夜は血糖値が上がりやすい。朝、昼の食事よりもカロリー控えめに
1日3回の食事の中で「夕食の比重が高くなりがち」という人が多いと思いますが、夕食はできるだけ軽めに、遅すぎない時間に食べるのがダイエットのコツ。
「実は、朝食でタンパク質をしっかりとると、夕食後の血糖値の上昇を緩やかにする効果があることがわかっています。ただし、昼食を抜いてしまうと、その効果がなくなってしまいます。夕食後の血糖値が上がりすぎないようにコンロールするためにも、朝、昼の食事をきちんととることが欠かせません」(古谷彰子先生)
【朝・昼の食事をきちんととると、夕食後の血糖値が抑制される】

Xiao&Furutani et al, Nutrients. 2023 Jan; 15(1): 85.
夜は、体が糖を処理しにくい時間帯です。夕方から夜にかけてはインスリンの効き(インスリン感受性)が低下するため、朝や昼に比べて同じ量の食事でも血糖値の高い状態が続きやすくなります。特に夜に高カロリーや糖質の多い食事をとると、血糖値が急激に上がり、その状態が長引くことで脂肪として蓄えられやすくなり、体重増加にもつながることになるのです。
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「私たちの体内時計は、夕方以降は体が休息モードとなって、エネルギー代謝が低くなります。夜間は余ったエネルギーを脂肪として体に蓄える時間帯ですから、高脂質、高糖質のものを食べすぎないようにしたいもの。肉料理をメインにするときは、できるだけ油を使わずに、『ゆでる』『蒸す』などの調理法で脂質を控えめにするといいですね」
また、仕事柄、帰宅時間が遅いなどの理由で、昼食から夕食までの時間があいてしまうと、夕食後の血糖値が急上昇してガクッと下がる「血糖値スパイク」を引き起こしてしまいがち。すると血管に負担がかかって、生活習慣病の発症リスクが高まってしまいます。
「帰宅が21時頃になるなら、夕食を小分けにする『分食』がおすすめです。例えば17~19時に麦ご飯のおにぎりなどを軽く食べ、帰宅後は主菜中心にするとよいでしょう。最初にとった食事が次の食事時の血糖値に影響を与えることを『セカンドミール効果』といいます。麦ご飯に含まれる食物繊維などが腸内環境やホルモン分泌に働きかけ、数時間後の食後血糖値の上昇を緩やかにしてくれると考えられています。また、先に軽く食べておくことで、帰宅後のドカ食いや間食を防ぐことにもつながりますよ!」

