルーが入った色などたくさんのアイボリーがあります。

我が家の壁、天井、柱の色も一見ただの白に見えるかもしれませんが、これに決めるまでに20色くらいトライアルしました。

また、統一感を出すために、壁を塗る際に扉や冷蔵庫も同じ塗料で塗ってもらいました。

こうすると家電の中でもひときわ大きい冷蔵庫も悪目立ちせず、生活感が出ません。

 

壁の色を決めたら、次は床の素材と色を選びます。

 

床は壁だけではなく目指すインテリアとの相性もあるので、その点も考えていきます。

我が家の場合、家具はチェリー材のもので統一しているので、床はベージュのウールのカーペットを選びました。

 

〔上の写真:「大量の赤ワインをこぼしてしまったこともあるけれど、拭けばちゃんと汚れは落ちます」というウールのカーペット。行正家では、カーペットの感触を味わいたいので、スリッパは使わない〕

 

ウールのカーペットは素足で歩くととても心地よく、適度な厚みがあるので足にも負担が少ないのです。しかもお手入れも簡単! おすすめです。

 

◆茶色のグラデーションをベースに、差し色をきかせる

 

こうして壁と床の色が決まったら、次は差し色を決めていきます。

これは1色か多くて2色までに絞りましょう。

 

私の家は家具が茶色のグラデーションで、壁はアイボリー、床はベージュですので、差し色は赤にしました。そこでクッションや、小物、絵を赤が使われているものにし、インテリアに統一感を出しています。

 

このとき差し色を取り入れる割合は、全体の2割以下に抑えるようにしましょう。

 

ただ、ここまでやってみた段階で「赤だけだと落ち着きすぎてしまうかな」と考えました。

そこで、居間にひとつだけブルーの椅子を入れてみたのです。

 

それによりあえてリズムをくずし、動きを出してみました。

 

このブルー、使用する割合が多いと逆に効果が出ないので、全体の5%以下、なくてもいいかなという程度で抑えてあります。

 

色に関していえば、ほかには絵と家具もちょっとずつ色つながりを持たせています。

例えば、絵の中に使われているブルーと椅子のブルーがつながっていたり、絵の中の赤とクッションの赤がつながっていたりします。

 

ブルーを取り入れるアイデアは、いろいろなインテリア雑誌や洋書などを見て同じような事例があったので、それを参考に実行しました。

 

私はインテリアに関しては、雑誌や洋書、写真集や映画の中に登場した部屋などで誰かの成功事例を見たら、それを自分の中に落とし込んでアレンジしてみることにしています。

インテリアは金太郎飴のように画一的だと、つまらないものになってしまうケースが多い。

 

無難にまとまっているけれどちょっと個性を出したいときは、このようにブルーを加えてみたように、あえて違うジャンルのカラーを加えてみるのもおすすめです。

 

家具も茶色のグラデーションで統一しつつ、でも同じテイストのものばかりで固めないようにしています。

それは同じものばかりでそろえるとつまらなくなってくるからで、我が家では椅子も飛び石のような感覚で形の違うものを間に入れています。

〔上の写真:ハンス・J・ウェグナー、アルネ・ヤコブセン、オーレ・ヴァンシャーといったデンマークの名だたる家具デザイナーの椅子が並べられたリビング。写真手前の個性あるデザインの5脚の椅子が不思議と調和しているのは「色と材質感を統一しているから」〕

 

 

◆小物も並べ方でリズムをつける

 

こうしてインテリアのリズムをあえてくずして動きをつけるやり方は、小物を並べるときにも生かしています。

 

こちらはライブラリースペースにある棚の上ですが、並べ方に工夫をしています。

 

左から右へ、小さなものからだんだん大きなものになるように並べていますが、形や色がそろいすぎないよう、動きが出るようにしています。

また、高くて水やりすることができない場所は、本物のような質感のフェイクグリーンを探して、それを飾っています。

〔上の写真:ライブラリースペースにある棚の上のグリーン。「至近距離で見ても、本物にしか見えない」と取材チームも驚く精巧さ〕

 

玄関から入ってすぐの梁にも、骨董市や旅先で買い集めた花瓶を置いています。

こちらも同じ形のものは隣同士にしないことで、動きが出るように並べています。

今回は壁と床の色の決め方、空間全体の統一感の出し方、差し色の使い方、あえて違うジャンルの色や形を少しだけ取り入れることで動きを出すことについてお話ししました。

 

皆さんもベースカラーと差し色を決めて、自分ならではの部屋づくりを楽しんでみてくださいね。

 

次回も心地よい住まいづくりのヒントをお話ししていきます。

お楽しみに!

 

取材・文/倉澤真由美 撮影/本多佳子

 

 

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