気象病
私がお答えします!
せたがや内科・神経内科クリニック 院長
久手堅 司さん Tsukasa Kudeken
総合内科専門医、神経内科専門医。東邦大学医療センター大森病院などで臨床経験を経て現職。特に「気象病・天気病外来」「寒暖差疲労外来」を設け、天候と不調の関係にフォーカスした治療にも尽力
相談
雨が降る前になると頭痛やめまいがします。天気と関係があるのでしょうか? 改善する方法はありますか?
答え
天気に影響を受けて、あちこちに不調が起こる人は少なくありません。上手につき合っていく方法はあります。
気圧、温度、湿度などの気象変化でさまざまな不調が現れます。
雨が降る前になると、頭痛がしたり、体がだるくなることはありませんか? 気象の変化に伴って起こる不調のことを、昨今、「気象病」や「天気病」などと呼んでいます。
正式な病名ではないため、医療従事者の間でも、まだあまりなじみがないことも。しかしながら、実際にはそうした症状に悩まされている人がとても多く、私のクリニックの「気象病外来」では、1カ月の新規患者数は50~70名ほど。北海道や沖縄など全国から来ます(今はリモート受診が可能)。
その症状は頭痛を筆頭に、全身倦怠感、めまい、耳鳴り、吐き気、肩や首のこり、血圧の上昇・下降、手足のしびれ、関節痛、動悸、不安感、咳など、実に多岐にわたります。なかには古傷が痛む…という人も。
こうした不調がいちばん起こりやすいのが、気象の中でも「気圧が変化するとき」です。気圧が急激に上昇したり下降したりすると、その情報は耳の奥の「内耳」で感知され、脳から自律神経へと伝わり、体を順応させようとします。これが不調の原因です。
飛行機や高層ビルのエレベーターに乗ったとき、耳がキーンとなりますが、この状況と同じようなことが起こるわけです。
ほかにも気温の寒暖差や湿度(特に多湿)で起こる人も。気温差の大きい春先、低気圧が続く梅雨の時季、夏から秋の台風シーズンは要注意!
同じ状況下でも、体調不良が起こる人と起こらない人の差は、内耳の敏感さだと考えられています。特にデスクワークが多く運動不足の人、更年期の女性に多い傾向があります。
病院では問診をはじめ、症状に応じた検査をして、ほかの病気の可能性を除外していきます。この病気のつらいところは、検査で異常が見つからないので、体調が悪くても、「さぼっているだけ」などと、人に理解してもらえないことです。
治療は、まず自分がどんなタイミングで不調が起こるかを記録して、気象との関係を観察します。そのうえで、天気予報などを参考に早めに対処していきます。
例えば、事前に耳をつまんで上下や横に引っ張ったり、回すといった耳マッサージで耳の血流をよくしておくのも手助けに。症状が強い人には、対症療法として鎮痛薬や抗めまい薬を。日常的な対応策には、自律神経を整える漢方薬なども有効です。
また、私は骨格の歪みやずれが関係していると考えているので、姿勢を整えるストレッチなどを指導することもあります。
自分で行う対策
- ●不調と気象との関係性を観察し、早めに対応する。
- ●耳マッサージや姿勢の改善など。
病院で行う治療法
- ●鎮痛薬、抗めまい薬、筋弛緩薬、漢方薬などの投薬治療。
- ●ストレッチや運動指導。
イラスト/macco 取材・原文/山村浩子