どんな症状に治療効果があるの?
幹細胞治療は、現在、美容医療と組み合わせた再生美容をはじめ、治療が難しいといわれているさまざまな病気の治療に応用されています。しかしながら、1回の治療に数十万~数百万円かかるのが実情で、誰もが気軽に受けられるわけではありません。
それでも、自分の組織を修復して回復させるので、病気治療が根本的に変わるものであることに間違いありません。今後、研究が進み、身近な治療になっていくことに期待したいですね。
症状1
老化肌
●自己の線維芽細胞の利用でコラーゲン増加+効果が持続
肌の真皮幹細胞から分化して生まれる線維芽細胞を採取し、培養したものを気になる部位に注入します。効果はヒアルロン酸注入では数カ月ですが、この場合は自分の細胞が活性化するので、2~3年持続します。幹細胞培養上清液を使用する方法もあります。
症状2
アトピー性皮膚炎
●抗炎症、組織修復、免疫抑制の効果に期待
脂肪由来の間葉系幹細胞を採取・培養し、点滴で投与します。私たちの体にもともと備わっている免疫が、過剰反応して起こるアトピー性皮膚炎のような自己免疫疾患では、幹細胞が持つ抗炎症、組織修復作用、過剰な免疫を抑制する作用の効果が期待されています。
症状3
更年期症状
●細胞そのものの若返りが可能⁉
女性の閉経前後に女性ホルモンが減少することで、体にさまざまな不調が現れる更年期症状。一般的な治療ではホルモン補充療法(HRT)や漢方薬などがありますが、幹細胞治療では細胞そのものの若返りを図ります。実際に高い効果が報告されているそうです。
症状4
糖尿病
●インスリンを出す膵(すい)臓に駆けつけて修復
糖質の過剰摂取などで、インスリンの分泌や効きが低下するのが糖尿病です。一般的な治療では、食事や生活習慣の改善に加え、投薬治療、インスリン注射などが行われます。幹細胞治療の場合は、疲弊した膵臓の細胞に駆けつけて活性化します。
症状5
慢性疼痛(とうつう)
●炎症を抑え、傷ついた細胞を癒す
関節リウマチ、帯状疱疹(ほうしん)、外傷、心理的なものなど、慢性的な疼痛に悩んでいる人は日本で約1割いるといわれています。通常は投薬や神経ブロック、レーザー治療などが行われますが、幹細胞が持つ抗炎症、創傷治癒作用で痛みの軽減が期待されています。
症状6
変形性膝関節症
●すり減った軟骨を修復・再生!
膝の関節にある関節液の粘度の低下や、軟骨がすり減って、痛みや歩行障害が起こる病気です。通常は膝のクッション性を補うヒアルロン酸注射や、ひどくなると人工関節にする手術を行います。幹細胞治療ではこのすり減った軟骨を修復・再生することができます。
症状7
脊椎損傷
●麻痺(まひ)の症状が少しずつ回復
事故などにより、脊髄が損傷を受け、運動や感覚に障害が生じる脊椎損傷。通常のリハビリに加えて、幹細胞治療を行うことで、回復を助けることが期待されています。実際に現在進行形で治療が続けられており、大きな効果が報告されているそう。
症状8
認知症
●神経細胞を活性して治療・予防効果に期待!
2020年に京都府立医科大学の研究グループにより、アルツハイマー型認知症の患者さんに幹細胞治療の効果が見られたという報告がありました。使用するのは幹細胞培養上清液で、点滴や注射で投与します。今後の予防や治療効果に期待が集まっています。
最近の研究テーマは老化の危険因子と糖化ストレス。著書多数
構成・原文/山村浩子