コロナ時代、ステイホームの副作用であるうつの実態とは? メディア共演をきっかけに10年来親交を深めている、医師である名越康文さんと根来秀行さんの二人が語ります。
名越康文さん
Yasufumi Nakoshi
1960年生まれ。精神科医。相愛大学、高野山大学客員教授。専門は思春期精神医学、精神療法。臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など、さまざまな分野で活躍中。著書に『「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』(夜間飛行)、『生きるのが“ふっと”楽になる13のことば』(朝日新聞出版)、『精神科医が教える 良質読書』(かんき出版)など。夜間飛行よりメールマガジン「生きるための対話」、通信講座「名越式性格分類ゼミ(通信講座版)」配信中
うつには薬より運動のほうが効く!?
名越 コロナ禍でストレスを訴える人が増えたけど、ステイホームの副作用は大きかったですよ。「家にこもれ」って、精神的にはかなりキツいことやから。
根来 外出しなくなると運動量が減るから、夜になっても眠くなくて、スマホを見たり酒を飲んだり、つい夜更かしする。それが続くと体内時計が乱れてきて、自律神経とホルモンも機能低下し、内部環境がじわじわ悪化。体調も気持ちも不安定になって、1カ月もすればコロナうつに…。
名越 まさにそれがうつの実態。体と心はつながっているんです。
根来 でも、運動しないことの弊害がメンタルにまでくるって、知らない人が多いと思います。
名越 心の悩みを持ってるとね、精神は“高尚”になってくるんです。だから抑うつ的になっている人に、「朝起きて運動しなさい」と言っても、「運動!? 人生に悩んでるのに!!」ってなる。運動とか食事より薬物療法だろうと。
根来 わかります(笑)。日本の場合、皆保険ということもあって患者も医者も安易に薬に頼りがちだけど、安定剤や睡眠薬は体本来の修復力を阻害します。使い続けたら内部環境はどんどん劣悪になり、ますます眠れなくなって、確実に負のスパイラルに突入します。
名越 薬は対症療法にしかならないことも多いし、場合によっては状況を悪くすることもある。新型コロナでも、やみくもに検査やワクチンを求める声も高いけど、まずは情報を吟味して基本的な知識を身につけるべきだと思います。基本の知識があれば大きなストレスはかからず、危機的状況でも臨機応変に対応できて心を病むまでには至りにくいはずです。
参考書はコレ!
『ハーバード&ソルボンヌ大学 Dr.根来の特別授業病まないための細胞呼吸レッスン』
根来秀行 著/集英社 1,300円
新型コロナ対策としても知っておきたい細胞の仕組みや、免疫力を高めて病まない心と体に導き、体の潜在能力を引き出すメソッドが満載。青山学院大学駅伝競走チームの選手や原晋監督も実践して、今年の箱根駅伝の優勝に貢献。全身の細胞に効く一冊です。
撮影/角守裕二 構成・原文/石丸久美子