雪の奥会津で見つけた感動美食~福島県・湯倉温泉 鶴亀荘~
金山町湯倉産山胡桃の「くるみどうふ」の先付に、色とりどりの前菜。福島の郷土料理のイカ人参、雪の中で寝かせた“雪中あさつき”を入れた玉子焼き、お隣町の舘岩産赤かぶ寿し、その横の竹串に刺さっているのは寒風にさらした凍みこんにゃく、干柿チーズ、芋がら、きんかんワイン煮などなど、奥会津の冬を楽しむ食の知恵がこんなに華やかな盛り付けで並んでいます。
奥会津は日本でも有数の豪雪地帯。会津若松から只見線に乗り、会津川口駅からバスで湯倉温泉へ。美しい雪の渓谷にかかる赤い橋を渡ると鶴亀荘が見えてきます。
宿の前を流れるのは只見川。このエリアは「雪食地形(せっしょくちけい)」という特徴的な地形をしています。隆起してできた山の斜面を冬の豪雪が削り取り、山の尾根と斜面はモザイクのように植生が違っています。ゆるやかな川の流れと急峻(きゅうしゅん)な山のコントラストが美しい只見川ならではの景色が宿の前に広がります。
家族で営む温泉宿・鶴亀荘は6室だけの小さなお宿。丸窓から眺める絶景は情緒たっぷり。旅っていいなあと思う瞬間です。
かつての湯倉温泉は川岸に湧く温泉へ船で渡り野天湯で利用されていて、その写真が残っていました。大きな亀が手の傷を癒していたのを漁師が見つけたのが始まりだそうで、傷を癒す神様の恵みとして愛されてきました。現在は、共同浴場と1軒宿の鶴亀荘で利用、泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉。成分総計が5,715㎎もあるミネラルたっぷりの温泉。しっかりと体の芯まで温まって、乾燥しがちな肌をしっとりと保湿。寒い冬にもありがたい泉質です。この内湯の外に、絶景露天風呂があるのですが、この日は修理中。春には再開の予定です。
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ご主人が料理人で、女将さんが唎き酒師(ききざけし)。「お料理は奥会津の地元の食材を多く使っているからね」と、女将さん。会津の蔵元のお酒も揃っているので、料理にあわせて女将さんにお酒を選んでいただくのも楽しい。次に登場したのは、ごぼうのすり流し。ぎゅうっと牛蒡の香りと味わいが凝縮していて五臓六腑に染み入るような美味しさです。
揚物は、里芋まんじゅう。椀の蓋をあけると、ふんわりと柚子がアクセント。もっちりとした里芋の中には胡桃。
次はなんと、洋鉢。大根をコトコト煮てひき肉とチーズで。これがセンス抜群。冬大根にお出汁がしみしみで、ひき肉のソースとチーズが濃厚。これ、ワインにもあいそうです。
何日もかけて骨まで柔らかく煮た、子持ち鮎の有馬煮。丸ごとがぶりといただけば、パンパンに詰まった卵がプチプチと口の中に弾けます。「うちの庭で育てている山椒を使っているのよ」。女将さんの説明にもお料理への愛が詰まっていました。
ごはんも只者ではありませんでした。きなこ豆入りしょうがご飯は、きなこを作る緑豆と体をあたためる“しょうが”がたっぷり。こういう美味しい知恵がいっぱいのご飯を食べていたら、雪の中でも元気でいられるとしみじみ思いました。
デザートまで手作り。ふじりんごのサクサクした歯ごたえを残したままチーズケーキの中に閉じ込めた「ふじりんご入りチーズケーキ」は、甘いものはあんまり・・・。と言っていた男性陣もこれは旨い!と完食。いや~。驚きの美食に感動です。体の芯までぐっとくる温泉とご家族で作るこの美食をいただきに、また、ここまで旅をしてきたいと思う「オイシイ温泉」でした。
福島県・奥会津金山町
湯倉温泉 鶴亀荘 http://turukameso.com/
石井宏子
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