前編では、筋膜は体中の組織を包む膜で、痛みの原因は筋肉ではなく筋膜にあるという説が有力であることを学びました。後編では、あなたの筋膜の健康度チェックや、痛みが出る仕組みを学びます。
あなたの筋膜は健康? それとも?
5つ以上当てはまる人は、筋膜の滑りが悪くなっている可能性大!
- □ 座っている時間が長い
- □ 立ち仕事をしている
- □ 姿勢が悪いと思う
- □ 家でゴロゴロしていることが多い
- □ パソコンやスマホを使っている時間が長い
- □ 肩・首・腰などよく痛い場所がある
- □ 関節が痛くなることがよくある
- □ 体を動かすのが苦手、または運動不足
- □ 簡単な体操やストレッチなどをほぼしない
- □ 冷えやすい、または冷え症
- □ 大きなケガや手術をしたことがある
- □ よく眠れない
- □ ストレスを感じやすい
当てはまる項目が多い人は、すでにどこかに痛みがあるかもしれません。また、幼少期を含む過去のケガなども筋膜トラブルの要因に
筋膜と痛みが出る仕組み
筋膜は水分が不足して滑走性を失い、癒着によって痛みが出るということ。そもそも水分が不足してしまう原因が一番の問題。本当に取り除くべきなのは根本原因です!
●滑りのよい筋膜
●滑りが悪くなった筋膜
●筋膜が癒着する原因とは?
- ・長時間の同じ姿勢
- ・猫背などの悪い姿勢
- ・偏った動きの繰り返し
- ・筋肉の使いすぎ
- ・筋肉の使わなさすぎ(運動不足)
- ・冷え・血流の悪さ
- ・さまざまな外傷
- ・ケガ・手術などによる固定
- ・精神的ストレス etc.
医療での筋膜リリースはエコーを用いた注射が一般的
筋膜は水分不足によって、滑りが悪くなったり癒着するというのが最近の整形外科的な考え方。その原因は、外傷をはじめ、筋肉の使いすぎや使わなさすぎ、体の使い方の癖、血流の悪さなど、多種多様です。
「治療としてポピュラーなのがハイドロリリース注射。痛みのある場所をエコーで見ながら生理食塩水を注入して癒着を剝がす。剝がすというよりも小さな空間を作るイメージです。でもこれは対症療法で、根本解決は原因を取り除くこと。そのため、私の施設では、注射のあとに理学療法士やトレーナーが再発しない体の使い方を指導します。自宅でのケア法も教えていて、ツールを使った筋膜リリースは予防の王道ですね」
≪筋膜リリースの方法≫
筋膜リリース(ファシアリリース含む)にはさまざまな方法があり、医療とそれ以外では理解が大きく違うのが現状
●医療機関
- ■物理療法(近赤外線治療、超音波治療器など)
- ■注射
- ■手術
- ■鍼灸
- ■理学療法(徒手療法など)
●医療以外
- ■徒手による施術
- ■専用の道具を使った施術
- ■ストレッチ
- ■電動アイテムの使用
- ■フォームローラーやボールによるアプローチ
●医療機関の「ハイドロリリース注射」
エコー(超音波)画像を見ながら生理食塩水を注入し、筋膜や神経がくっついている部分を剝がす方法はかなり一般的。神経の癒着が重い場合などは「神経リリース」とも呼ばれます
お話を伺ったのは
星加昭太さん
Shota Hoshika
1977年生まれ。整形外科医、医学博士。船橋整形外科病院スポーツ医学・関節センター勤務。専門は肩関節、ひじ関節。ラグビーNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安、サッカーSC相模原のチームドクターとしてアスリート支援も
イラスト/内藤しなこ 構成・原文/蓮見則子