骨盤まわりのうち「腟」もおろそかにしてはいけない部位。近頃、そんな腟まわりケアが見直されてきています。自身の腟について、正しいケアについて、真正面から向き合ってみませんか?3人の専門家にお伺いしました。
若々しさをキープするためにも
腟まわりへの意識を高めて
森田敦子さん
「植物薬理学的にとらえると、腟まわりは心や体の不調を探る目安にもなるもの。でも、日本人女性はその認識がとても低いのです」
フィトテラピーによる介護ケアの指導も行っている森田さんいわく、無知のために乾燥している自覚もなく、腟まわりがガビガビで痛い思いをしている高齢女性も多いそう。日々のケアは、老後のQOLにも影響が。
「さらに、粘液力は免疫力。加齢により低下してしまう粘液力の対策には感度ケアを」
食べたい、眠りたいなどという欲求と同じように、性欲も自身でバランスよくコントロールすることが、若さを保つ秘訣とか。
「性的な快感やパートナーを愛おしむ感情により、粘液だけではなくエンドルフィンなどの幸せホルモンも分泌されます。これは、何歳になっても変わらないものなのです」
森田敦子さん
Atsuko Morita
日本での植物療法の第一人者、「ルボア フィトテラピースクール」主宰。デリケートゾーンケアシリーズ「アンティーム」、マタニティケアシリーズ「インティメール」などを開発。著書に『潤うからだ』(ワニブックス)など。
デリケートゾーンの4大悩みは
日々のケアで軽減できます
バルドゥッチ淳子さん
「海外ではケア商品がスーパーに並び、幼い頃からケア方法を学校や家庭で学びます」
それに比べてまだまだ遅れている日本の現状を踏まえ、ケアブランドを立ち上げたそう。
「女性237名を対象に自社で調査したところ、9割の方が悩みをお持ちでした。上位4つがにおい、ムレ、かゆみ、黒ずみ。きちんと見たことがないという声も多かったので、ケアの一環としてミラーも作ったのです」
腟まわりは複雑な構造なのに、さっと洗うだけの方がほとんど、とバルドゥッチさん。
「洗顔のように、腟まわりも細部まで丁寧に洗えばにおいとムレはかなり軽減します」
特にMyAge/OurAge世代に多かった悩み、かゆみと黒ずみには保湿が効果的だと言います。
「かゆみは乾燥が原因であることも多く、黒ずみも潤せば肌色は明るくなってきます」
バルドゥッチ淳子さん
Junko Balducci
商社、大手国産化粧品会社の国際部で活躍した後、デリケートゾーンケアのブランド「トレスマリア」を立ち上げる。ブランド名はスペイン語で「3人のマリア様」を意味し、「母・私・娘、美絆の伝承」がコンセプト。
腟まわりを
ミラーで確認
反射率95%で、歪みが少なく見える「大切エリア用」の楕円形ミラー。ベロア調の保護袋付き。
トレスマリアミラー¥1,800/バルドゥッチ
膣まわりは“むらさず清潔に”が鉄則なのだとか。次ページに続きます。
腟まわりが痩せるMyAge/OurAge世代。
"むらさず清潔に"が鉄則です
八田真理子さん
「とれたてのりんごはみずみずしくてハリがありますが、放置しておくと水分が失われてシワシワに。年齢を重ねた腟まわりは、それと同じようなイメージです」
とは、HRT(ホルモン補充療法)や腟・外陰のレーザー治療も行い、MyAge/OurAge世代の悩みと積極的に向き合っている八田先生。加齢に伴って起こりやすくなるのは"外陰腟萎縮症"とか。
「かゆみやヒリヒリ感、頻尿や尿もれ、性交痛などの不快症状が起こりやすくなります。腟まわりが痩せて尿が腟内に入ることでアンモニア臭を放つことも。腟内の乳酸菌パワーも落ちるため、雑菌が入りやすくなるのです」
MyAge/OurAge世代へのアドバイスとして、
「きつい下着やむれやすいパッドなどはなるべく避け、フリーな状態にすること。専用の洗浄グッズで優しく丁寧に洗って、ケアを」
八田真理子さん
Mariko Hatta
聖順会ジュノ・ヴェスタ クリニック八田院長。日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医。思春期から更年期まで、幅広い年齢層の診療に取り組む。日本マタニティフィットネス協会認定インストラクターの資格も。
http://juno-vesta-clinic-hatta.net/
まずは腟まわりと向き合い
ちゃんと理解することから!
今回お話を伺った3人が力説するのは「自身の腟まわりを見る」ことの大切さ。毎日向き合うことで大切に思う意識も高まり、日々の変化を把握することが病気の予防にもつながると言います。
「クリトリスは男性のペニスに当たる部分で、性的に感じやすい部位。尿道口は尿、肛門は便を排出する器官です。腟口は赤ちゃんの通り道であり、性交時にペニスが挿入される部位でもあります」とは、八田先生。腟を保護しているのは、小陰唇と大陰唇。
「小陰唇は腟を覆っているヒダで通常は閉じています。大陰唇は赤ちゃんが生まれるときに伸びる部分。脂肪があり、女性ホルモンの働きでふっくらしています」
陰毛は、正面に生えているのがVライン、陰部の両サイドがIライン、肛門まわりがOラインです。構造は皆同じでも、形や色、陰毛の生え方などは人それぞれ。さっそく鏡に映して、確認を!
次回はデイリーの膣まわりケアについてご紹介します。
撮影/ケビン・チャン〈物〉 矢部ひとみ〈バルドゥッチさん〉
スタイリスト/カナヤマヒロミ イラスト/清水利江子 構成・原文/佐藤素美