【教えていただいた方】
1969年生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年に日本総合研究所に入社。在職中にFP資格を取得、98年に独立系FPとして転身。現在は、各種セミナーや講演、執筆、個人相談など幅広く活躍。CNJ認定 乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員資格取得。「がんとくらしを考える会」理事、城西国際大学経営情報学部非常勤講師なども務める。著書に『がんとお金の真実(リアル)』『親の介護は9割逃げよ』『病気にかかるお金がわかる本』(共著)『お金が貯まる人は、なぜ部屋がきれいなのか「自然に貯まる人」がやっている50の行動』『終活1年目の教科書』など多数。
こんにちは。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子です。
前回は、
・「健康であること」は金額に換算すると5000万円の価値があるといわれていること
・健康を過信してしまうと結果的にかえってお金がかかってしまうことがあるので、日頃から食事や運動など生活習慣に気を遣ったり、検診を受けて病気の早期発見に努めるのがおすすめ
というお話をしました。
今回は、病気になったときの経済的備えについてお話しします。
◆「家計に余裕がないから」と保険に入らないのは間違い。でも…
病気への備えといえば医療保険が思い浮かびます。
皆さんは、医療保険に加入されていますか?
私のところに相談にいらっしゃる方にお伺いすると、皆さんほぼ入っていらっしゃいます。
生命保険文化センターのデータでも、9割の人は何かしら医療保険や特約をつけて入っているという結果が出ています。
人はいつ病気になるか、どんな病気になるか予測ができません。
そのため不安になってたくさんの保険に入っている方もいます。
でも、保険加入についての原則は「必要な分だけ」「必要な部分だけ」入ること。
そのためには、以前連載した「50歳からお金が貯まる人になる8つのレッスン」の第2回でお話ししたように、自分が加入している社会保険は何なのか、どんな保障が受けられるのかということをまず調べ、大まかでいいので把握しておくことが大切です。
そして、いざというときはどこに問い合わせをしたらその保障を受けられるのかも知っておきましょう。
例えば公的医療保険制度では、高額な医療費がかかった場合には一定の自己負担額が戻ってくる「高額療養費制度」というものがあります。ただし、公的制度の多くはセルフサービス。自分がこの制度があることを知っていて、利用したいと申告して手続きをすることで、初めて使えるものも少なくありません。
日本はこのような申告主義の制度が多いので、制度について日頃から調べておきましょう。
それがいざというとき、大きな助けとなります。
自分が入っている社会保険で受けられる保障内容を把握したら、それでは補えない部分については預貯金や民間の医療保険に入ることで不足分を補いましょう。
ただ保障内容が重複している場合や、たくさん保険に入っているのに「この保障はどこにも含まれていなかった」という盲点になっているものがあるので、加入中の保険の見直しをすることは大切です。
また「お金がないから保険に入るのは見送る」という人もいますが、お金がないのであればいざというときに困ってしまう可能性はさらに高くなります。
家計に余裕がない人こそ、必要な保険を見極めて加入することが大切です。
◆保険の分野を知っておきましょう
また、保険は3つの分野に分かれています。
第一分野:生命保険
第二分野:損害保険
第三分野:生命保険、損害保険のいずれにも当てはまらない保険(傷害保険、医療保険、がん保険、収入保障保険など)
第一分野は生命保険会社、第二分野は損害保険会社、第三分野は生命保険会社と損害保険会社の両方が取り扱える保険です。
最近の長生きリスクに対応した医療保険など第三分野に注目が集まっていますが、一家の大黒柱が亡くなった場合の死亡保障(第一分野)や、事故か災害、賠償責任など第二分野も必要に応じて準備しておくことが大切です。
◆万人に万能な保険はない! 自分に必要なものは何かを考えて選びましょう
保険は,
結婚して扶養家族ができたら生命保険に入り、家を買ったら火災保険に入るといったように、それぞれのライフステージで必要なものは何かを考えて組み合わせていきます。
保険の選び方は、独身か結婚して家族がいるのか、会社員か自営業なのか、持ち家があるのかないのか、お子さんがいるかどうか、共働きなのかそうではないのかなど、その方が置かれている立場や生活スタイルによって違います。
なぜなら必要な保障が異なるからです。
例えば定年退職して子どもが独立している人なら、そんなに高額な死亡保障は必要なくなります。
これも「50歳からお金が貯まる人になる8つのレッスン」の第2回でもお話ししたことですが、万人に万能な商品はありません。
がん保険を考えるとしても普段から運動する習慣があり、バランスのいい食事を心がけ、非喫煙者で毎年しっかりがん検診を受けている人は、万一がんになっても早期発見でき、それほど治療にお金がかからない可能性が高いです。
だから、最低限の保障で十分かもしれません。
でも病院嫌いで運動不足、タバコもお酒も制限していないという人はがんが見つかった場合、すでに進行しているかも。それなら再発、転移にも対応できる保障が充実したがん保険にを選ぶべきです。
このように自分がどれくらい健康に配慮しているのかや、ライフステージの変化を考えて加入する保険を考えることが大切です。
それに保険商品は日々進化しています。
新しい商品のほうが現状に即しているし、スペックが高いものが多いです。
そうでなければ商品が売れないからです。
例えばがん治療についていえば、以前は抗がん剤治療なども入院することが多かったのですが、今は通院での治療が多くなっています。
ですから「今入っているのは、入院しか保障されない保険。だから通院でも保障される保険に変更したり、保障を上乗せしたりというのはありだと思います。
でも、「新商品のほうがちょっとスペックがいいから」とそのつど入り直すのは、加入時の年齢が上がり保険料がどんどん高くなってしまうことにもなりかねません。
ですから今の自分に対してどういう保障が必要なのかを考え、見きわめることが大切です。
もし自分では見きわめ方がわからないようであれば、ファイナンシャルプランナーに相談するのもひとつの手です。
今はネットを筆頭に無料の情報がたくさんありますが、無料のものはあくまでも一般論的なアドバイスの範囲内にとどまるので、個々の状況に合わせた的確なアドバイスを受けるのは難しくなります。
長い目で見れば、加入済みの保険では自分に必要な保障が足りていないことや、複数の保険に入っていても保障内容が重複していて、結局は無駄な掛け金をずっと払っていたなど、自分ではそれまで気づかなかった点をプロにアドバイスしてもらえるので、結果として経済面ではお得なことかもしれません。
「自分ではよくわからない」と思ったら、ぜひプロを頼ってみてください。
この先の人生がまだ長い40代、50代。
健康に気をつけるとともに今こそ保険を見直し、まさかのときに備えながら、やりたいことを満喫していってくださいね。
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取材・文/倉澤真由美