「30代で購入した家やマンションが、だんだん古くなってきて設備も交換しなくては」と感じている人も多いのでは? 50代はまさにリフォームを視野に入れるべき世代。リタイア後も想定して、自分たちの暮らしを快適にする手立てを考えてみませんか。この連載では、住まいのこだわりや事情に合わせてリフォームを行った3軒の実例と、リフォームのプロからのアドバイスをお届けします。
二人の暮らしの習慣をとことん想定して心地よく(引田邸)
高血圧の夫のためにバスルームを一新!断熱窓で性能アップ(T邸)
カビや収納に悩むマンション空間が快適な住まいに!(小林邸)
次のページから引田邸のリフォーム事例をご紹介!
二人の暮らしの
10年後、20年後を想像して
「どっちでもいい」をやめた家づくり
書斎を兼ねるダイニングからキッチンを望む。キッチンの半分はオープン、半分は備えつけの棚で目隠しを
リフォーム事例1
引田邸
妻58歳 夫70歳
リフォーム面積:141㎡
設計:スタンダードトレード
五感に心地よい空間が
心身を健やかにしてくれる
「住みたい街」として人気の東京・吉祥寺で、パン屋とギャラリーを営む引田かおりさん、ターセンさん夫妻。子ども二人がそれぞれ独立・結婚し、子育ても無事終了。「いずれ体が不自由になったら、ケア付きマンションにお世話になるのかな」などと考えていたそうですが、この家と出会ってしまったことで、運命が大きく変わりました。
「3階建ての、二世帯か三世帯が住めそうな大きな一軒家。年齢的には住まいをコンパクトにしていく時期なのかもしれませんが、『この家に住んでみたい!』というワクワク感を優先させてしまったんです」
もともとは新婚の娘さん夫婦のためにと始めた物件探し。話し合いの末、出産を控えた娘さんと二世帯同居をすることに決まり、1階部分に引田夫妻、3階に娘さん家族が居を構えるべく大規模なリフォームを敢行することとなりました。仕事柄、美しいものに触れる機会も多く、インテリアへの造詣も深い。なおかつ二人とも根っからの「健康おたく」で、家づくりはそのまま、より快適で心地よい住まいへの探求の旅となりました。
「過去に4回リフォームをした経験もあり、『何でもいいよ』『どっちでもいい』と、曖昧なものを積み重ねても、心地よい空間はつくれないと学んでいました。10年、20年後を考え、ベストな選択は何かをじっくり話し合いましたね」
リフォームの設計は、家具で有名な「スタンダードトレード」が担当。珪藻土の壁と無垢材をふんだんに使った室内は、湿気がこもらず梅雨時や真夏も快適です。床はさらりとした感触が心地よいリネンウールのカーペットに。足音を吸収してくれるとともに、ホコリが目立たないので掃除の負担を減らしてくれました。ホテルのようなシンプルかつ上質な空間は、自然と心身を穏やかに整えてくれるようです。
メンテナンスのしやすさを優先。引田夫妻こだわりのキッチンとは?
キッチンは二人が
同等に動けるように。
メンテナンスしやすさを優先させ、
不必要なものは省きました。
グレーのタイルと戸の黒いメラミン樹脂が基調になった、落ち着いた印象のキッチン。ガス台&シンクと収納棚の間の距離は、100㎝強。これだけの幅があると、二人で行き来するのもとてもスムーズ
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以前は引き戸でリビングと仕切られていたキッチン。換気扇、水道などの位置はそのまま生かして改装
撮影/一之瀬ちひろ〈Before〉
ガス台は五徳をはずせばフラットになり、手入れがしやすいリンナイ製。表に出すツール類を最小限にしておくと、掃除もラクに
「自宅での食事には不要」と、ビルトイン式のオーブンは取りつけませんでした。炊飯器、トースター、電子レンジの家電類は色をすっきり白で統一
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棚との間隔が狭く、二人で動くにはやや不便でした
食器洗いをするときに、前かがみにならなくてすむよう、水道のアームは長めをチョイス
作業台は光沢がまろやかで傷も目立たないバイブレーション仕上げに
台所道具も数を厳選
カウンターの下の棚にゴミ箱類をまとめて
次回も引田邸のリフォーム事例をご紹介します。お楽しみに。
撮影/富士 晃 イラスト/かくたりかこ 取材・原文/小森知佳 田中のり子