「夕食のおかずの品数が多く、ついつい食べすぎてしまいがち」という場合は、カロリーオーバーを防ぐためにも、おかずの1品を翌日の朝食に回すといいでしょう。
夕食に何を食べるといいの?
主食には麦ご飯を。主菜には「地下茎デンプン」+タンパク質を組み合わせて
「夕食には血糖値が上がりにくいものを選びましょう。例えば、主食となる炭水化物には、もち麦やオーツ麦を白米に混ぜた麦ご飯や雑穀ご飯、玄米がおすすめ。雑穀類には食物繊維が豊富に含まれ、食後血糖値の上がるペースが緩やかになるのです。麺類を食べるときも、うどんよりもそばのほうがいいでしょう」
また、土の下にできるじゃがいも、さつまいも、にんじんなどの「地下茎デンプン」は粒子が大きく、消化吸収がゆっくり。血糖値の上昇が穏やかなので、夕食の主菜や副菜に向いています。春雨はじゃがいもやさつまいものデンプンを原料にしているので、メインのおかずには、春雨、肉、野菜を炒め合わせたチャプチェ、麻婆春雨、根菜たっぷりの汁物などもおすすめです。
主食の炭水化物を減らすときは、血糖値が上がりにくいいも類に置き換えて
夕食でご飯の糖質をカットしたいときには、じゃがいも、さつまいも、長いもなどのいも類に置き換えるといいでしょう。いも類に含まれるデンプンは食物繊維が豊富に含まれ、血糖値が上がるペースが緩やか。肉じゃが、ポテトグラタン、ポテトサラダなどメニューのバリエーションもあり、満足度が高く、ダイエット中にもおすすめです。ただし、フライドポテトは脂質が多いので、夕食にはNG。
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タンパク質の摂取には、植物性の大豆製品や豆類がおすすめ
夕食で肉類を食べるときには高脂質にならないように注意。焼き肉やトンカツなどは控えて、野菜と一緒にホイル蒸しにするなど、調理法を工夫しましょう。
「夕食におすすめのタンパク質は、植物性タンパク質が豊富な大豆製品や豆類です。特に納豆や豆類は食物繊維も含み、食後血糖値の上昇を緩やかにする働きがあります。また、納豆に含まれるビタミンKは骨の健康維持に役立つ栄養素です。
ヒトの骨形成は夕方から夜にかけて活発になるとされているため、カルシウムが豊富な小魚や海藻、緑黄色野菜などと一緒に夕食でとると、骨づくりに効果的と考えられます。さらに、時間栄養学の研究では、ビタミンKがインスリン分泌などを通じて体内時計の調整にかかわる可能性も。朝にとれば体内時計のリズム調整、夜にとれば骨の健康サポートと、目的に応じたとり方を意識できるかもしれませんね」
カレーライスを食べるときは、もち麦や玄米、カリフラワーライスにすると低糖質になる
「夕食でカレーライスを食べるときには、白米ではなく、もち麦100%で炊いたご飯や、玄米ご飯にするのもよい方法。また、カリフラワーを細かくきざんで、白いご飯に見立てたカリフラワーライスも低糖質です。あるいはライスの代わりにキャベツやレタスにカレーをかける食べ方もアリ。朝と昼にしっかり食べて、夕食で糖質オフにするのであれば、ダイエットに効果的です」
古谷先生のおすすめ夕食メニュー
★炊いたもち麦を小分けにして冷凍保存。サラダやスープにトッピングしても
もち麦100%で炊飯するときは、もち麦の重量に対して3倍の水を入れて、炊飯器のスイッチをオン。炊き上がったもち麦ご飯を小分けにして冷凍保存しておくと、サラダやスープにトッピングして使うことができて便利です。冷凍保存したもち麦を、さいの目に切った野菜(玉ねぎ、にんじん、じゃがいもなど)、サラダチキン、卵とともに少量のオリーブ油で炒め、コンソメの素などで味を整えて、チャーハンにしてもよいでしょう。
★高野豆腐のチャプチェ
牛肉や豚肉の代わりに、植物性タンパク質の豊富な高野豆腐(湯で戻して水気をしぼっておく)を使ったノンオイル、低カロリーなチャプチェです。フライパンに水300mlと春雨を入れ、沸騰したら、細切りにした高野豆腐と野菜(かぼちゃ、まいたけ、ピーマンなど)とともに、中華風スープの素などを加えて、汁気がなくなるまで炒め煮します。一皿で植物性タンパク質+地下茎デンプン+食物繊維を補給できます。
★おいもたっぷり汁
ひと口大に切った長いも、さつまいも、にんじん、こんにゃく、蒸し大豆、春雨を入れた具だくさん味噌汁。植物性タンパク質+地下茎デンプン+食物繊維を補給できる夕食向きの副菜です。いも類は血糖値が上がりにくく、食べ応えがあるので、糖質オフでごはんを抜いたときでも満足感が得られます。
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【お話を伺った方】

愛国学園短期大学准教授、早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構招聘研究員、アスリートフードマイスター専任講師、発酵料理士協会特別講師として勤務するかたわら、ChronoManage代表として起業。「時間」という観点から、医学・栄養学・調理学の領域にアプローチする時間栄養学を研究。科学的根拠をもとにした生活アドバイスや栄養指導、実体験をもとにした講演活動や食育活動、料理教室も開催している。経験と研究で得た確かなデータに基づく論文が好評。著書に『決まった時間に起きて食べるだけ 10時間空腹リセットダイエット』(主婦の友社)など。
イラスト/かくたりかこ 取材・文/大石久恵


