【言葉のワクチンを打ってくださった方(回答者)】
1953年愛知県名古屋市生まれ。南山大学大学院文学研究科英米文学専攻博士課程満期退学。岐阜市立女子短大、金城学院大学短大部、桃山学院大学、福山市立大学を経て、福山市立大学名誉教授。アメリカの国民的作家であり思想家のアイン・ランド研究の第一人者で、アイン・ランドの大ベストセラー『水源』『利己主義という気概』(ともにビジネス社)を翻訳。著書に『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。』『馬鹿ブス貧乏な私たちを待つろくでもない近未来を迎え撃つために書いたので読んでください。』『馬鹿ブス貧乏な私たちが生きる新世界無秩序の愛と性』(すべてKKベストセラーズ)、『優しいあなたが不幸になりやすいのは世界が悪いのではなく自業自得なのだよ』(大和出版)、『ニーチェのふんどし』(秀和システム)などがある。
<48歳団体職員のモヤモヤ>
独身で子もいません。
このままだと私に何かあったら(例えば認知症や孤独死)、姪や甥に迷惑をかけることになるのでは?と不安です。
それに経済的な面でも、この先不安です。
働いて年金は払ってきましたが、本当にちゃんともらえるのでしょうか。
老後には不安しかありません。
年をとることに、もう不安しかありません。
<藤森かよこ先生があなたに打つ「本日の言葉のワクチン」>
未来に不安を持ちすぎですよ!
取り越し苦労です。
どうなるかわからない未来の恐怖に、今から囚われても意味がありません。
まして、あなたは働いて、しっかり年金を納めてきた人です。
年金額がこの先、減っていく。それは…きっと確かでしょう。
でも、ちゃんともらえますから、そこは安心して大丈夫です。
ところで、私は高齢者のYouTubeチャンネルなどをよく観ています。
例えば「年金チャンネル」というチャンネル。
とても興味深いんです。
あなたの不安材料のひとつである年金額は、人によってかなり違う。
年金チャンネルには、結構な額の年金をもらっている人、かなり少ない年金額で暮らしている人、いろいろな背景を持つ高齢者たちがインタビューに答えています。
現役時代の収入に応じて年金額は決まるので、年金額に差があるのはしょうがないこと。
でも皆さん、結構楽しそうにやっていらっしゃる方が多い。
十分に年金をもらっているのになんだかつまらなそうな人がいれば、貧しくても楽しそうな人もいるんです。
例えば年金をもらいつつ、占い師として年収が1000万円を超える女性。
子どもが自立してから自分の自由のために離婚し、年金額は少ないけれど日々、絵を描き、紙粘土で作品を作るなどして楽しく暮らしている女性。
一方で、気力が湧かず家から出たくないという人もいて、本当にいろいろな高齢者がいます。
いずれにせよ、年金の範囲内で暮らしていようがいまいが、日本の高齢者は案外たくましいんだなと思えて、ちょっと元気が出ます。
経済的な不安はさして深刻な問題ではないと思います。
未来の不安を解消するために最も重要なポイントは、経済的なことより、ズバリこれにつきます。
それは「一人でいても寂しくない自分をつくる」こと。
一人でも寂しくない自分になるには、視野を広げること。
そうすれば、道はいろいろ見えてきます。
視野を広げるためにするべきことは、自分をできるだけ俯瞰すること。
そして俯瞰するには、自分から意識的に離れる必要があり、それには離れるための装置が必要です。
例えば私は名古屋在住ですが、頭の中を空にするために無目的に名古屋の街中をドライブします。
そうすると、「あれ? ここにこんなビルあったっけ?」といった発見が意外とあります。
街の変化に気づくこと、季節の花を愛でること、誰かの小さな優しさに出合うこと。
未知なる恐怖を打破する材料は、こういったニッチなところに、たくさんあるんです。
感受性と他人への敬意があれば、幸せは必ず見つけられます。
姪や甥があなたのために何かやってくれるとは限りません。
究極的には、もしかして孤独死するかもしれません。
でも、孤独死の何が嫌なんですか。
人間社会というものは、それぞれが何かしら世話し合って成り立っています。
そのときは遠慮せず、誰かのお世話になりましょう。
大切なのは、繰り返しますが「一人でいても寂しくない自分をつくる」こと。
それには教養があったほうがいいですから、興味のアンテナをたくさん持って、この世からおさらばするそのときまで、できるだけたくさん、幸せを感じながら生きていきましょう。
取材・文/中沢明子
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