ともに医師である名越康文さんと根来秀行さん。メディア共演をきっかけに10年来親交を深めている二人が、コロナ時代、穏やかで健やかに生きていくための大切なことを語り合いました。カギとなるのは細胞呼吸です!
名越康文さん
Yasufumi Nakoshi
1960年生まれ。精神科医。相愛大学、高野山大学客員教授。専門は思春期精神医学、精神療法。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など、さまざまな分野で活躍中。著書に『「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行)、『生きるのが“ふっと”楽になる13のことば』(朝日新聞出版)、『精神科医が教える 良質読書』(かんき出版)など。夜間飛行よりメールマガジン「生きるための対話」、通信講座「名越式性格分類ゼミ(通信講座版)」配信中
細胞レベルで免疫を高め、新型コロナを遠ざける!
根来 お久しぶりです。3月に一緒にごはんを食べて以来ですね。
名越 あのとき『病まないための細胞呼吸レッスン』をいただいて。もう1冊欲しくなって買いました。
根来 わ、ありがとうございます! 細胞呼吸は「細胞が酸素と栄養素からエネルギーを生み出すプロセス」のことで、まさに生命活動の根源なので、皆さんにもっと知ってほしいんです。
名越 この本を読むと、細胞呼吸の滞りが、いろんな病気の根っこにあることがよくわかる。新型コロナだってそうでしょ。
「すべての病気の根っこに細胞呼吸の滞りがあります」(根来秀行さん)
根来 はい。新型コロナウイルスは肺炎で重症化しますが、これは肺胞のまわりにある毛細血管にウイルスが取りついて炎症が起きることによります。すると周辺に炎症が広がり、毛細血管も詰まってしまい、細胞呼吸の元になる酸素や栄養素が細胞に届きにくくなります。エネルギー不足に陥った細胞を取り巻く内部環境は、どんどん悪化して感染を広げ、さらに免疫機能が低下します。
感染が進むと、免疫細胞から異常を知らせる警報物質サイトカインが大量発生し、全身症状が悪化。最悪の場合、肺呼吸ができなくなり、さらには多臓器不全を起こして、命を落とすことにもなります。
名越 サイトカインストーム、いわゆる免疫暴走ですね。NYで感染がバッと広がった頃、死亡した人の多くが黒人で高度な肥満だったという報道を見て、ファストフードなどに偏った食事で毛細血管がやられてるのではと思ったんですよ。日本で新型コロナによる死亡率が低いのは、日本人に肥満が少ないことが理由のひとつ?
根来 それも一因かと思います。肥満や糖尿病などで毛細血管が劣化している人は、内部環境が悪化していて、細胞呼吸が滞り、免疫機能も低下していて、病気が重症化しやすいんです。偏った食事や不規則な生活、睡眠や運動の不足など、不健康な生活習慣の積み重ねで全身の毛細血管が劣化している人は、新型コロナに対しても悪条件になると思います。
「細胞呼吸を知ることは、新型コロナウイルス対策につながるね」(名越康文さん)
名越 新型コロナウイルスには、人が本来持っている自然免疫がかなり有効だという説も出てるけど、細胞呼吸に働きかけるメソッドは、まさに自然免疫にアプローチするものですよね。
根来 そうなんです。細胞呼吸を促す生活習慣によって自然免疫を高めることができますし、それによって、新型コロナを遠ざけることもできると思います。
細胞を取り巻く内部環境が免疫力を左右する!
細胞が暮らす「内部環境」は、体液で満たされています。内部環境が整っていると細胞呼吸がスムーズに行われ、免疫力が強くなりますが、内部環境が悪化すると細胞呼吸も滞り、免疫力も弱ります。
内部環境が整っている!
細胞は毛細血管を通じて、細胞呼吸の元になる酸素と栄養素を得ます。引き換えに細胞から排出された二酸化炭素と老廃物は毛細血管とリンパ管が回収。この供給と回収のバランスがとれていると、毛細血管と細胞間(約0.03㎜)の内部環境もクリーンになって細胞呼吸が促され、免疫力もUP!
内部環境が悪化すると…
不健康な生活習慣は、少しずつ毛細血管を蝕み、リンパの流れを悪化させ、内部環境を汚します。酸素や栄養素を届ける毛細血管のルートも途絶えがちになり、細胞呼吸が滞り、免疫力も低下。体調をくずしたり、病気を招いたり、寿命を縮めることにもつながります。
参考書はコレ!
『ハーバード&ソルボンヌ大学 Dr.根来の特別授業病まないための細胞呼吸レッスン』
根来秀行 著/集英社 1,300円
新型コロナ対策としても知っておきたい細胞の仕組みや、免疫力を高めて病まない心と体に導き、体の潜在能力を引き出すメソッドが満載。青山学院大学駅伝競走チームの選手や原晋監督も実践して、今年の箱根駅伝の優勝に貢献。全身の細胞に効く一冊です。
撮影/角守裕二 イラスト/浅生ハルミン 構成・原文/石丸久美子