内臓脂肪と脂肪肝、密接な関係にあることを知っている人は多くないはず。自分には関係ないと思っていた脂肪肝を、見直してみるときです!
内蔵脂肪が増えると肝臓にも脂肪がたまる⁉
「肝臓は内臓脂肪細胞と、門脈という血管で直結しています。そのため内臓脂肪の変化はすぐに肝臓に伝わります。内臓脂肪が増えれば、肝臓の脂肪も増えて脂肪肝に。私の研究でも、内臓脂肪から分泌される善玉ホルモン『アディポネクチン』の低下と、肝機能の悪化の関連が示されました」(横山裕一先生)
脂肪肝は、お酒の飲みすぎというイメージが強いのですが、必ずしもアルコールだけが原因ではありません。
「脂肪肝の患者さんは、お酒を飲まない女性にも多いし、痩せている女性もいます。たいていは食べすぎ、糖質のとりすぎが原因。甘いものというよりも炭水化物のとりすぎです。逆に極端なダイエットで脂肪肝になる人がいるのも悩ましい現状です」(栗原 毅先生)
お酒を飲まなくても脂肪肝、
そして肝硬変へ
日本人の脂肪肝の原因で多いのは、実は食べすぎによるもの。これを非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼びます。
軽症状の単純性脂肪肝(NAFL)と、重症の非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の2種類があり、NASHは放置すると肝硬変、ついには肝臓がんへ進行する場合も。
NAFLDのうちの約20%はNASHと推測されています。NASHは肝臓に線維が増えていること。線維が大量に肝臓にたまると肝硬変になります。NAFLかNASHかは、下でご紹介するFIB-4 インデックスである程度の予想が可能。
健康診断の数値で脂肪肝の可能性がわかる!
健診のデータがあれば、出してみましょう。肝機能を見る数値は3つありますが、そのうち脂肪肝の目安になるのはASTとALT。たとえ基準値内でも、脂肪肝の可能性の指標になります。
- AST(GOT)……肝臓が破壊されていることを示す数値 基準値 30IU/L以下
- ALT(GPT)……肝臓の機能に異常が出ていることを示す数値 基準値 30IU/L以下
基準値内でもALTのほうが高かったら脂肪肝の可能性あり
危険な脂肪肝かどうかがわかる!
FIB-4(フィブフォー) インデックス
上でご紹介した脂肪肝の図内で、NAFLDがNASHに進行するととても危険です。NASHが始まっているかどうかは、肝臓の線維の蓄積度合で評価します。
「FIB-4 index」はそれを予測する指標のひとつです。
日本肝臓学会推薦のFB-4 indexは、血液データから算出します。健診などのAST、ALT、血小板数の数値がわかれば、誰でも計算できる指標。
コチラのリンクからどうぞ!
食べすぎもダイエットしすぎもどちらも危険!
「食事制限、特に極端な糖質制限で低栄養の状態が続くと、体は飢餓状態と感じて全身の中性脂肪を肝臓に送り込むよう働きます。その結果、脂肪肝になってしまったというケースも最近けっこうあるんです」と栗原 毅先生。
食べすぎも食べなさすぎも脂肪肝を招くことを覚えておいて!
教えていただいた先生
横山裕一さん
Hirokazu Yokoyama
1959年生まれ。慶應義塾大学保健管理センター教授。医学博士。当初、アルコール代謝を研究、米国留学中、アルコール脱水素酵素(ADH7)の遺伝子解析に従事。本センター異動後は、飲酒を含めた生活習慣、メタボリックシンドローム、脂肪肝などをテーマに数々の研究成果を報告。著書に『こうして落とす! 女性の内臓脂肪』(PHP 研究所)
栗原 毅さん
Takeshi Kurihara
1951年生まれ。栗原クリニック東京・日本橋院長。医学博士。日本肝臓学会専門医。治療だけでなく病気予防にも力を注ぎ、わかりやすい生活習慣指導に定評あり。肝臓専門医の視点を生かした消化器疾患、糖尿病、高脂血症、脂肪肝、内臓脂肪、肥満などに関する著書多数。クリニックは連日、健康を気遣う中高年で満員に。
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イラスト/マイコ センボクヤ(CWC) 構成・原文/蓮見則子