旅する晩餐・前衛的地方料理の新レストラン
旅に出かけるということは、その土地のエネルギーに元気をいただくことだったり、その土地の優しさに癒されることだったりすることなのかもしれません。温泉もそうです。その土地の下から湧き出ているもので、その土地でしか出会えない唯一無二の恵みです。そして、もうひとつ、旅の大きな愉しみは、その土地の恵みをいただくこと。“地産地消”という言葉も日本のあちこちで聞くようになってきましたが、今回、その土地の恵みをいただくということを、もう一歩踏み込んで「地方料理」というジャンルを切り開こうと挑戦する新しいレストランが温泉リゾートホテルの中にオープンするということで、その発表会でみつけた旅ごはんのお話です。
そのホテルは、富山空港から車で15分ほどの場所にある、春日温泉・リバーリトリート雅樂倶。美術館のようなアートな雰囲気の空間と美しい神通川の風景が楽しめる宿です。ロビーからも部屋からも温泉からも、緑色のゆったりとした川の流れ、何度来ても癒される風景です。
ホテルの温泉も雰囲気があるのですが、わたしのお気に入りはスパに併設する露天風呂。湯船に入ると目の前に川面が広がり、清々しい気持ちになります。
ここのスパも大変素晴らしく、ご当地ならではのストーリーがあって感激したのですが、それは行ってのお楽しみということで、今回はレストランの話をいたします。
ここに5月22日にオープンした新レストラン「L’évo(レヴォ)」は“前衛的地方料理”がコンセプト。オーナーシェフの谷口英司さんはフランスの有名レストランで修業し、4年前に富山の地へ。リバーリトリート雅樂倶内のフレンチレストランでシェフとして活躍していらっしゃったのですが、富山の地の食材を求めてあちこちを駆け回って生産者の方々と交流しているうちに、もっと“富山の魅力”“富山ならでは”にこだわった料理を発信したいという思いを抱いて、キュイジーヌ リジョナーレ(地方料理)という新しいジャンルを切り開くことになったそうです。さらに言うと、この発表で感激したのは、ホテルのオーナー石崎氏が深く理解し賛同し後押しして実現しているということ、だからこそ、同じホテルにいながら、オーナーシェフとして独立し新しいレストランオープンになったのです。
わくわくしてテーブルにつくと、一番最初に運ばれてきたのは「
白木のテーブルには引出しがついていて、そこをあけると、レストランのパンフレットと今宵のメニューが。「ここでしか創れない。一人では創れない。」という言葉の深さもいいなあと思って見ていると、アミューズが運ばれてきました。プティフールのような可愛らしい一口には富山を楽しむエッセンスがいっぱい。たとえば、一番右の中身は白エビがアイスクリーム状になったもの。スターターに合わせたお酒は富山の酒蔵「満寿泉」がフランス・アルゴンヌの樫樽で仕込んだフルーティなワインのような純米吟醸酒。
前菜で印象的だったのはこちら。富山といえば、鱒の蕪寿司ですが、これが谷口シェフ流になって登場した一皿。白いパウダーは西洋わさび。マリアージュとしてセレクトされたのは地元の山ブドウをつかった赤ワイン。甘味のある果実のアクセントがぴったりです。
印象的だったお魚のメインは富山の酒「満寿泉」の大吟醸の酒粕をブイヤベースと融合させたスープを脂ののったアイナメにからめていただく一皿、これは忘れられない富山の味になりました。
単に地元の食材を使ってというだけでなく、たとえば、魚料理では、全てその食材の水揚げされた漁港の名前が記載されており、食事をしながら富山県のさまざまな場所を旅しているような楽しみがありました。そして、日本の酒蔵やワインなどの作り手の探究心や挑戦の素晴らしさにも感動。まだまだ知らない富山へと想いも広がる、心豊かな旅の晩餐でした。
富山県・春日温泉
リバーリトリート雅樂倶
地方料理レストラン「L’évo(レヴォ)」
石井宏子
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