逆流性食道炎
私がお答えします!
おおたけ消化器内科クリニック院長
大竹真一郎さん Shinichiro Otake
総合内科専門医、消化器病専門医。便秘などの腹部症状を中心に患者の診療に当たるかたわら、メディアで医療情報を発信。著書に『つらい「逆流性食道炎」は自分で治せる!』(学研プラス)など
相談
最近よく胸焼けがするのですが、どんな病気が考えられますか? 対策としてどんなことに気をつけるべきでしょうか?
答え
逆流性食道炎の可能性があります。一度、専門医に相談して、生活習慣の改善を図ることをおすすめします。
胃酸が食道に逆流して
体の不調を引き起こします。
胸焼けがする、喉に苦酸っぱいものがこみ上げてくる。そんなつらい症状があるなら、逆流性食道炎かもしれません。これは胃の中の胃液が食道に逆流する病気です。
口から食べたり飲んだりしたものは食道を経由して胃に運ばれます。通常は食道と胃の境目にある噴門という部分の括約筋により逆流しないようになっているのですが、なんらかの理由でこの機能が衰えると、胃液が食道に逆流することがあります。
胃液には、食べ物を消化したり細菌を殺す消化酵素や胃酸が含まれていて、その力は食べた肉を溶かすほど。胃自体は粘液で守られているので溶けることはありませんが、この酸性の強い胃液が逆流すると、食道に炎症を起こしてしまいます。
その結果、胸焼けやみぞおちの痛み、ものが飲み込みにくかったり何か詰まったような違和感、声のかすれなどの症状が生じます。胃液が気管に入ると慢性的な咳の症状が現れることも。
また、食道炎が進むと、潰瘍や食道狭窄(きょうさく)、食道腺がん、誤嚥(ごえん)性肺炎になることもあるので、放っておいていいことはありません。
おもな原因は加齢と生活習慣です。欧米に比べて日本では少ない病気でしたが、近年は国内でも増加傾向にあります。
理由は、食事の欧米化や高齢者の増加。また、ピロリ菌の駆除が進んで感染率が低下したために、胃酸の分泌が増えたことも一因と考えられています。
気になる症状がある場合は、消化器内科を受診して、胃カメラ検査などで、食道の粘膜の状態をしっかり確認してください。
胃酸分泌抑制剤や消化管運動賦活剤などの薬物療法を行うと、症状は比較的すぐに解消します。しかし、長期使用は骨を弱くするなどの副作用もあるため、薬物は一時的な使用に抑え、何より「生活習慣の改善」が重要であると心得てください。
喫煙者はまずは禁煙を。動物性脂肪の多い食事、甘いものや激辛の食品、アルコールやカフェインの摂取を控え、バランスのとれた食事を3食規則正しくとりましょう。肥満の人は減量を。便秘だと腹部への圧力が高まり症状を悪化させるので、便秘の解消も必要です。
また、食後2時間は横にならないこと。腹部を締めつける衣服や、重いものを持ち上げたり前かがみの姿勢など、腹部を圧迫する行動は避けること。痩せて筋力の弱い高齢女性にも多く発症するので、ウォーキングなどの適度な運動で、筋力を維持することも心がけましょう。
自分で行う対策
- ●動物性脂肪、甘いもの、刺激物、アルコール飲料をとりすぎない。
- ●禁煙。
- ●便秘の解消。
- ●腹部が圧迫される衣類や姿勢を避ける。
病院で行う治療法
- ●生活指導、薬物療法(胃酸分泌抑制剤、消化管運動賦活剤など)、重度の場合は手術療法も
イラスト/macco 取材・原文/山村浩子