食事は1日1回の夕食のみ。深夜のお菓子タイムがやめられないA子さん(48歳)が…
フリーランスの仕事をしているA子さんは、標準体型で体重53㎏。BMIは22.5で適正範囲内ですが、最近、お腹まわりが気になっているのだそう。目下の悩みは睡眠の質がイマイチで、すっきりと寝た感じがしないこと。そして、体の疲れが取れにくいこと。
古谷先生が日頃の食生活についてヒアリングしたところ、A子さんの食事は1日1回の夕食のみで、夜8~9時以降と遅めの時間帯でした。しかも、深夜にスナック菓子や甘いものを食べる習慣があり、「朝はまったくお腹が空かないから、朝ごはんを食べない」というのです。
例えば、ある日のA子さんの夕食は、主菜にハンバーグと魚のフライ、副菜にトマトサラダ、野菜のナムル、春雨のあえ物、それにご飯という組み合わせ。さらに夕食後、深夜の時間帯にポテトチップスやチョコレート、クッキー、アイスクリームなどを次々と食べてしまうA子さん。お菓子を食べても太らないこともあって、深夜のお菓子タイムが常習化している状態でした。

A子さんの問題点は、朝昼の食事を抜いて、夕食でドカ食いしてしまうこと
古谷先生によれば、「A子さんの食べ方の問題点は、1日1回の夕食で2~3人前の量をドカ食いしていること。食事内容は比較的バランスがとれていますが、明らかにカロリーオーバーです。また、夕食後についついお菓子を食べてしまうのは、朝食と昼食を食べていないために空腹感が増してしまうせいと考えられます。そのうえ、就寝前にお菓子を食べる習慣によって、夜間に熟睡できずに朝の目覚めが悪くなり、『朝はお腹が空かない』『朝食を食べられない』という悪循環に陥っていますね。まさに“体内時差ボケ”(ソーシャル・ジェットラグ)を起こしている状態です。平日と休日の起床時間がずれるだけでも、体内時計の乱れが引き起こされてしまうんですよ」。
現段階ではA子さんに肥満傾向はみられませんが、油断は禁物。夕食のドカ食いによって「血糖値スパイク」(血糖値が急上昇してガクンと下がる)を引き起こし、この先、動脈硬化や糖尿病に移行する恐れもあるからです。
食生活を改善して、体内時計を整える3つのポイントとは?
そこで、古谷先生は体内時計の乱れを正す改善策として、A子さんが夕食でドカンと食べる食事量を1日3食に振り分けて食べるように、下記の3つのポイントをアドバイスしました。
・朝はタンパク質をとるように心がけましょう
・夜はなるべく糖質を少なくしましょう
・お菓子などの間食は昼間の時間帯に
朝食で手軽にタンパク質をとるには鮭、納豆、チーズ、ヨーグルトなどがおすすめ
「A子さんは『10代の頃から朝ごはんを食べた記憶がない。パンも食べられない』ということだったので、『とにかく朝食を食べる!』というところからスタート。最初は鮭茶漬けを食べるところから始めてもらいました」
本来は、朝食でタンパク質を30gとることが望ましいのですが、まずはタンパク質を20gくらいとることを目標にしました。
「栄養指導を受けた直後は、朝食に鮭茶漬けを食べるのがやっとだったA子さんでしたが、1週間後には納豆チーズトースト、野菜ジュース、温野菜、ヨーグルトを食べられるように。朝食でタンパク質を約20gとることができるようになりました」
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夕食では春雨や根菜などの地下茎炭水化物を取り入れて、糖質を控えめに
また、夕食では糖質量を抑えるために、春雨と野菜のチャプチェ(韓国風炒め物)、根菜たっぶりの具だくさんの汁物などをメイン料理として、ご飯の量を控えめにするように意識してもらいました。
「夜は脂肪を燃焼する代謝の経路が休息モードに入り、逆に脂肪をため込もうとする時間帯なので、ドカ食いはNG です。『食べすぎてしまいがち』という人は、副菜の小鉢一品を翌朝に回すとちょうどよいかもしれません」
間食は深夜の時間帯ではなく、夕食の2時間前までに食べるように
これまでは深夜に間食していたA子さんでしたが、古谷先生のアドバイスによって、「間食する時間帯は日中に」というルールを決めることに。食べるものに関しても、スナック菓子に偏らず、栄養補給のためにミルクプロテイン飲料+バナナ1本、市販のサラダチキン+アイスクリームなどをチョイスするようになりました。
「A子さんはポテトチップスが好きということだったので、深夜に食べるのはやめて、その代わり、夕食の2時間前に食べてもらうことにしました。夕食前に『豊富な食物繊維と、多少の糖質を含むもの』を食べると、『セカンドミール効果』によって、夕食後の食後血糖値を抑制する働きがあるのです。ただし、食べすぎないように、小袋1袋分(約30g)程度が適量です。また、夕方にポテトチップスを食べたときは、主食の量を控えめにするなど、糖質の摂取量を調節すれば、カロリーオーバーになりませんよ」
3つのポイントを実践して食生活を改善。すると2週間で週間で1.8㎏減量できた!
こうして食生活の改善を試みてからわずか1週間後、A子さんは早くも自分の体の変化を実感できるようになりました。最も顕著だったのは、中途覚醒がなくなって、朝の目覚めがよくなったこと、そして、2週間後には体重が53㎏から51.2㎏に減ったことです!
ちなみに下のグラフは、2週間わたってA子さんの睡眠時間を記録したグラフです。これまでは起床時間が不規則でしたが、食生活の改善に取り組み始めて5日後以降、朝6時前後に目覚めることができるようになったのがわかります。9日目だけ、仕事の関係で就寝時間が午前4時、起床時間が7時になっていますが、この日の夜はいつもより早めに就寝し、〝体内時差ボケ″を引きずることがありませんでした。古谷先生によれば、「これは起床後、1~2時間以内に朝食をとったことで、一日の始まりの体内時計のスイッチをオンにした効果」なのだそう。
朝食を食べるようになったら、睡眠のリズムが整うように

