仙骨を刺激して脳脊髄液の循環を改善!
頭蓋骨の中は脳脊髄液で満たされていて、やわらかくて壊れやすい脳を保護しています。脳脊髄液は脳の中心にある脳室で作られ、脳表面と脊髄を循環しているわけですが、ノンレム睡眠時には脳内での流れが活性化して、脳の老廃物を一掃してくれます。
脳脊髄液の流れをよくするには眠りを改善することが第一。
今回は脳脊髄液の循環を促し、眠りの質も高める簡単な体操をふたつご紹介します。
頭から遠く離れた骨盤の中にある「仙骨」にアプローチする体操です。
脳脊髄液については、前回をご参照くださいね。
骨盤背面から見た仙骨
仙骨は背骨の下部にある逆三角形の骨で腰椎と尾骨の間にあって、くさびのようになっています。
仙骨と腸骨をつなぐ仙腸関節は、上半身と脚のつなぎ目であり、骨盤を安定させる役割を担います。
頭蓋骨の内側で脳を包んでいる硬膜は、背骨の中で脊髄を包んで、骨盤の中心にある仙骨、尾骨までつながっています。
この硬膜によって頭蓋から仙骨にかけての連動性が生み出されることは解剖学的にも明らかです。
欧米では医療として認められているオステオパシーという施術では「頭蓋仙骨療法」といって、頭蓋と仙骨の連動性を利用して、仙骨にアプローチすることで脳から脊髄を循環している脳脊髄液の流れをよくする手技があります。
かかと押し出し仙骨体操
セルフケアで仙骨にアプローチするなら、まずはかかとを押し出すだけの簡単な体操がおすすめです。
仙骨と腸骨をつなぐ仙腸関節をかすかに動かすことで、仙骨から頭蓋骨へと続く脊髄に働きかけ、脳脊髄液の巡りをよくします。
寝たまま行うことができるので、夜、寝る前や朝起きたときに習慣づけるとよいでしょう。
1 足を腰幅に開いてあお向けになり、腸骨のでっぱった骨に両手を置き、両足のかかとを立てます。
2 1の状態から、かかとを床につけたまま左右交互に腸骨のとがった骨から押し出すように動かします。ひざを浮かさず、手のひらで骨盤の動きを感じながら行って。勢いをつけないで1〜2cmほど動かす程度でOK。最後の数回はさらに動きを小さくしてミリ単位でかすかに動かす感じで終えて、しばらくそのまま脱力。左右1セットで10回繰り返します。
4・4・8呼吸仙骨体操
脳脊髄液の循環には自律神経が大きく影響しています。
眠りに問題がある人のほとんどは交感神経が働きすぎているので、適宜、副交感神経を優位にして体と心をリラックスさせる必要があります。
自律神経に直接アプローチできる唯一のセルフケアは呼吸法です。
「緊張をほぐす4・4・8呼吸法」は、私が開発した自律神経を測定する最新デバイスで効果を検証し、その有効性は実証済み。
私がヘルスケアを担当しているトップアスリートたちには、試合前に実践してもらっています。
4・4・8呼吸法だけでもリラックス効果は高いのですが、これに肩甲骨と骨盤を開閉させる動きを組み合わせるとさらに効果的です。
4秒吸って、4秒息を止めて、8秒かけて息を吐く。この呼吸に合わせて手足を内旋、外旋させることで、呼吸筋である横隔膜が大きく上下に動き、横隔膜にある自律神経のセンサーが敏感に反応。副交感神経がスムーズに上がり、脳脊髄液の流れが促進します。
また、足の開閉によって仙腸関節が刺激され、仙骨から頭蓋骨へと脳脊髄液の流れを促してくれます。
かかと押し出し仙骨体操とセットで行えば、いい感じにリラックスして、終わったときには全身が床に沈み込むような重さを感じるはず。じんわりと緊張がほどけて、就寝前に行うと、自然と入眠しやすくなり、睡眠も深まります。
脳脊髄液の脳の洗浄効果が高まり、頭の働きもよくなり、認知症予防にもつながるので、ぜひ毎晩の習慣に!
1 あお向けに寝て体の力を抜き、4秒かけて鼻から息を吸いながら、手足をゆっくりと外側に回していきます。肩甲骨と骨盤から開いていくように動かすこと。
2 手足を外側に向けたままの状態で4秒息を止めます。
3 8秒かけて鼻からゆっくり息を吐きながら、手足をゆっくりと内側に回していきます。肩甲骨と骨盤から閉じていくように動かすこと。1〜3を4〜5セット。
終わったら脱力して自分の体の重さを味わって。
『ハーバード&ソルボンヌ大学 Dr.根来の特別授業 病まないための細胞呼吸レッスン』『ハーバード&パリ大学 根来教授の特別授業「毛細血管」は増やすが勝ち!』(ともに集英社)など著書多数
撮影/角守裕二 イラスト/浅生ハルミン 構成・原文/石丸久美子