根来 秋も深まりつつありますが、皆さん、お元気ですか? 根来秀行です。
前回から「呼吸年齢を若く保つ」プロジェクトがスタート。鍵を握るのは細胞呼吸です。
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いし 秋なのにバテ気味で呼吸するのも億劫になっているぐうたらライターのいしまるこです。
原稿を書いているとすぐに疲れるのは、ミトコンドリアが細胞呼吸をさぼっているせいでしょうか?
根来 そうですねぇ。確かに、近年、スマホやパソコン操作によるIT猫背が増えて、細胞呼吸を阻害するような、浅く速い呼吸をしている人が目につきます。
いし 呼吸が浅くなっているのは、コロナ疲れもありますよね。やっぱり深呼吸して肺に酸素をいっぱい取り込んだほうが、細胞呼吸の効率も上がるんでしょう?
根来 それが違うんですよ。酸素をいっぱい吸い込めばいい気がしますが、普通に生活している場合、血液中の酸素が不足することはほとんどなく、むしろ体内には酸素が余っていることが多いのです。
いし えー、意外。体内に酸素は十分あるのに、なぜ細胞呼吸に使われないの??
根来 実は、酸素の運搬は動脈血中の二酸化炭素濃度に左右されるんです。
酸素を運ぶのは赤血球のヘモグロビンですが、二酸化炭素濃度が低いと、ヘモグロビンは酸素を切り離しにくくなり、細胞に到着しても酸素を引き渡すことなく、結合したまま再び血中を漂うことに。せっかく酸素が血中にあるのに、細胞呼吸の効率は著しく落ちるのです。
赤血球は酸素のドライバー
肺呼吸で取り込まれた酸素は気管、気管支、肺胞を介して毛細血管へと取り込まれ、毛細血管を通じて全身の細胞に運ばれます。その際、酸素を運ぶのが赤血球のヘモグロビン。細胞に到着するとヘモグロビンは酸素を切り離し、細胞内のミトコンドリアへと引き渡します。
いし ということは、細胞呼吸を促しているのは、酸素ではなくて二酸化炭素?
根来 そうです。細胞呼吸で使われる酸素の量は、血中の二酸化炭素の量で決まるのです。これは「ボーア効果」と呼ばれる、100年以上前に発見された理論によるものです。
いし ふんふん。
ボーア効果
縦軸は動脈血中のヘモグロビンと酸素がくっついている割合。横軸は赤血球の周囲の酸素の量、つまり赤血球から切り離された酸素の量を意味します。血中の二酸化炭素が多いほど赤血球から酸素が切り離され、細胞により多くの酸素が渡されていることがわかります。
根来 血中の二酸化炭素濃度が基準より低いと、赤血球のヘモグロビンは酸素を切り離しにくくなります。ヘモグロビンと結びついたままの酸素は、細胞内には入れず、細胞呼吸として利用されることもないまま、呼気として体外に排出されます。
また、余った酸素の一部は、血中にとどまっている間に酸化して活性酸素になり、細胞を傷つける側に回ることさえあります。
●二酸化炭素が十分だと…
血液中に二酸化炭素が十分にあれば、酸素は赤血球から細胞へ無事引き渡され、細胞呼吸ができる。
●二酸化炭素が少ないと…
血液中に二酸化炭素が少ないと、赤血球は酸素を抱えたまま血管内をぐるぐる回ることに。
いし 浅くて速い呼吸をしている人は呼吸数が多くなるから、血中の二酸化炭素濃度が低くなって、細胞呼吸の効率が悪いということですか?
根来 その通り。息を吸い込むとき大気中の二酸化炭素濃度は約0.04%ですが、呼気中では約5%で排出される。つまり1回呼吸すると、吸気の125倍の二酸化炭素が吐き出されることになり、呼吸するほど二酸化炭素は血中から減っていき、細胞呼吸の効率も低下していくのです。
いし なるほどー。まずは自分の呼吸の状態を知ることが大事ですね。でも、普段自分がどんな呼吸をしているのか、意外にわかっていない人が多いんじゃないかなあ。
根来 実は簡単なテストで調べることができるので、次回、ご紹介しましょう。
それではみなさん、今日も素敵な1日を!
(次回は『あなたの呼吸を診断します! 』です。お楽しみに!)
取材・文/石丸久美子 イラスト/浅生ハルミン