がんと診断された時に直面するであろう疑問や不安。今回は経済面について、国立がん研究センター東病院サポーティブケアセンターの坂上はと恵さんにアドバイスをいただきました。
坂本はと恵さん
Hatoe Sakamoto
国立がん研究センター東病院サポーティブケアセンター/がん相談支援センター・がん相談統括専門職
「制度内容は改定されることがあります。ぜひ最新情報をチェックしてください」
Q
治療のため、サプリメント類をあれこれ買って飲んでいます。
これらは
医療控除の対象になりますか?
A
対象となるのは医薬品の購入費のみ。
栄養ドリンクやビタミン剤などのサプリメント類は対象外となります。
対象になるのは処方箋による薬代や市販の風邪薬代などで、栄養ドリンクやビタミン剤などのサプリメント類は対象外になります。また、治療のためのマッサージや指圧、鍼灸などの施術費用は対象になりますが、カイロプラクティックの費用は対象外。バスや電車を利用した場合の通院費は対象になりますが、タクシー代は原則として対象外です。
Q
がんでかかる治療費は、
一般的な生命保険でカバーできますか?
A
多くの部分はカバーできますが、
「がん特約」や「先進医療特約」などに入っていると
安心度がアップします。
多くはカバーできますが、先進医療に該当する治療法は特約に入っていないと適用されません。今はがんと診断されたらお金が支払われるものや、生命保険会社から直接病院に治療費が支払われるものもあります。早い段階で、保険会社に給付金請求の時期や方法を確認しておきましょう。外来での治療にも適用されるかなど、保険の見直しも大切です。
次は公的な援助、治療費についてのQ&Aをご紹介します。
Q
長期の治療になりそうで、
お金が足りるか心配です。
何か公的な援助などはありますか?
A
医療費が高額になった際に
「高額療養費制度」が利用できます。
次ページで説明しますが、医療費が高額になった際には「高額療養費制度」が利用できます。この制度を利用すると、病院や薬局で支払う金額が自己負担限度額を超えた場合、超えた金額をあとで払い戻してもらえます。ただし、保険適用外の医療費や入院時の食費、居住費、差額ベッド代、先進医療にかかる費用、交通費などは対象外です。
Q
がんになり、
どれだけ治療費がかかるのか、
そしてそれを払えるのか不安です。
A
「限度額適用認定証」で、
病院への支払いは自己負担限度額に。
次ページで説明しているように、実際に支払う金額は減額することが可能です。「限度額適用認定証」を窓口に提出しておけば、病院への支払いは最初から自己負担限度額で収まるのです。2012年からは抗がん剤の副作用による体調不良が「障害年金」の対象になるケースも。治療前後の体調変化や生活への支障について日記をつけておくといいですよ。
次はがん治療の医療費が高額になった場合の対策をご紹介。
がん治療のための医療費が
高額になったら
◆保険適用と非保険適用
がんの治療には「健康保険が適用される治療」と「適用されない治療」があります。保険診療の場合、基本的にはどこで治療を受けても金額は同じです。
一方、「先進医療(厚生労働省が特に将来性があると承認した医療)」には保険が適用されないので、その場合の治療費は自費での支払いが必要です。
◆実際に支払う金額はいくら?
例えば医療費の総額が40万円、保険外の負担(入院時の食事代や差額ベッド代など)の総額が10万円の計50万円だった場合。保険が3割負担だと、医療費の総額の3割分(12万円)を患者が医療機関に支払い、残りの7割(28万円)
は保険者(健康保険事業の運営主体)から医療機関に支払われます。つまり実際に患者が負担する額は、12万円+保険外負担10万円の合計22万円となります。
◆高額療養費制度とは?
以下のルールに基づいて「高額療養費制度」を申請すると、自己負担限度額を超えた金額があとで払い戻されます。自己負担限度額は年齢や所得で、金額が異なります。
1 1カ月(1日~末日)に支払った医療費であること。
2 同じ医療機関(歯科は別計算)で支払った医療費が対象。
3 外来と入院は別々の扱い。保険適用外(入院時の食事代や差額ベッド代)の医療費は対象にならない。
例)80,100円+(400,000-267,000円)×1%=81,430円
この計算式の例のように70歳未満・年収500万円の人が、ひと月40万円の医療費がかかった場合、3割負担の12万円をいったん病院に支払います。その後、この制度の申請を行うと、自己負担限度額の81,430円を超えた38,570円があとから払い戻される仕組みです。「限度額適用認定証を事前に病院に提示しておくと、最初から病院への支払いは81,430円ですむことに。
※高額療養費制度について、より詳しく知りたい場合は、厚労省サイトhttp://www.mhlw.go.jpでサイト内検索を
◆入院が決まったら「限度額適用認定証」の申請を!
入院が決まったら(外来治療の場合は治療開始前)、まず「限度額適用認定証」を取得しましょう。これを病院の窓口に提示すれば、請求される医療費は「高額療養費制度の自己負担限度額まで」になります。ただし、自動的に発行されるものではないので、自分から申請しなくてはなりません。
限度額適用認定証は、各健康保険の窓口に申請して発行してもらいます。「国民健康保険」なら、自分が住んでいる市区町村の国民健康保険の窓口で。「○○健康保険組合」のように、企業などの健康保険組合の名前が書かれている場合はそちらが窓口になります。保険証の「保険者名称」の確認を。
撮影/フルフォード海 イラスト/石田奈緒美 取材・原文/上田恵子