私は、「かもめ食堂」という映画が大好きで、でも、
これは映画だから、いろんなことが起こるのよね、と
思っていたのですが、カフェを始めてみると、毎日がドラマチック!
「ようこそ、カフェな日々へ」と言われたような気がしました。
しかし、オープンしたものの、訪れる客は、1日、わずか数名。
カフェの中身は薄いし、宣伝もしていない。
もっともな話ですが、ここまでヒマなのはなぜ?と頭の中はぐるぐる。
そんな中、ご近所の会社員二人組が、オープン当日、
午後3時くらいに、ふらりとカフェに入ってきて、その日以来、
毎日のようにバナナミルクを注文してくれるのが、心の支えでした。
あっ、今日も来てくれた、よかったあ〜、と。
「バナナミルク2つ」
「はいっ!」
毎日、繰り返される短いやりとり。これだけ。
スーツ姿のふたりのサラリーマンとバナナミルクの組み合わせ。
微笑ましくもあり、そして、ちょっとフシギ???
毎日来てくれて、バナナミルクなワケをできれば知りたい。
いいとこ、伸ばしたいし・・・。←私の心の声、です。
でも、会話は生まれない。
「どうしてカフェ、オープンしたの?」とか、
一度も聞かれたことはありませんでした。静かなふたり。
オープン当初は、客席のすぐ近くに細長いカウンターがあり、
ここでドリンクを作っていました。
ある日のこと、ふたりの男性が、
カウンターの前のソフォー席に腰をおろしました。
「コーヒーとカフェオレ、お願いします」
「はい!」と返事をしたそのすぐあと、
「兄貴は、もごもご話すから、店の音楽にかき消されて、
なに言ってるか、わかんないんだよ。もっとはっきり話して」
と言う、(たぶん)弟さんの声が。
あわわわわ、こめんなさい、と思って、私は、あわててスピーカーの
リモコンをとりに行って、ボリュームを落としたのでした。
その日もヒマで静かな店内。カウンターで私がコーヒーをいれていると、
「兄貴、クリスマスまでにやせるって約束したよね」という
問いつめるような弟さんの声が、耳に飛び込んできました。
きっと、弟さんは、お兄さんの健康を考えて、
兄弟でクリスマスの約束をかわしていたのね、
あ〜、仲がいいんだなぁ、と私は勝手に想像して、
あったかい気持ちになったのでした。
ふたりは、ドリンクをおかわりしてくれて、
そのオーダーをとりにいったときも、
「オレはコーヒーお願いします。兄貴、2杯目、何にするか早く決めて」
と弟さんがお兄さんをせかします。
あっ、うちのカフェ、急いでいませんから、ヒマですから、
ゆっくりでいいですから。←これも、私の心の声。
しかし、帰り際は、二人分の代金をささっとお兄さんが
払ってくれたのでした。
オープン当初から来てくださっている、
80歳くらいの、ご近所のモダンな女性もいらっしゃいます。
このお客さまは、食べ物の好き嫌いが激しい。
うちのカフェで食べられるメニューは、バニラアイスくらい。
ほぼ毎回、「なにがあるの?」と聞かれ、説明します。
「今日は少しお腹がすいているの」という日は、
スープはどうでしょう、今日のスープは・・・と説明したのですが、
「野菜は嫌いなの。子どもの頃からほとんど食べたことがないの」
「え、えっ!?」
↑スープといえば野菜スープですし、
野菜全体がキライという人に始めて出会いました、私。
ということで、大抵、いつもバニラアイスにおさまるのでした。
2008年は、梅雨が長い年でした。←店がヒマすぎてそう感じたのかも。
で、このお客さまが、ある日、
「おたくがオープンしてから、雨ばっかりねぇ」とつぶやかれた時は、
長い梅雨ってか、もしや私にとって氷河期到来?!と思ったものです。
カモメ食堂とイリヤプラスカフェの大きな違い、
それは、うちのカフェの場合は、
お客さまが少ない、ヒマ、という状態が長~く続いたことでした。
次回は、ヒマのいろいろな段階とか、
ヒマを乗り切る、私なりの工夫!みないなお話をしたいと思います。
どうぞよろしくお願いします!