古谷彰子解析資料
体内時計を整える食事で、2週間で体重が1.8㎏減った!

古谷彰子解析資料
「ただ、『朝6時に起きなければいけない』『朝早く起きなければ、体内時計が乱れてしまう』というわけではないんです。要はその人の位置日の始まりの時間をどこに設定するかが重要です」
例えば、『仕事の関係で帰宅時間が遅いために朝10時に起きる』という場合、毎日そのサイクルを繰り返しているのなら、そのままでも問題ありません。むしろ、『今日は朝6時に起きて、明日は10時に起きる』という生活をするのが“体内時差ボケ”(ソーシャル・ジェットラグ)を招くのです。
「せっかく朝6時に起きたとしても、何も食べずに10時くらいに朝食をとるようだと、体内時計をリセットできず、スイッチオンの時間が10時になってしまいます。起床後1~2時間のうちに朝食を食べた時間が“体内時計のリセット&開始点”になるので、毎日、一定の時間に朝食を食べるようにしましょう」
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【お話を伺った方】

愛国学園短期大学准教授、早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構招聘研究員、アスリートフードマイスター専任講師、発酵料理士協会特別講師として勤務するかたわら、ChronoManage代表として起業。「時間」という観点から、医学・栄養学・調理学の領域にアプローチする時間栄養学を研究。科学的根拠をもとにした生活アドバイスや栄養指導、実体験をもとにした講演活動や食育活動、料理教室も開催している。経験と研究で得た確かなデータに基づく論文が好評。著書に『決まった時間に起きて食べるだけ 10時間空腹リセットダイエット』(主婦の友社)など。
イラスト/かくたりかこ 取材・文/大石久恵


