那須高原は眩しいほどの新緑の季節を迎えていました。緑の森に包まれた森の小道の一軒家レストラン「美食工房 ラトリエ・ムッシュー」に到着。楽しみにしていたディナーの始まりです。グランシェフ宮﨑康典さんと息子さんが息ぴったりで創り出す“宮﨑キュイジーヌ”は、ローカルガストロノミ-の先駆け。まさに、それを味わうために旅にでかけたくなる美食レストランなのです。日が暮れるのがだいぶ遅くなってきて、カウンターに座ると、キッチン越しの窓いっぱいの緑、ここはシェフ達の美しい動きを眺める特等席です。
ガラスの器に穴子とイクラ、それがサフランライスと山椒をきかせたソースと相まって、シャンパンや白ワインにぴったりな爽やかなスタート。ナスタチウムの花と葉っぱはエディブルフラワー(食べられる花)で、ワサビのような味わいです。
外が少しずつ暗くなり森の緑が深い色合いに変わる頃、え?餃子?のような風貌の温前菜。「餃子みたいでしょ?これはラビオリです。中には猪のお肉が入っています。」ぱくりとひと口味わうと、ぷりりとした弾力の猪肉から深みのあるジューシーな肉汁がじゅわー。「うわー。これは、まさにフレンチですね。」辛口のシャブリを合わせます。
那須高原の小さな野菜に彩られたミルフィーユのようなお料理。柑橘のソースがいい香りです。「まわりの野菜は、手に取っていただいて、旨みのある藻塩を少しつけてそれぞれの味わいを楽しんでください」。人参は甘くて香り豊か、大根はきりりと辛い、個性の際立つ野菜を楽しみます。
マリネしたパリパリの蓮、燻した香りを纏った初ガツオ、ぷりぷりの帆立もスモーキーな燻製、フレッシュな鱒、甘味のある海老、シーフードを柑橘と紫蘇のソースが引き立てます。
至福のディナーは次ページに続きます。
ラトリエ・ムッシュー名物の一皿となった「フレッシュフォアグラのソテー」。なんと、ふわっふわのフレンチトーストの上にのっています。これが驚きの美味しさ。とろとろのフォアグラとふわっふわのフレンチトーストが一緒に口の中でとろけていきます。それをまとめるのが、ほんのり甘酸っぱいベリーソース。「ほんとうに、クセになりますね。これ。赤ワイン、お願いしま~す」
平目のグリルと子持ち甘エビのフリット。ウニとハーブのソースやほろ苦い山菜と一緒にいただきます。
幻の豚肉「梅山豚」(メイシャントン)をじっくりと火入れしたグリル。梅山豚は肉の旨みと上質な脂身の美味しさが特徴。「本当は塩だけで召し上がっていただきたい美味しいお肉なのですが、梅山豚からのブイヨンでソースも作りましたので、そちらもお試しくださいね」と宮﨑シェフ。絶妙の火入れのお肉は、甘くて旨みのある肉汁たっぷり。それを楽しんでから、ソースをちょこっと。個性的なスパイスを隠し味にした甘味のあるソースも絶品です。
さて。別腹の時間がやってまいりました。栃木県の女王様「とちおとめ」をたっぷり使ったデザートです。脂肪を押さえた軽やかなふわふわのクリーム。アニスの風味がきいたジェラートもパンチがきいています。宮﨑シェフのオリジナルブレンドのハーブティーは、消化を助けるハーブの爽やかな味わい。最初から最後まで幸せ尽くしの旅ごはんでございました。
美食工房 ラトリエ・ムッシュー
石井宏子
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