小説の舞台を辿る駅のそば弁当~島根県・亀嵩駅~
松本清張さんの小説「砂の器」は、とても衝撃的な作品でした。映画やテレビドラマでも、時代時代の名優たちが演じていて、鮮烈な印象で今でも記憶に残っています。その重要な舞台となった島根県・奥出雲町の駅「亀嵩(かめだけ)駅」からローカル鉄道の木次(きすき)線に乗って旅をしてきました。
雰囲気ある駅舎の待合室。いかにも映画の舞台になりそう・・・。と、思いきや、実際の映画では亀嵩駅は看板だけ登場し、亀嵩駅としての撮影は同じ木次線の出雲八代駅、八川駅で行われたという裏話があります。その理由は・・・。
じゃーん。これです。駅舎内のレトロな切符売り場の内側は、なんと、お蕎麦屋さん。そうなんです。亀嵩駅の駅長さんは、「扇屋そば」の店主でもあるのです。通常は駅員さんとか駅長さんとかがいらっしゃる駅舎のお部屋はダルマストーブがたかれる、あったか~いお蕎麦屋さんの店内、入るとそばつゆの出汁のいい香りがしています。松本清張さんが奥出雲を旅された時にはなかったのですが、映画撮影の少し前に駅の業務と兼務してお蕎麦屋さんが誕生し、楽しい駅になってしまったというわけです。
一番人気は3段重ねの出雲そばスタイルの「割子そば」(700円)。国産そば粉を石臼で挽き、奥出雲の天然水を使用して手打ちする亀嵩そばは、蕎麦の香りを楽しめる逸品。打ち立て湯がき立ての蕎麦を列車を待つ間につるつるっといただきます。
この駅に下車できなくても、列車の中でいただく方法があります。それは、もうひとつの名物「そば弁当」。店頭で頼んで持ち帰ることもできますが、当日の1時間前までに電話で予約をしておくと、列車のドアから受け取ることができるのです。
列車が到着すると、ご主人兼駅長が扇屋そばの法被姿でホームに出て出迎えます。手にしているのは、乗客から注文があった「そば弁当」(500円)。これを代金と引き換えに列車のドアで手渡ししてくれます。
「そば弁当」は、列車の時間にあわせて出来立てを入れて作ります。蓋を開けて特製のそば汁をかければ、すぐにそのままいただけるように出来ています。ねぎ、かつお節、海苔がかかっていて本格派。添えられた食後のドロップがチャーミング。
木次線は通常は2両編成。ワンマンカーで、運転手さんとの距離も近い。景色のいいところではゆっくりと走ってくれたり、単線路線なので、行き違いをする待ち合わせがある駅では「何分後に発車します」と教えてくれたり、スイッチバックの駅では列車の前後を行き来して大活躍。心まであったかくなる鉄道旅でした。
亀嵩駅の手打そば・扇屋そば
石井宏子
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