前回は、歯周病治療の流れについてご紹介しました。歯周病は生活習慣病のひとつともいわれています。歯科医院でケアしてもらったら、あとは何もしなくてOKというわけではありません。生活の中のケアも重要なのです。歯周病を進行させないためのポイントを順にご紹介します。
お話を伺ったのは…
Kenji Wakabayashi
若林健史さん
歯科医師、若林歯科医院院長。日本大学松戸歯学部卒業。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事、日本臨床歯周病学会副理事長。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや市民向けの講座も多数開いている
Koufuchi Ryo
梁 洪淵さん
薬剤師、歯科医師。鶴見大学歯学部病理学講座講師。薬学と歯科学の両輪で、口腔のエイジングについて研究および臨床を行う。更年期世代の口腔トラブルにも詳しい
最低でも半年に一度は
歯科メンテナンスを!
「歯周病は完治するということはありません。セルフの歯磨きでプラークがたまれば、また悪化します。セルフの歯磨きはとても重要ですが、残念ながらそれで完璧にプラークを取り除くのは難しいものです。歯周病を再度悪くさせないためにも、歯科医院での定期的なメンテナンスは必須です。特に唾液の分泌が減る世代は、プラークが付着しがちです。3カ月~半年に一度は、プロのメンテナンスを受けることをおすすめします」(梁先生)
歯周病菌を交換?
ペットとのキスは要注意
「ペットと暮らしている人に気をつけてほしいのは、ペットとのキスです。実は犬猫の8割近くが歯周病にかかっています。犬猫が口元をなめたり、キスをすることで、犬猫に人間の歯周病が感染し、そこからまた、人間の家族へ、となる感染ルートは少なくありません。飼い主と犬猫が感染し合ってしまうということになります。さらに、犬や猫の歯周病は進行しやすく治療しにくいので、そうした意味からも過剰なキスは禁物です」(若林先生)
口呼吸は
歯周病になりやすくなる
「口呼吸をしている人の多くは歯周病を持っているといわれています。口呼吸すると、口の中が乾きやすい状態になり、食べたものが歯に付着しやすくなって、プラークがたまりやすい状態に。また、唾液による自浄作用も低下するので、歯周病菌の活動を活発にしてしまうのです。口呼吸している人は意識して口を閉じ、鼻呼吸に切り替えるクセをつけるといいでしょう。寝るときなどは市販のテープなどを利用するのもいいですね」(若林先生)
よく嚙み、よく笑い、よく話して、
唾液を出す
「歯周病菌のエサとなる食べかすを、口にできるだけ残さないようにするには、唾液を有効に使うべきです。特に、更年期世代は唾液量が低下するので、唾液の分泌を促進する生活を心がけるべきです。一番は、食べるときによく嚙むことです。いつもよりちょっと多く嚙むだけでも違います。また、よく笑ったり、おしゃべりすることも大事です。口元を大きく動かすと表情筋が唾液腺を刺激してくれるので、唾液の分泌を促します」(梁先生)
次回も引き続き、歯周病を進行させないポイントについてご紹介します。
イラスト/内藤しなこ 取材・原文/伊藤まなび