夕食前なら、ポテトチップスの小袋を食べても太らないって、本当?
甘いお菓子や清涼飲料水、フルーツなどをとりすぎると、体脂肪として体に蓄えられてしまうというのは周知の事実。でも、夕食の2時間前に200kcal以内の食物繊維が豊富なものを食べると、夕食後の血糖値の急上昇を緩やかにしてくれる働きがあるのだそうです。これは「セカンドミール効果」と呼ばれる作用。
古谷先生が若年女性を対象に“夕食の2時間前に間食するグループ”と“夕食の4時間前に間食するグループ”に分けて、夕食後の血糖値の上昇をチェックするデータをとったところ、驚くべき結果が! なんと“夕食の2時間前”であれば、ポテトチップスを食べても血糖値が急上昇しない(=太りにくい)という結果が確認できたのです。
ポテトチップスといえば、スナック菓子の代表格。夜間に食べたら間違いなく太りますが、「夕食の2時間前に約200kcalのポテトチップス(小袋1袋分・約30g)を食べてもらったところ、夕食後の食後血糖値が抑制される効果が見られました」と、古谷先生。

この実験は若年女性を対象に行われましたが、OurAge世代の私たちもほぼ同様の効果が期待できるそうですよ!
食物繊維が豊富&200kcal以内のおやつを食べると、夕食後の血糖値の抑制効果が!
この実験で、間食として食べ比べたおやつは「黒豆」「ポテトチップス」「フルーツグラノーラ」「焼きいも」の4種類。夕食後の血糖値の上昇についての調べたところ、“夕食の2時間前に間食するグループ”では4種類すべてにおいて、“夕食の4時間前に間食するグループ”では「フルーツグラノーラ」と「焼きいも」を食べた場合に、夕食後の血糖値の上昇を抑える働きがあることが確認できました。つまり、“夕食の2時間前”のほうが太りにくいということになります。
ただし、夕食の2時間前のデータでは、「黒豆」を食べた場合、「フルーツグラノーラ」「ポテトチップス」「焼きいも」に比べて夕食後の血糖値がやや高めに出ました。古谷先生によれば、これは「黒豆に含まれる糖質が少ないため」なのだそう。一方、“夕食の4時間前”のデータでは、「焼きいも」を食べたときに夕食後の血糖値がいちばん低くなっています。これは「焼いもに含まれる食物繊維量が4種類中で最も多く、糖質を含んでいる」というのが理由とのこと。
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【夕食4時間前に間食をとるケースと、夕食2時間前に間食をとるケースでの血糖値の変化の違い】

↑夕食の2時間前にとる間食のほうが夕食後血糖値が乱高下しにくい
Masutomi et al.,European Journal of Nutrition, 2023
「夕食前に間食をとる際、『豊富な食物繊維と、多少の糖質を含むもの』をとることによって、『セカンドミール効果』が発揮されるのです。いずれにしても、『間食なし』の場合よりも、「夕食前に食物繊維が豊富な食品を間食する」ほうが、夕食後の血糖値上昇を抑える働きがあります。間食を賢く取り入れて、太りにくい体づくりに役立てましょう」
間食は、いつ、何を食べるといいの?
甘いものを食べるなら朝、食物繊維が豊富なものを食べるなら夕食前に
間食を食後血糖値のコントロールに生かすには、食べるタイミングが重要。例えば夕食前にフルーツグラノーラを食べると、夕食後の血糖値上昇が穏やかになりますが、逆に夕食後にフルーツグラノーラを食べてしまうと、血糖値がぐんと上がってしまうのです。同じ食べ物でも、食べる時間帯によって血糖値が急上昇し、太りやすくなってしまうということです。
「夕食後は基本的に体が脂肪をため込もうとする時間帯。『デザートを食べるなら夕食前に食べて、夕食後には食べない』というのが得策です。あと、アイスクリームやケーキなどを食べるなら、朝がおすすめ。朝は糖質の嗜好性が低下する時間帯なので、朝にデザートタイムを持っていくことで、食べる量を減らすことができます」
ちなみに、夜遅く食べると太りやすいのは、体内時計が脂肪をため込みやすいモードに切り替わるからです。体内時計を司るタンパク質「BMAL1(ビーマルワン)」は、夜になると増えて脂肪を合成しやすくします。特に夜遅い時間(おおむね夜10時以降)の間食は、脂肪がつきやすいので注意が必要です。
一方で、起きてから5~8時間ほどたった昼~午後の時間帯は、血糖値のコントロールがよく、太りにくい時間帯といわれています。間食をするなら、この時間帯がおすすめです。
夕食の2時間前に、ナッツとドライフルーツを食べるのもおすすめ
アーモンドやくるみ、カシューナッツなどのミックスナッツとともに、レーズンやドライマンゴー、ドライいちじく、デーツなどのドライフルーツを一緒にとると、夕食後の血糖値の上昇を抑制する効果があります。
「ナッツは食物繊維が豊富で、ドライフルーツには食物繊維と糖質が含まれています。糖質を適度にとることで、夕食後の血糖値上昇が緩やかになりやすくなります。最近はチーズ入りのミックスナッツも市販されていますよね。個別包装されている小袋タイプを利用すると、適量を摂取できます」
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ポテトチップスは、夕食前なら食べても太らない
夕食前に間食をとる際に肝心なのは、「1日当たりの間食の摂取カロリーを200kcal以内にとどめる」こと。また、「食物繊維がたっぷりで、多少の糖質を含むものを選ぶ」ことです。
「夜寝る前にポテトチップスを食べると、血糖値が急上昇して太りやすくなりますが、夕食前の時間帯であれば、血糖値の急上昇が抑制され、ポテトチップスを食べても太りませんよ」
古谷先生のおすすめ間食アイテム
★フルーツグラノーラ
牛乳や豆乳、ヨーグルトと一緒に食べても。お通じを整えて、腸内環境をよくする効果も。
★ポテトチップス
食べる量は小袋1袋(約30g見当)以内にとどめるのが原則。間食としてとった200kcal分を引き算して、夕食のご飯を減らせば、太ることはありません。
★焼きいも
食物繊維がたっぷりで、糖質も含むため、夕食後の血糖値をコントロールする作用が抜群。
★麦ご飯のおにぎり など
食物繊維を豊富に含む炭水化物を夕食前に食べて、夕食では主菜のおかずだけを食べるようにすると、夕食後の血糖値の上昇が緩やかになります。
★ミックスナッツ&ドライフルーツ
1回に食べる量は、片方の手のひらにこんもりと盛る程度で、150kcal見当です。ミックスナッツとチーズの組み合わせで、食物繊維+タンパク質をとるのもよいでしょう。
その他、黒豆、枝豆、チーズ、ヨーグルトなどもおすすめです。
【お話を伺った方】

愛国学園短期大学准教授、早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構招聘研究員、アスリートフードマイスター専任講師、発酵料理士協会特別講師として勤務するかたわら、ChronoManage代表として起業。「時間」という観点から、医学・栄養学・調理学の領域にアプローチする時間栄養学を研究。科学的根拠をもとにした生活アドバイスや栄養指導、実体験をもとにした講演活動や食育活動、料理教室も開催している。経験と研究で得た確かなデータに基づく論文が好評。著書に『決まった時間に起きて食べるだけ 10時間空腹リセットダイエット』(主婦の友社)など。
イラスト/かくたりかこ 取材・文/大石久恵


