私がお答えします!
東京八重洲クリニック
院長
岡 寛さん Hiroshi Oka
東京医科大学八王子医療センター兼任教授。聖マリアンナ医科大学免疫学講座客員教授。線維筋痛症研究班班長、日本線維筋痛症学会会長などを歴任
相談
体が痛いのですが、検査では「異常なし」。家族にもつらさを理解してもらえません。どんな病気が考えられますか?
答え
線維筋痛症の疑いがあります。リウマチ科の専門医に相談し、正しい診断と的確な治療を受けることをおすすめします。
線維筋痛症とは?
全身が激しく痛み、
疲労も伴うつらい病気です。
「体のあちこちが痛くて動けない」「体がだるくてつらい」。それなのに、病院の一般的な検査では病変が見つからない。医師からも“気のせい”と言われ、家族からも理解してもらえない…。
こんな原因不明の痛みに悩まされているなら、それは線維筋痛症かもしれません。
線維筋痛症は体の広い範囲に痛みが生じる疾患で、日本の推定患者数は200万人ほど。近年ではレディー・ガガさんが罹患していることで話題になりましたが、まだ医師にさえ十分には認知されていない病気です。
幅広い年齢で発症しますが、特に30~60代の女性に多く、主訴は全身の疼痛です。最初は限られた部位が痛みだし、その範囲が徐々に広がっていきます。上半身や右半身といった体の表面だけでなく、頸椎(けいつい)、胸椎、腰椎などの体軸部まで痛むのが特徴。
痛みの程度は人それぞれですが、中には身動きできないほどの人もいて、その痛みは骨折に匹敵するともいわれています。痛みの原因は解明されていませんが、脳の誤作動で痛みが増幅し続けるという説が有力です。
ほかに、睡眠障害や不安感などの不定愁訴を伴うことも。特に疲労感が多く、日常生活や就労に支障が出ることもあります。
診断基準は①体の広範囲の疼痛、②3カ月以上継続する、③触診で18カ所の圧痛点のうち、11カ所以上に圧痛が認められること。
関節リウマチなどと間違えやすいので、受診はリウマチ科の専門医がおすすめです。
この病気の発症の引き金になるのはストレス。例えば、手術や外傷などの身体的ストレス、虐待、性被害、いじめ、離婚、死別などの精神的ストレスなどです。几帳面で完璧主義、「こうしなければ…」という強迫観念の強い人、頑張り屋さんほどかかりやすい傾向があります。
治療の最初の軸は“痛みを軽減すること”です。これが睡眠障害や運動量の低下など、二次的な問題を改善する糸口になります。
中心となるのは薬物療法ですが、ほかに筋肉が硬くなっている場合は、トリガーポイント注射や温熱療法、筋弛緩剤、ストレッチなどの運動療法を組み合わせて、症状に応じたテーラーメイドの治療を行なっていきます。
現在ではペインビジョンという痛みの測定装置があり、効果を客観的に評価しながら治療を進めることができます。
何より大切なのは、痛みの背景にあるマイナスの感情(怒りや恐怖など)は横に置き、疾患を受け入れて、患者さん自身が前向きに治療に取り組むことです。
自分で行う対策
- ●治療に前向きな考えを持つ。
- ●薬物療法と並行して「動く」ことを心がける。
- ●ストレッチや腹式呼吸でリラックスする。
病院で行う治療法
- ●薬物療法、認知行動療法、
- ●リハビリテーション、
- ●トリガーポイント注射、温熱療法
イラスト/macco 取材・原文/山村浩子