ひと言で「筋膜リリース」と言っても、その実さまざまな種類があります。医療機関での治療や専門家の徒手療法、エステサロンの施術、ストレッチの別名etc.…。筋肉の張りやこわばりを解消し、血流がよくなるので体がすっきり軽くなるのですが、それだけではありません! 多くの痛みは筋膜の萎縮や癒着が原因であるため、正しく理解して行えば、たとえセルフケアでも、OurAge世代が悩む肩こりや関節の痛み緩和にも有効です。取り入れている方々にも実践法を伺い、効果的な使い方を解説します!
お話を伺ったのは
星加昭太さん
Shota Hoshika
1977年生まれ。整形外科医、医学博士。船橋整形外科病院スポーツ医学・関節センター勤務。専門は肩関節、ひじ関節。ラグビーNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安、サッカーSC相模原のチームドクターとしてアスリート支援も
●もうみんなやっている!?
筋膜リリース関連の本が多数出版され、SNSや動画配信サイトでもこのワードをよく見かけるようになりました。でも、実際には普通のマッサージや指圧を筋膜リリースと呼んでいる場合も! 筋膜リリースについてより理解を深めましょう。
●なぜここまで注目されている?
それはズバリ、自分一人でやっても体が劇的に軽くなったり痛みがやわらいだり、心まで気持ちよくリフレッシュできるから。ストレッチよりも即効性があり、マッサージより効果が長もち。その手軽さに感動してしまう人が続出しているのです!
●筋膜ってそもそも何?
筋膜は文字通りにいえば筋肉を包む膜組織のこと。日本では組織を包む膜のすべてを「筋膜」と呼ぶ場合もあります。筋膜に関しての研究の歴史はまだ浅く、わかっていないことが多いのも事実。ここではOurAge流の筋膜リリースを展開します。
●どんな効果が期待できる?
こわばりや痛みを軽くしたり、むくみを改善したり、ぽっこりお腹をへこませたり、姿勢をよくしたり…。その効果は本当にさまざま。今回は特に「痛みの軽減」にフォーカスした筋膜リリースについて指南します。
どこかに一時的な痛みが起きた場合、原因は筋膜にあるという説が有力です。少し難しいけれど、そのメカニズムを知っておきましょう。
痛みを感じているのは筋肉ではなく筋膜だった!
「筋肉を包む膜、筋膜は欧米でmyofascia(マイオ<=筋肉>ファシア<=膜>)と呼ばれます。ファシアは膜という意味で、筋膜を含め体の組織を包んでいる膜のすべてを指すのです」と解説するのは、整形外科医の星加昭太先生。
体は筋肉だけでなく、骨・神経・血管・脳・内臓などの組織も薄い膜で覆われていて、すべてが網目状につながっています。
●筋膜はどこにある?
筋膜は筋肉を包んでいる薄い膜のこと。筋肉は線維の束になっていますが、その線維の1本1本まで膜で覆われています。皮膚のすぐ下の脂肪層にも筋膜はあり、特に「浅筋膜」と呼ばれて全身をボディスーツのように包み込んでいます。血管や神経などほかの組織にも膜があるため、人が手で触れる範囲だけでも膜が重なり合っているのです
では、痛みの軽減に「筋膜リリース」が注目されてきたのはなぜ?
「そもそも、痛みを感じるのは筋肉ではなく、筋膜のほうだとわかってきたためです。例えば膝が痛いといっても、筋肉や骨には痛みを感じるセンサーはほぼなく、感じているのは筋膜や骨膜のほう。膜の萎縮や癒着が起こることで、痛みを感知してしまうのです。それを注射などでリリース、つまり引き剝がすことで痛みが軽減されます。
また、医療でリリースが普及したのは、エコー(超音波)の進化により、深部の組織まで画像を見ながら治療を行えるようになったため。医療現場では、筋膜リリースとはいえ、隣り合う脂肪の膜や神経の膜などもリリースの対象になるので、必ずしも筋膜だけのリリースでないこともあります」
体の組織はすべて「膜」に包まれ、つながっている!
本来、ファシアとは筋肉、骨、内臓、血管、神経など体のあらゆる組織を包み込んでいる膜状のものすべてを指します。筋膜もファシアのひとつ。ファシアは体中でつながり合い、連動しているといわれています。国際的にも膜に関する研究はまだ発展途上。明らかにされていないことも多く、専門家であってもそれぞれ認識が違うようです
イラスト/内藤しなこ 構成・原文/蓮見則子