新型コロナウイルスの流行で関心を集める「免疫力」。
そもそも免疫力を高めるためには、体内のミトコンドリアが元気でいることが重要、と語るハーバード大学&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行さん。ミトコンドリアの働きってどんなこと? 免疫システムをわかりやすいイラストで解説します。
免疫システムはミトコンドリアが支えている!
私たちの体は約60兆個にも及ぶ細胞で構成されています。その細胞のひとつひとつに、数百から数千ものミトコンドリアが存在し、酸素と栄養素を原料に細胞呼吸によって、生命活動の源となるATP(アデノシン三リン酸)を作り出しています。
ATPは細胞のニーズに合わせて、どんなエネルギーにも変換可能なので「エネルギー通貨」とも呼ばれます。免疫システムを担う、キラーT細胞、マクロファージ、NK細胞、B細胞、樹状細胞といった免疫細胞たちも、ミトコンドリアが作り出すATPをエネルギーに換えて、体内に侵入してきたウイルスなどの病原体と戦っています。
ATPは通常1分以内に消費されるため備蓄できません。そのためミトコンドリアは、不眠不休で細胞呼吸を行い、1日で成人男性の体重くらいのATPを生み出します。
ミトコンドリア
ウイルスなどの病原体と戦うためのエネルギーになる「ATP」を作り出す
キラーT細胞
ウイルスに感染した細胞を破壊
マクロファージ
体に入ってきた病原体を食べる
NK(ナチュラルキラー)細胞
細胞中のウイルスやがんを見つけると細胞ごと破壊
樹状細胞
体に侵入した病原体の情報をT細胞に伝える
B細胞
病原体に対する抗体を作り病原体を攻撃
専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、睡眠医学など。『ハーバード&ソルボンヌ大学 Dr.根来の特別授業 病まないための細胞呼吸レッスン』『ハーバード&パリ大学 根来教授の特別授業 「毛細血管」は増やすが勝ち!』(ともに集英社)など著書多数
撮影/角守裕二 イラスト/浅生ハルミン 構成・原文/石丸久美子