年齢を重ねて、ますます美しさが増していく黒木瞳さん。
"大人可愛い"の代表格でもあり、凜としたたたずまいの中に、いくつもの愛らしい"顔"を覗かせます。
ひとつの場所に留まることなく、つねに能動的に進化を続ける、たゆまぬ好奇心の源にあるものとは?
仕事でも信頼し合うヘア&メイクアップ アーティストの藤原美智子さんとの対談で、その秘密を探りました。
黒木 瞳 × 藤原美智子
プロとして、毎日の体調をきっちりと管理し、美しさを保ち続けている黒木さんと藤原さん。
秘訣は「健やかに過ごすための、自分の体への意識と持続」でした。
黒木 瞳さん
1981年に宝塚歌劇団に入団し、娘役のトップスターとして活躍。 ’85年に退団し、翌年『化身』で映画デ ビュー。’97年『失楽園』で 日本アカデミー賞最優秀主 演女優賞受賞。ドラマ・ CMなど多方面で活躍するほか、エッセイも執筆。映 画『嫌な女』で初監督を務める。2016年7月より日本 テレビ系 新日曜ドラマ「そして、誰もいなくなった」に出演
藤原美智子さん
1958年生まれ。ヘア&メイ クアップアーティスト。’92 年、ラ・ドンナ設立。大人 の女性の支持も厚く、CM、 雑誌、化粧品メーカー・アドバイザー、講演、執筆活 動など幅広く活躍。著書に『美しい朝で人生を変える』(幻冬舎)、『大人の女は、こうして輝く。』(KKベスト セラーズ)ほか
黒木さんと藤原さんの対談は次ページに!
仕事で出会って以来、プロとして信頼し合う関係の二人。 映画『嫌な女』で監督に初挑戦した黒木さんの制作秘話、そして美しく生きる姿勢についても語り合っていただきました。
原作をどうしても映画で観たいという強い思いが
藤原 黒木さんの初めての監督作品 『嫌な女』の試写を、さっそく観させ ていただきましたが、人生のツボを押されるというのか、映画を観てあんなに泣いたのは久しぶりでした。
黒木 ああ、それはうれしい!
藤原 大人って、誰もがいっぱい大変 な思いをして生きている。でも最後は とても爽やかな気持ちをもらって、よ し、私もまた頑張ろうって。
黒木 よかった。この作品にいちばん こめたかった気持ちです。人生ってい ろいろなことがあるけれど、捨てたも んじゃない。一歩、踏み出していく勇 気、その清々しさを描きたかった。
藤原 監督に挑戦なさると聞いてびっ くりしたんですが、何がそんなに黒木 さんを突き動かしたんだろうって。
黒木 初めは監督をするなんて考えて もみなかったんですよ。でも5年前、 人が生きることの意味が深く書かれた 小説と出会ってしまった。東北で震災 のあった年で、命というものについて 考えさせられた時でもあったんです。 映画化されたらぜひ出たい! と。で もそんな動きもなく、どうしても原作 を映画で観たかった私は、誰も撮らないなら自分で撮ろうと決めた。少しず つ準備して、一昨年、映画会社にかけ 合って、そこから始まったんです。
藤原 すごい。5年越しの願いだった んですね。しっかりと形になさった。
黒木 何度も何度も、めげそうになり ましたけど、あきらめられなかったか ら。しつこいんです、私(笑)。
藤原 演ずる人の、初めての監督経験 はどうでした?
黒木 不安がなかったと言ったら噓で すね。撮影が始まった頃、夜中の2時 過ぎに帰宅したら夫が起きて待ってい てくれて、「なんとかできたよ」と話 しているうちに、わっと泣きたくなっ て 30 分ほど泣きました。急に素の自分に戻ったというのか。気を張っていた のでしょうね。でも、あそこで泣けて 自分の思いを確認できたことで、気持 ちが前へと切り替わりました。
藤原 ああ、なんだかいいお話。現場 で女優さんが女優さんに演技をつける 難しさ。そのあたりはなかったですか。
黒木 最初は少しとまどいました。で も自分が監督を引き受けた以上は、と にかくお客さまの胸に響くものを作る 責任がある。その一心で、主演のお二 人(吉田羊、木村佳乃)にはかなり細 かく、うるさいほど芝居をつけました。
藤原 でも同業だからこそ、わかる気 持ちもあったのではないかなと。
黒木 ありましたね。女優が今、何を 思っているのかが手に取るようにわかるので。まずお二人が私が撮ることを面白がって、飛び込んでくださっただ けでもすごいと思いましたし、ハード ルを上げたら上げただけ、それを上回るすばらしい演技をしてくださった。
藤原 生真面目と、自由度の高い両極 端な役柄の二人は、どちらも黒木さん 本人が投影されていると思いながら観 ました。それに私自身の中にも、どち らの女もいるなと思いながら。
黒木 なるほど。それぞれの女性が自 分と重ね合わせて、いろんな感情で観 ていただけたら、とてもうれしい。
『嫌な女』は6月25日より全国ロードショー。生真面目で人との距離がうま くとれない弁護士の徹子(吉田羊)と、従姉で天才的結婚詐欺師の夏子(木村佳乃) の物語。黒木瞳初監督作品。
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黒木 映画の撮影は去年8月。炎天下 でしたからそれは大変でした。
藤原 お察しいたします(笑)。
黒木 帽子、サングラス、ストールと 完全防備していたつもりですけど、9月に入って知り合いから「ハワイだったの?」って言われて(笑)。
藤原 メイクはどうしていました?
