【教えていただいた方】
栗原クリニック東京・日本橋院長。 医学博士。北里大学医学部卒業。慶應義塾大学大学院教授、東京女子医科大学教授を歴任。2008年、メタボリックシンドロームや糖尿病などの生活習慣病の予防と治療を目的とした、栗原クリニック東京・日本橋を開院。おもな著書に、『図解で改善! ズボラでもラクラク! 1週間で脂肪肝はスッキリよくなる』(三笠書房)、肝臓専門医の視点を生かし、肝臓病や糖尿病、高脂血症などの「生活習慣病」の治療に従事。薬に頼らない改善方法を
こんにちは。
僕はあなたの右脇腹にいつもひっそりといるカンゾウ(=肝臓)です。
体内で「代謝」を司る僕は、実はダイエット成功のカギを握る重要な存在。「体型が気になっている人」「健康的に痩せたいという人」にはいつも「糖質控えめにしてくださいね」とお願いしています。
でも、ダイエットに励む人にとって「糖質控えめ」はもはや常識。毎日のご飯の量を少し減らしたり、外食でも丼物やパスタ、ラーメンはなるべく避けるようにしたり、毎日の食事に気を遣っていますよね?
そんな「絶賛ダイエット中!」の人に、プラスαでおすすめしたい方法をふたつ、今日はご紹介します。
ひとつは、なんとおやつ。
ダイエットの味方になってくれるというスイーツです。
カカオ70%以上の高カカオチョコがおすすめ
それは、高カカオチョコ。
一般的なチョコレートはカカオ分が30~40%ですが、高カカオチョコとはカカオ分が70%以上のもの。
スーパーやドラッグストア、コンビニで購入することができます。
カカオ分が80%、90%のものもありますが、効果はさほど変わらないうえに、苦くて食べにくいので、僕のおすすめは70%です。
一般的なスーパーやドラッグストアで販売されている高カカオチョコは1枚5gくらいのものが多いようなので、これを、朝昼夕の食前に1枚ずつ、食間に1枚ずつ食べてみてください。
ところで、高カカオチョコを食べることが、なぜダイエットにつながるのか、ちょっと不思議…ですよね。
その秘密は、カカオの成分にあるようです。
そこのところを、今回は肝臓の専門医であり、長年、脂肪肝などの肝臓病、メタボリックシンドローム、糖尿病などの生活習慣病の予防と治療を目的とした診療を長年続けている栗原毅先生に、カカオの効果について詳しく話を聞いてみましょう。
さらに、日本人にとってはなじみ深い飲み物、緑茶も脂肪の蓄積予防に効果的とのことなので、併せてご紹介いただきましょう。
食物繊維とカカオポリフェノールの力に注目!
カンゾウ君からバトンを受け、ここからは栗原がご説明しましょう。
高カカオチョコが、ダイエットをサポートするその理由のひとつは、食物繊維が豊富なことがあげられます。
チョコレートが食物繊維豊富だなんて、ちょっと意外に思うかもしれませんが、これは原料であるカカオに食物繊維が多く含まれているからです。
カカオ分72%のチョコレート25gには、食物繊維がおよそ3g含まれています。
ゆでたごぼう(25g)の食物繊維量は1.5g、生キャベツ(25g)は0.5g。これらと比較してもわかるように、高カカオチョコには非常に多くの食物繊維が含まれています。
そして、食物繊維には中性脂肪のもとになる糖質の吸収を抑え、血糖値の上昇を抑制する働きがあります。
ですから、おすすめの食べ方としては、朝食前、食間、昼食前、食間、夕食前に高カカオチョコをとっておくと、食事で摂取した糖質の吸収を抑えてくれるというわけです。
また、チョコレートの原料であるカカオに含まれる「カカオポリフェノール」も重要。
「ポリフェノール」という言葉は皆さん、耳にしたことがあるでしょう。
ポリフェノールとは、植物に含まれる色素や苦味の成分で、強力な抗酸化作用を持っています。
酸化とは、酸素が結びつくことで物質が変化してしまうこと。
私たちの体内で起きると、細胞が酸化し、老化の原因となります。
また、活性酸素が血液の成分と結びつくと、血液がドロドロになって肝臓の負担になってしまいます。
ポリフェノールの抗酸化作用は脂肪肝の予防に役立つのです。
ポリフェノールを含む食品としては赤ワインが有名ですが、カカオには赤ワインのおよそ5倍含まれています。
カカオポリフェノールの効果には、以下のようなものがあげられます。
・脂肪の蓄積を抑制する
・血管の炎症を抑えて血管を広げる
・LDLコレステロールの酸化を抑える
・血管をしなやかにする
・活性酸素を抑えて肌を美しくする
また、カカオポリフェノールにはストレス軽減効果があるという研究結果もあり、肝臓の負担になるといわれるストレスの軽減にも役立ちます。
茶カテキンが脂肪の蓄積を予防し体脂肪を燃焼!
また、飲み物としておすすめなのが緑茶です。なぜなら、緑茶には「カテキン」と呼ばれるポリフェノールが含まれているからです。
緑茶に含まれるカテキンには、以下の作用があります。
・肝臓や脂肪細胞における脂質代謝を活性化する
・血中の中性脂肪値の上昇を抑制する
・糖の分解・吸収を抑制する
・血糖値の上昇を緩やかにする
・脂肪の燃焼を促す
緑茶の健康効果を得るためには、なるべく急須に茶葉を入れ、ゆっくりと抽出して飲むのがおすすめです。
時間がないときはティーバッグやペットボトル入りのお茶でもよいでしょう。
飲む量は1日に湯飲み7杯分(およそ700ml)が目安です。
糖質の多いお菓子は避け、おやつも賢くとって
高カカオチョコであればむしろ積極的にとっていただきたいおやつですが、その一方、糖質の多い、クッキーやおせんべい、スナック菓子、清涼飲料水、缶コーヒー、果物などは避けるようにしたいものです。
また、最も注意すべきは、「果糖ブドウ糖液糖」という甘味料。
とうもろこしやじゃがいもなどから作られる果糖で、安価に製造できるうえに、いろいろな製品に混ぜやすく、冷やしても甘味が損なわれないので多くの清涼飲料水やスイーツなどの加工食品に使われています。
それゆえ、知らず知らずのうちに果糖をとりすぎている可能性があります。
商品の原材料の欄に「果糖ブドウ糖液糖」という記載がないかチェックを。
おすすめのおやつは、ナッツやチーズ、ゆで卵など、糖質が少なくタンパク質のとれるものをちょっとお腹に入れることです。
これによって、次の食事で血糖値が急上昇するのを防ぐことができます。
ダイエットは長期戦。無理なく続けられるよう、おやつも楽しむ工夫をしてみてください。
イラスト/内藤しなこ 取材・文/瀬戸由美子