医療ジャーナリスト 増田美加さんの 更年期女性の医療知識 アップデート講座
「女性のがん検診」
あなたの知らない真実
更年期は、がんリスクに備えたい世代です。でも、がん検診は受ければいいってものではないことを知っていますか? 正しい検診を選んで受けないと不利益につながることも。がん検診の「真実」を、医療ジャーナリスト増田美加さんがわかりやすくお伝えします。
乳がん検診は、40歳より30歳から始めたほうがメリットが大きい
× 乳がん検診は40歳未満から受けると利益より不利益が大きくなります!
「若い女性が乳がんにかかる話をよく聞くので、私も受けたほうがいいのでは?」と 20 〜 30 代の女性から不安の声が上がっています。しかし、必要とされる乳がん検診は“更年期世代の40歳から2年に1回のマンモグラフィ検査”。これがエビデンス(科学的根拠)のあるがん検診です。がん検診は何歳から何年に1回の頻度でどの検査を受けたらいいか、科学的根拠のもとに定められています。これらの年齢と受診間隔は、検診による利益(がんによる死亡率の減少)と、逆に検診による不利益が最も小さくなるよう内容が考慮されています。乳がん検診の場合、若い年齢や短い受診間隔で受けると、不利益が大きくなります。検診の不利益とは、命に影響しないがんの発見や、検診による偶発症の発生などさまざまあります(今回の連載第3回で詳しく説明)。
乳がん検診では、マンモと超音波を組み合わせると死亡率が下がる
× マンモと超音波を組み合わせても乳がんによる死亡は減らせません。
乳がんによる死亡を減らせることが科学的に認められ、乳がん検診として推奨できる方法は、「マンモグラフィ単独」です。「超音波とマンモの併用」や「超音波単独」、あるいは「視触診単独」は、死亡率減少効果を判断する証拠が不十分なのです。そのため、これらの検査は、国ががん検診で行うことはすすめられないとしています。自治体検診(対策型検診)としての実施もすすめていません。人間ドックなど(任意型検診)で行う場合には、医療者が、死亡率減少効果が不明であること、不利益が上回ることについて適切な説明を行うべき、とされています。乳がん検診が推奨されるのは40歳以上の“症状のない”女性です。しこりや乳頭分泌などの症状がある人は、検診を待つのではなく、乳腺外科を受診して診察してもらうことが大切です。
イラスト/堀川理万子