黒木 女優ではないから、メイク直し ができないじゃないですか。秘密兵器 的に、シンクロナイズド・スイミング 用の、水に入っても絶対に落ちない化 粧品を使っていたんですよ。これは3年前の舞台で池に落ちる場面があって、 そのときに探したんです。
藤原 さすがに研究なさっている。で も肌ケアは、より大変だったのでは。
黒木 睡眠時間が平均3、4時間でし たからね。でも基本的にはいつもと同 じで、メイクをしっかりクレンジングしたらあとはとにかく保湿。藤原さんも私と同じNO洗顔ですものね。
藤原 ええ。でも、私は定期的にはしますけど、我々の世代にとって保湿第 一の考え方はとても重要ですよね。保湿は化粧水のみですか。
黒木 化粧水で汚れをふき取って、クリームをつけます。あとは毎朝の保湿パック。とてもシンプルですよ。
藤原 私はお風呂の湯船には一日2回 入りますが、どうですか。
黒木 私はシャワーがほとんど。入っ ても、いつもカラスの行水なんです。 すごくせっかち!(笑)
藤原 せっかちも才能のうちと言うか ら(笑)。こうやって雑誌の撮影でご 一緒していても、服決めから何から、 本当に判断が早い。きっと映画の現場 でもジャッジが早かったんだろうなと。
黒木 それは利点なのかも。だからランとか長いものは全然だめなんですよ。 よくストイックと言われますけど違う。 やるときはやるという、典型的な短期集中タイプです。藤原さんはゆったり 瞑想なさったりとか、すごいなと。
藤原 さっき、東北の震災の話がありましたが、あれから生き方が変わった んです。いらないものは省いていこうと。夜に出歩くとか享楽的なことへの 興味も失せて、なるべく自然の中で過 ごして野菜作りをしたりとか。
黒木 私は、その時々の楽しいことも好き。ちょい不良だから(笑)。でも、 教えていただいた体幹を鍛えるピラテ ィスは通い続けようと思います。まだ 効果はよくわからないけれど。
藤原 ヨガと同じで、なんとなく漠然 とやっていてはだめで呼吸に意識を集 中することが必要なんですね。ピラティスも、今この筋肉を動かしていると 意識するだけで1ミリ単位で違ってきます。筋肉にも意識があるから。びっくりするほど変わってくるはずです。
黒木 これから、びっくりします。
藤原 黒木さんって本当に面白いんだ から(笑)。ほかにはどんなことを?
黒木 プールでトレーナーにアクロエアロビを指導していただいたり、タップダンスのレッスン。タップは脚が太 くなると思われがちですが、違うんで す。ふくらはぎに筋肉がつき、脚が細 くなっていくの。女子にはおすすめしますよ。最近、韓国式のサロンで、よ もぎの葉を焚く解毒をしたのですが、 代謝が上がって半端ない汗が出ました。 私は普段汗が出にくいので、見つけた! という感じです。
藤原 いいですね、体によいと思うことは何でもやってみる姿勢。今回の監督への挑戦もですけど、マイエイジ世 代にとって、黒木さんのようにいつもはつらつと、やりたいことはあきらめず体現していく。そういう存在は、すごく励みになっているはず!
黒木 私は、すべて意識の持ち方だと 思っているんです。芯を持って、でも決して頑固でなく柔軟に。
藤原 そうですね。この年齢だからこ そ新しくできる、輝けるということもあるんですよね。
黒木 自分がしたいことに対して、い つも真っすぐでいたいんです。命あるかぎり、日々、行動です。
藤原さんの紹介で通い始めたパーソナルトレーニングのピラティス「STUDIO Apro」は、トレーナーKAORUさんオリジナルメソッドで体を整えてくれます
撮影/浅井佳代子 ヘア&メイク/藤原美智子(LA DONNA)
スタイリスト/江島モモ 取材・文/水田静子