新型コロナウイルスが流行しはじめた頃、さまざまな情報に翻弄された私たち。賢い患者になるために必要な賢い医師の選び方を増田美加さんと、市川衛さんのお二人に対談形式で解説する最終回になります。
増田美加さん
Mika Masuda
1962年生まれ。女性医療ジャーナリスト。35年にわたり女性医療、ヘルスケアを取材。乳がん罹患後はがん啓発活動を積極的に行う。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』(講談社)ほか。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員
市川 衛さん
Mamoru Ichikawa
1977年生まれ。医療の“翻訳家”。NHKチーフ・ディレクター。メディカルジャーナリズム勉強会代表。東京大学医学部卒業後、NHKに入局し「ためしてガッテン」「NHKスペシャル」などを担当。近著に『教養としての健康情報』(講談社)
賢い医師の選び方とは? 賢い患者になるために
増田 情報の見極め方もそうですが、同時に、医師、医療機関をどう選んだらいいのかを尋ねられることがよくあります。市川さんはどのような視点で選択しますか?
市川 例えば、がんを治療する医療機関を選ぶときには、そのがんの治療別の症例数、重症者の治療数などを病院のサイトで調べてみます。
増田 自分が通える範囲の複数の医療機関を比べてみると、症例数が多いかどうかの見当がつきますね。
市川 はい。ただし医師選びは、自分との相性も大事ですから、セカンドオピニオンなども活用しつつ、複数の医師と会って意見を聞くことも必要だと思います。特にがんの場合は一刻を争って治療法を決めなくてもよい場合もありますので。
増田 医師とうまくコミュニケーションがとれることは、後悔しない治療を受けるためにも大切ですね。私は、医師と大事な面談をするときには、事前に質問を5つ以内に絞って書き出しておいて、そのメモを医師に見せながら質問することをおすすめしています。事前に自分の悩みや不安、疑問を整理して臨むといい結果が得られることが多いと思うから。
市川 賛成です。医師と、自分の病気の「作戦会議できる仲」になれるといいですね。それには、治療でかなえたい自分の希望を明確にすることが大切だと思います。「子どもの卒業式に出たい」「好きな水泳ができるまでに回復したい」など、身近で具体的な希望を。
増田 ヘルスリテラシーは、正しい健康情報を選ぶだけでなく、自分の健康を維持・向上する力です。ヘルスリテラシーを高めるために、心がけるべきことはなんでしょうか?
市川 「自分が人生で大切にしたいこと」を普段から考えることで、どこまで、どんな治療やケアをするかを冷静に判断できるのではと思います。そういうトレーニングを自分なりに積んでいくことが、ヘルスリテラシーを高めることにつながるのではないでしょうか。
撮影/山田英博 イラスト/内藤しなこ 取材・原文/増田美加