前回に引き続き、乳がん治療を経験された井上美也子さんにお話を伺いました。ウィッグというアピアランスケア(がん患者に対する外見ケア)が井上さんにもたらした心情の変化とは。
井上美也子さん
大切なアピアランスケア
知っていたつもりの抗がん剤の副作用は、想像以上に壮絶でした。
「私の場合は、点滴を受けた当日から味覚障害になり、3日後は体が重くて立ち上がれないほど。抗がん剤を通した血管は痛いし、肌や爪からはピンク色がなくなりました。体調を見つつ、9日後には出勤しましたが、同僚が私のくすんだ顔を見て泣き出したほど。私のほうが泣きたかったのに(笑)」
さらに見た目を大きく変えたのは、頭髪はもちろん、眉にまつ毛、鼻毛と全身の毛がスルスル抜け落ちたこと。
「眉はどこに描く? つけまつ毛はどうする? と軽くパニック状態でした」
今は「ピッコロ大魔王(アニメのキャラクター)みたいだった」と笑えますが、当時はどれほどつらかったか。
「でも、私は幸いにしてウィッグを会社で作ってくれたので、つければとても自然ですごく救われました」
あの治療からもうすぐ3年。髪は元通りになりましたが、まだ再発の可能性はゼロではありません。
「だからこそ、今できることに全力で取り組みたい。お客さまが治療中もキレイをあきらめずにいられるサポートとして、脱毛はイヤだけれどこれからの生きる時間のために、ウィッグでおしゃれも楽しんで治療に取り組みましょうと伝えていきたいです」
抗がん剤治療で髪が抜けた!
4回目投与時の状態
抗がん剤の副作用として、見た目にいちばん影響したのが髪が抜け落ちたこと。17日目から抜けはじめ、回を追うごとにその量は増える一方。4回目の投与時には、前から見るとほぼツルツルの状態に。「こうなると、残っている毛が愛おしくなるんです」
ウィッグで、治療もキレイもあきらめない! 次ページで、井上さんが実践したウィッグスタイルをご紹介。
手術前のヘアスタイルに合わせ、ロングのウィッグを作製。毛が抜け落ちてから装着した際には、前髪の根元をつぶすなどして自然に見えるよう調整を重ねたそう。そこから、徐々に髪の長さを短くして、最終的には投与終了後に生えてきた自身の髪と違和感がないベリーショートスタイルにアレンジ。
アデランスの
医療用ウィッグへの取り組み
撮影/矢部ひとみ 取材・原文/佐藤素美