羽田美智子
“自分磨き”のための大人の手習い Vol.7
注目のエクササイズ「フェルデンクライス」で
心と体をもっと解放しよう!
私たちは知らず知らずのうちに、体の動かし方や生活習慣、考え方などに"クセ"がついています。
その長年しみついたクセや習慣にとらわれず、もっと自由になれたら…!
"脳の学習する力"を利用して、体を動かしながら楽に動く方法を脳に気づかせる「フェルデンクライス」。その極意をかさみ康子さんに教えていただきました。
かさみ康子さん
Yasuko Kasami
楽な動き方を見つけて不調や不安を解消
羽田 どこが悪いというわけではないのですが、最近、なんとなく体調が優れなくて…と友人に話をしたところ、「みっちゃんに合いそうなレッスンがあるよ」と言われて初めて、フェルデンクライスのことを知りました。
かさみ 羽田さんに興味を持っていただけて光栄です。フェルデンクライスとは、今から半世紀以上前に誕生した、"脳の学習する力"を利用したエクササイズです。自分の体や感覚に向き合い、自分なりのよりよい動き方や考え方を見つける手段として、物理学者で柔道家のモシェ・フェルデンクライス博士が開発しました。
羽田 近年ようやく脳のことが解明されてきたというのに、そんなに昔から脳の学習効果に着目したエクササイズがあったとは、驚きです。私が興味を持ったのも、体と心をひとつのものとしてとらえていると感じたから。
かさみ フェルデンクライスのレッスンでは、プラクティショナーがその人の話を聞き、対話しながら、体を動かす手伝いをしてあげることで、自分の体や内面に注意を向けてもらいます(今回の企画で羽田さんも体験)。「自分が何をしているか」に気づいてもらうことが大事だからです。レッスン中は私が手と言葉を使って質問を投げ、気づきを誘導していくんですね。
羽田 私も先ほどご指導いただきましたが、つらかった肩や首、背中がとても楽になって、子どもの頃に戻ったような軽い感覚を味わいました。筋トレのようなハードなつらさもなかったし、先生からの質問に答えて、シンプルな動きを何度か繰り返していただけなのに、とても不思議ですね。
無駄な力を減らし楽に動くことで、心も体も自由になれます
かさみ レッスンでは、シンプルな動きを、少しずつ動きに変化をつけながら繰り返します。何回も試すことで、脳にいろいろな情報を送っているのです。動きのいろいろなバリエーションを体験し学習することで、脳の中にどれを選ぶかという選択肢(新しいチャンス)が生まれ、最終的に自分にとって心地よい、新しい動きを獲得することができます。動きのバリエーションが増えて(選択肢が増えて)脳の中に新しいスペースができると、体も気持ちも楽になり、心にもよい変化が表れてくるんですよ。これは普段の生活にも通じること。頑張ってもうまくいかないと力んだり否定的になる必要はなく、自分はそのままでいいと肯定しながら選択肢を増やしていけば、自然とよい方向へ向かっていくのです。
羽田 頑張らなきゃと思うのは、もっと自分がよくなりたいというポジティブな思いから。でもそこには人との比較や人と差をつけたいというネガティブな感情があるのも事実ですよね。そういう自分とどう折り合いをつけていくのかを、フェルデンクライスで修正していくということなのでしょうか。
かさみ ええ、そのとおりです。人は大人になるにつれ、決まったやり方、クセを繰り返すようになります。動き方、姿勢、話し方、考え方や心の持ちようまで"固定化"されてしまうんですね。そのことが原因で思い通りに動けなくなったり、不調を感じるのであれば問題。頑張ってもいいけど頑張らなくてもいい、ほかのやり方もあるのかなと、選択肢を広げることです。試行錯誤して脳にいろいろな情報を送り、それを繰り返すことで、脳の選択肢は確実に増えていきます。選択肢が多ければ多いほど、楽に動ける方法がわかり、体の不調や生き方に対してもよい変化が表れるようになるんですよ。
次回は、「フェルデンクライス」でなりたい自分になるための3つのキーワードについてです。
撮影/天日恵美子 ヘア&メイク/永塚克美(HEADS)〈羽田さん〉 木下 優(ロッセット)〈かさみさん〉 スタイリスト/梶原寛子〈羽田さん〉 構成・原文/向井真樹