【お話を伺った方】

愛国学園短期大学准教授、早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構招聘研究員、アスリートフードマイスター専任講師、発酵料理士協会特別講師として勤務するかたわら、ChronoManage代表として起業。「時間」という観点から、医学・栄養学・調理学の領域にアプローチする時間栄養学を研究。科学的根拠をもとにした生活アドバイスや栄養指導、実体験をもとにした講演活動や食育活動、料理教室も開催している。経験と研究で得た確かなデータに基づく論文が好評。著書に『決まった時間に起きて食べるだけ 10時間空腹リセットダイエット』(主婦の友社)など。
深夜のお菓子タイムが習慣化したツケが回って、まさかの体重17㎏増に!
時間栄養学とは「1日3食、どの時間帯に、どんな栄養素をとると効果的か?」と、〈時間〉に着目した食事のとり方を研究する学問です。今では時間栄養学の知識を生かし、適正体重を維持している理学博士・管理栄養士の古谷彰子先生ですが、かつては深夜にお菓子を食べる習慣がやめられず、「気がついたら17㎏も増えていた」という経験をしたことがあるのだとか。今回は古谷先生に、体重が激増した理由と、いかにしてダイエットに成功したかをインタビュー。
古谷先生が体重増加に頭を悩ませていたのは、10年前のことでした。
「当時は母校・早稲田大学の研究機関に所属し、深夜まで作業する日々。すっかり夜型生活になっていました。まさに〈体内時差ボケ〉に陥っていたと思います。しかも帰宅途中、コンビニに寄り道してお弁当やお菓子を買い込み、遅めの夕食をすませたあとも、ついついポテトチップスの大袋が空っぽになるまで食べてしまって。実は私、アイスクリームとスナック菓子が大好きだったんですよ」(古谷先生)
研究室では主にマウスを使った実験をしていたという古谷先生。時間栄養学の研究者として、〈ヒトの体内時計に合わせた食事〉について研究を深めていきたいと考えていた矢先でした。「すると恩師から、『栄養士の資格を取得したらどうかな。栄養や調理の理解が深まって、時間栄養学の研究に役立つのでは?』とすすめられたんですよ」
そこで早速、短大の栄養学科に入学。母校の研究機関に所属しながら短大に通うという、二足のわらじ生活をスタートさせました。
10歳年下の同級生たちから「ベイマックスみたい」と言われて、落ち込む
そうして生活環境が大きく変わり、忙しくなったことで、「ちょっと気分転換」のつもりで、‟深夜のお菓子タイム”に走った古谷先生。なんと体重が17㎏も増えてしまったのです。
ちょうどこの時期、初めての妊娠をしたことも体重増加に拍車をかけました。
ある日、白っぽい服を着て登校したとき、「アニメキャラクターのベイマックスみたい」と、10歳年下の同級生から言われたことで大ショック。
「彼女に悪気がないことはわかっていましたが、『こんなに太ってしまって、もう私、終わりだな。栄養士が太っていたら、栄養指導をしても説得力がないよね』って。時間栄養学の知識もあるし、短大で栄養と調理について学んでいるのに、「自分のことになると実践できないなんて」と落ち込みました。今ではクリニックで栄養指導の仕事もしていますが、自分自身が『痩せたいのに、痩せられない苦しみ』を経験したからこそ、患者さんの目線に立てるようになったと思っています」
産後、早寝早起きの生活をして、朝食をしっかり食べる習慣を続けたら、1年間で元の体重に!
古谷先生が17㎏のもの体重戻しに成功したのは、どんなことがきっかけだったのでしょうか。
「そういえば学生時代に研究データをもとにして、朝起きる時間と夜寝る時間を一定にしたら、〈食べる量〉を減らしていないのに痩せたことがあったなと、思い出したのが最初のきっかけです。産後は、子どもを保育園に預けてから短大や研究室に行く生活がスタートしたため、〈早起きする習慣〉がよい方向に作用したのだと思います」
また、早寝早起きするうちに、目覚ましがなくても朝5時に目覚めるようになりました。深夜におやつを食べる習慣がなくなったことで、毎朝空腹で目覚めるようになり、朝ごはんをしっかりと食べられるようになりました。すると、起き抜けに頭がボーっとすることがなくなり、体の調子がよくなったと感じられるように。
「時間栄養学では、朝・昼・夕の1日3食を毎日同じ時間帯に食べることが大前提で、特に朝ごはんをきちんととることが最重要ポイントです。なぜなら、朝ごはんを食べることで約10時間の空腹時間がリセットされて、体が目覚めるからです。すると昨日の続きの体内時計がリセットされ、今日一日の活動をスタートさせる体内時計のスイッチがオンになる働きがあるんですよ」
1日3食を一定時間に食べるようにしたら、1週間ほどで「痩せ始めた!?」と実感
「私の場合、産後以降、早寝早起きして朝食をしっかりと食べるようになったら、〈体内時差ボケ〉が解消され、一日のサイクルが整っていきました。昼食と夕食も同じ時間帯にとるようにして、小腹が減ったときには、夕食の2時間くらい前に、間食として個別包装されたナッツやドライフルーツなどを食べるようにしました。すると、夕食をたくさん食べなくても満足できるようになったんです」
朝・昼・夕の食事時間を一定にするよう心がけたら、1週間ほどで「少し痩せ始めたかも!?」と体感できて、モチベーションが上がったという古谷先生。
「毎朝5時に起床して、夜は子どもと一緒に就寝してしまうので、夜間のお菓子を食べる習慣がなくなりました。今まで後ろ倒しになっていた体内時計のリズムが数時間早まったことによって、食べる量を減らしたり、食べたい気持ちを我慢しなくても、1年間で元の体重に戻ることができました。深夜のお菓子タイムの習慣がなくなったことで、『以前よりもすっきり目覚めることができるようになった!』と、体感できたんです」
さて、太りやすい体から、太りにくい体へとギアチェンジする時間栄養学的ダイエットとはどんなものなのでしょうか。「体内時差ボケの正し方」や、「朝・昼・夕の食事にどんなものを食べたらいいのか?」など、時間栄養学的ダイエットのコツについて、次回以降、詳しくご紹介します!
イラスト/かくたりかこ 取材・文/大石久恵