すでに実用化も! 幹細胞による病気治療
実際の治療の流れを知りたい!
大きな流れは、自分の脂肪由来の幹細胞を培養し、それを体に戻すというもの。「採取には、腹部をほんの数㎜切開して、少量の脂肪を吸引します。
その摂取した脂肪から幹細胞を取り出し、専門施設で培養します。それを点滴で再び体に戻します。症状によりますが、通常、この点滴投入を2~3カ月に1度、3回ほど行うと効果が高まります」
1. カウンセリング
症状や悩み、既往症や服用している薬などを確認。治療の流れや効果、副作用の可能性などについての説明がされます
2. 採血
血液検査により、体の健康状態、ウイルスや細菌に感染していないかなどを確認します
3. 細胞採取
腹部を数㎜切開して、少量の脂肪細胞を採取。局所麻酔をするので、ほとんど痛みはなく、日帰りでできます
4. 細胞培養
専門施設で、採取した脂肪細胞から幹細胞を取り出し、培養します。培養の出来映えが治療効果に影響します
5. 点滴で投与
4~5週間培養した幹細胞を、点滴で1時間30分~2時間ほどかけてゆっくり体に戻します
6. 予後検診
症状により、点滴注入を2~3カ月に1度、複数回行います。最後の注入から1~16週後に予後検診を行います
幹細胞が体の中でどうなるの?
「血液に注入された幹細胞は、血管やリンパ管の中を移動して体内を循環します。そして、損傷がある部位に駆けつけ、細胞を修復・再生します。これを幹細胞のホーミング効果と呼んでいます」。
特に老化や損傷が顕著なところを先に修復してくれるシステム。睡眠の質のアップや眼精疲労の軽減など、健康の底上げにも効果があるそうです。
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血管内に入った幹細胞は血流に乗って、約3カ月かけて全身の血管内を巡ります
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損傷した細胞から出る信号をキャッチし、血管内の幹細胞が患部に集まっていきます
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場所を特定したら、血管壁をこじあけて、患部へ向かっていき、細胞の組織に入り込みます
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幹細胞は患部の細胞の中にサイトカイン(活性タンパク質)を放出して、細胞の修復・再生を行います
幹細胞培養上清液(じょうせいえき)を使う場合も!
「幹細胞培養上清液とは幹細胞を培養した際にできる、高純度の上澄み液のこと。この液には、培養中に幹細胞が放出したサイトカインという、さまざまな活性タンパク質が豊富に含まれています。これも幹細胞治療のひとつとして活用されています」。
例えば、老化肌の若返り、疲労回復、免疫強化、発毛治療などに、点滴や局所への注射などで注入します。
●培養上清液の品質のバラつきがある現実
最近では、培養上清液の治療を行うクリニックが増えています。しかしながら、その品質は培養施設の実力にも左右され、バラつきがあるのが現状です。海外からの輸入品の中には、肝心の成長因子がほとんど含まれていないものも。安価で提供している場合は注意が必要。信用できる医療機関を選ぶ必要がありそうです。
最近の研究テーマは老化の危険因子と糖化ストレス。著書多数
イラスト/内藤しなこ 構成・原文/山村浩子