若さとは、引き算のことである。
特に、年を重ねてからの若さは、引き算が基本になる。引き算をすることで、生命をいきいきとよみがえらせることができるのである。
何かを付け加えるよりも、むしろ、取り除いていく。このことの大切さに案外気づいていないケースが多い。
何歳になっても、例えば小学生のような、あるいは花も恥じらうティーンエイジャーのような若さを保つことは可能である。そのためには、人生の引き算をうまくやって行かなければならない。
引き算をすることで、実年齢から何年か分の「澱」のようなものを取り除くことができる。そのことによって、まるで降ったばかりの新雪のような、あるいは芽吹いたばかりの若葉のような、初々しさを保つことができるのである。
引き算とは何か。シンプルになることである。素のままの自分になることである。生きている間に絡みついてしまった、さまざまなしがらみ、思い込み、固定観点から自由になることである。
場合によっては、溜め込んでしまった「毒」を自分の外に出す、「デトックス」も必要になることもある。毒は、それを蓄積してしまうことで世界を見る目が曇り、他人を傷つけ、そしてもちろん自分自身も劣化させてしまう。毒は感情や記憶の回路の奥深くに住み着いているのであるが、うまくそれを意識化して排出することで、その悪い作用から自分自身を守ることができるのである。
自分の中の要らないものを出していく。そして、新しいものが入ってくる「隙間」をつくる。そのことによって、世界に対して新鮮な気持ちで向き合うことができるし、新しい学びも積み重ねることができる。
不要なものには関わる必要がない。むしろ、自分にとって大切なものだけに関心を向けていけば良いのである。
自分が好きなものだけを見るようにするのも良い。嫌いなもの、心を乱すものにはできるだけ目を向けないようにする。
もし、心をこめ、エネルギーを注ぎ、長い時間をかけて育んでいくべきものがあるならば、そこに注意を向ける。
そのような心の「引き算」をする行為を具体的に積み重ねることで、人は、いつまでも若くいることができるのである。
以上のような「引き算」に基づく若さの維持は、特に脳についてあてはまる。
若さというと、皮膚のツヤや髪のボリュームなど、外見のことを思い浮かべる人が多いだろう。
最近はいろいろと良い化粧品やクリームも出ているようで、私は専門外なので詳しくはないけれども、若々しい肌を保つ工夫があるようである。
しかし、「美魔女」を目指して、せっかく肌は20代を保っていても、肝心の脳は120歳相当、というのではもったいない。
日野原重明先生のように、100歳を超えてもなお若々しい脳を保っている方もいらっしゃるのだから。
肌の若さを保つのは私の専門ではないので、みなさんそれぞれ取り組んでいただくことにして、ここでは、脳の若さを保つ秘訣について、考えていきたい。
そのためには、「引き算」の大切さを理解することが必要なのである。