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膣萎縮レーザー治療が女性のQOLを上げる? /前編 更年期は肌だけでなく、膣もふっくら感を失います

増田美加さん

増田美加さん

1962年生まれ。女性医療ジャーナリスト。30年にわたり2,000名以上の医師を取材。自身が乳がんに罹患してからは、がん啓発活動を積極的に行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』(講談社)ほか多数。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員

医療ジャーナリスト 増田美加さんの更年期女性の医療知識 アップデート講座 

この連載では、MyAge/OurAge世代の女性が知っておきたい最新の医療知識をご紹介していきます。教えてくださるのは、医療ジャーナリスト の増田美加さんです。

 

腟萎縮のレーザー治療が女性のQOLを上げる?(前編)

 

取材でご協力いただいたのは

八田真理子さん Mariko Hatta

ジュノ・ヴェスタ クリニック八田院長・産婦人科医。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。順天堂大学、千葉大学、松戸市立病院産婦人科を経て、1998年、現クリニック開業。思春期から更年期まで幅広い女性の診療を行う。日本産科婦人 科学会専門医。近著に『ハピちつ』(光文社)、『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム) ほか

更年期は肌だけでなく、腟も痩せてふっくら感を失います

 

外陰部、腟まわりでまず私が感じはじめたのは、乾燥、かゆみ、ひりひり感でした。外陰部に以前のようなふっくら感がなくなり、痩せてきたなあと。自転車のサドルが擦れて痛かったり、ヨガやピラティスで下着がくい込んだり…。そのうち、あぁこれは外陰部だけでなく、腟も潤いを失い、痩せてペラペラになっているのだと気づきました。ランニングしていると下着で外陰部が擦れるだけでなく、腟も擦れて痛むのです。

 

まさにこれは閉経後、エストロゲンの分泌量が低下したことによる外陰腟萎縮症です。

腟萎縮は女性なら誰にでも起こり得ること。閉経すると腟粘膜もエストロゲンの恩恵にあずかれなくなり、乾燥、萎縮が進みます。症状は年々増加するというデータが! Versi E, et al, Int Urogynecology J;2001;12:107-10

 

腟萎縮が始まると、外陰部と腟内の潤いがなくなって乾燥し、腟壁も弾力のない状態になり、傷つきやすくなります。腟萎縮が進むと、乾燥、かゆみ、におい、性交痛、緩みや、頻尿・尿もれ・尿失禁などの排尿障害を引き起こし、QOLに深刻な影響を及ぼします。

 

次のページに続きます。

40代以上の日本女性約1000名へのWeb調査では性器症状(性交痛、かゆみ、緩み)ありと答えた人は約29%、尿路症状(尿もれ、頻尿)ありは約27%、性器、尿路症状両方ありは約44%と多くの女性が悩んでいる実態がわかってきました。悩んでいるにもかかわらず、医療機関受診者はこのうちの約15%にとどまっています *1 。悩んではいてもデリケートな問題だけに、誰にも相談できず放置したり、市販薬の軟膏などで対処したりしている人も少なくありません。

 

【産後3年目頃から尿もれに悩むAさん(51歳) 】

●更年期プロフィール

産後、くしゃみや笑ったりして腹圧がかかると、尿がもれる。40代後半から顕著になり、婦人科を受診したが改善なし。最終月経は9カ月前。

●悩みの現状

お産で腟まわりや骨盤底筋が傷ついたことが原因と思う。骨盤底筋トレーニングを受けたが、どこに力を入れたらいいかわからない。継続的 にヨガに通っていたときは症状が軽減した。

●治療の効果

治療前より骨盤底筋がきっちり動き、排尿途中で尿を止めることもできた。2週間後、少し実感は低下したが、くしゃみによる尿もれはなく なった。潤い回復の実感はまだない。

 

【腟萎縮で乾燥に悩む増田美加(56歳)】

●更年期プロフィール

50歳で閉経。その頃から徐々に外陰部や腟の萎縮を感じる。乳がん既往のため、第一選択であるホルモン補充が行えない。

●悩みの現状

ピラティスで骨盤底筋まわりの筋力強化は行うも、外陰部、腟粘膜の萎縮と乾燥を感じる。経腟超音波のプローブが乾燥と痛みで挿入しづら く、検診を受けにくい。尿もれはない。

●治療の効果

外陰部のふっくら感を十分取り戻せたとは言えないが、乾燥や痛みはかなり改善。下着のくい込みも減った。1~2カ月後に、線維芽細胞やコラーゲン線維が活性化するのが楽しみ。

 

 

エストロゲンの分泌量が減ることで、どうしてこのような深刻な症状が起こるのか…。そのメカニズムは、エストロゲン量の低下により、①血流が低下し、腟内のコラーゲンを作る細胞と分泌液も減少(乾燥、かゆみの原因)、②腟粘膜が薄くなって扁平化し、外傷を受けやすくなり(腫れ、灼熱感、性交痛の原因)、③腟内の酸性を保つ乳酸桿菌(かんきん) が減少し、雑菌が増加(におい、かゆみの原因)、 ④尿道周囲の筋力とコラーゲンも低下します (尿もれの原因)。

 

 

* 1 太田博明、八田真理子「腟・外陰部および下部尿路系退行性変化の実態とレーザー療法によるAnti-aging効果」White 2018年5月号 Vol.6No.1 63-66, 2018

 

 

イラスト/堀川理万子

 

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