はじめまして。フードエディター&ライターの北村美香です。
食の世界を取材して25年。
当たり前のことですが、食べることって、とても大切だと日々感じています。
“You are what you eat”という言葉をご存じですか?
「食は人なり」と訳せますね。どんなものを食べてきたかで、健康状態から人格まで決まるということなのでしょう。「体を作る食」と厳格に考えれば、ストイックになってしまうかもしれませんが、「心を豊かにする食」もあります。さまざまな角度から、いまの日本の食シーンを紹介していきますので、どうかよろしくお願いいたします。
先日、東京・外苑前のレストラン「KIHACHI 青山本店」にお伺いしました。「KIHACHI」は、かれこれ20数年前、熊谷喜八シェフがオープンしたお店です。ジャンルを超えた自由な発想の料理で、日本の食トレンドを塗り替えてきました。
さて、今回の目的はお店の2階。ここが“Chef’s Home”をコンセプトとして、生まれ変わったのです。階段を上れば、ウッディーな温かみのある空間が迎えてくれます。ロングテーブルがあり、シェフが料理を作っているのを間近に感じられるダイニングや、いちょう並木を眺めながら食事を楽しめるリビング。シェフがレシピを考えたり、読書をしたりするアトリエルーム、アンティークのテーブルウェアや、お菓子作りの器具なども飾られたパティシエルームなど、シェフの「秘密基地」をテーマにデザインされた空間。訪れるたびに、場所を変え、楽しんでみるのもいいでしょう。どこに座っても、シェフのリビングルームに招かれたような気分。オープンキッチンから肉の焼ける匂いが漂ってきて、さあ、食べるぞ!と意欲(笑)が湧いてきます。
料理のプレゼンテーションの仕方も「おうち風」。すべて「シェア」を考えて提案されています。オープンキッチンから出来たてが運ばれ、熱々を切って取り分けたり、ソースをかけたり。ココットの蓋を開ければ、塊肉のローストの焼けた香り。専用の肉切りナイフで切り分けるなど、どの料理にも「楽しいアクション」が仕掛けられていて、食卓の会話が弾みます。2人より3人、4人と増えれば増えるほど盛り上がりますよ。
「北海道産生うにとマッシュルームのガレット そば粉の香り」
スターターとして、大きなガレットが登場。切り分けて、自分でくるんと巻いていただきます。
「天使の海老のナッツバター焼き 木の芽風味」
ナッツバターをかけてふっくら焼き上がった天使海老。春らしい木の芽のソースをかけて。
「生ハムとフレッシュハーブのピアーダサラダ」
山盛り野菜の下に、パリパリ薄焼きパンが隠れています。これを割りながら、野菜と混ぜていきます。パンはクルトンの代わりです。パリパリ香ばしい。ドレッシングには、苺が使われていて、酸味と甘みが絶妙でした。
「Chef’s Cocotto 骨付き豚肉とカブ」
ストウブ社のココットでローストされた豚の塊肉は、蓋を開けた時の香りがたまりません。カッティングボードでシェフが切り分けてくれるのが待ち遠しい。ロゼ色に焼き上がった豚肉のジューシーなこと! 添えられたカブも甘くとろけるよう。やわらかくて、おかわりしたいくらい!
「パイナップルとドライフルーツの包み焼き 自家製ココナッツジェラード添え 」
あたたかいデザートです。カットすると、これまたパイナップルのいい香りが。アイスクリームと一緒に混ぜて食べるると、一段とおいしい。
こんな風に「楽しく食事をすると健康になる」という考え方がアメリカにあります。“Mindful eating”と呼ばれ、2000年頃から米国の研究者であるJ. L. Kristeller氏らが提唱しています。日本では、神奈川工科大学栄養生命科学科教授の饗庭直美先生が「心豊かに食事をすることによって、健康的な食生活を回復・維持していこう」と呼びかけていらっしゃいます。
恋人と、友だちと、家族と、シェアする喜びを味わえる「KIHACHI Chef’s Home」。まさに“Mindful eating”のレストランですね.
KIHACHI
東京都港区北青山2-1-19 2階 Tel.03・5785・3641
www.kihachi.jp
営11:30~14:30LO 18:00~21:00LO
日曜・祝日~20:00LO
無休