コロナ禍の影響もあり、ここ数年、健康への健康への意識がますます高まっています。
巷にはさまざまな健康情報があふれていますが、そんな中でも、特に40代、50代の女性が知っておきたい、最新のワードをピックアップして解説します。
今回は、ベーシックな栄養素でありながら、最近、改めてその重要性が知られるようになった「ビタミンD」についてリサーチ。
その効能から摂取の仕方までをお伝えします。
ウイルスの感染や重症化を防ぐため、
ビタミンDのサプリメントをとる人が急増
ビタミンDというと、昔からよく知られているのは、カルシウムの吸収を促して、骨や歯の形成や成長を助ける働きです。
そのため、ビタミンDといえば、カルシウムとセットで語られることが多く、それほど注目されている栄養素ではなかったように思います。
そんなビタミンDが、新型コロナウイルスの蔓延をきっかけに、改めて注目を集めるようになりました。
ビタミンDには、免疫細胞を活性化する働きや、殺菌作用や抗ウイルス作用のあるタンパク質の産生を促すなどといった働きがあり、ウイルスや細菌から体を守る助けになってくれます。
実際、ビタミンDとインフルエンザの感染に関する調査では、ビタミンDを摂取している人ほど、インフルエンザの発症率が低いという報告があります。
さらに、血中のビタミンD濃度が高い人ほど新型コロナウイルスに感染しにくく、重症化も防げるという論文も発表されています。
このことから、ビタミンDがにわかに注目されるようになったのです。
そんなビタミンDは、日光を浴びると皮膚で合成されて体内に供給されることで知られています。
しかしながら、コロナ禍の時期に自粛生活が多かったことにより、外に出て日光を浴びる機会が激減したことで、ビタミンDが今まで以上に不足している人が増えたことも、この栄養素に注目が集まったもうひとつの理由です。
こういった背景から、ここ2~3年は、健康意識が高い人の間では、サプリメントでビタミンDを補うという人が増えてきています。
ビタミンDは、ビタミンというより「ホルモン」。
婦人科系のトラブルを防ぐ効果も
また、ビタミンDは、ビタミンと名づけられてはいるものの、日光を浴びることで体で合成されることや、その構造から、女性ホルモンや男性ホルモンに似た構造のステロイドホルモンの一種であるということもわかってきました。
この特性によって婦人科系のトラブルの改善に役立ち、生理痛やPMSを緩和したり、妊娠しやすい体づくりを助ける働きもあります。
ビタミンDが不足していると、妊娠率が下がったり、流産率が上がるという報告もあります。
そのほか、ビタミンDには以下のような効果があるという報告もあります。
●筋力の強化
●神経伝達を正常に行う
●糖尿病のリスクを下げる
●がんを防ぐ
●うつを防ぐ
●肌細胞の分裂を助け、肌を健やかに保つ
ビタミンDを補給するなら適度な日光浴を。
食品では魚やきのこ類などに豊富
このように、さまざまな効果があるビタミンD。
ではどのように補うとよいかというと、まずひとつは、前述したように「日光浴」です。
ビタミンDは、皮膚に直射日光が当たると合成されます。
屋内で窓越しに日光に当たってもビタミンDは合成されないので、直射日光を浴びる必要がありますが、最近は肌にシミができるのを気にして、日焼け止めなどで紫外線から肌を守るのが一般的に。
日焼け止めは、美容(スキンケア、美肌キープ)、皮膚がんなどの病気の予防のためにはいいのですが、ビタミンDは不足してしまいます。
環境省のレポートでは、個人差や環境の違いなどによって「十分なビタミンD合成に必要な日光照射量の目安を示すことは困難」としながら、ひとつの説として、「一部の専門家団体やビタミンDの研究者らは、例えば、特に午前10時から午後4時までの間に、毎日または少なくとも週2回、日焼け止めなしで顔、腕、手、足に約5分〜30分の日光浴を行うと、通常は十分なビタミンDの合成につながることを示唆している」と記載しています。
顔など日焼けしたくない部分には日焼け止めを塗って、手足などの紫外線を浴びてもそれほど気にならない部分は、1日5分~30分を目安に、日光を当てるようにするのがいいかもしれません。
ただし、猛暑の日や直射日光が強すぎる時期は、熱中症のリスクがあったり、肌へのダメージも強くなってしまうので、日差しがやわらぐ時間帯を選ぶなど、無理をしない程度に日光浴するのがいいでしょう。
また、食品から取り入れることもできます。
鮭、マグロ、サバなどの脂肪が多い魚は、ビタミンDの最良の供給源です。
シシャモもやしらす干しなど内臓ごと食べられる魚類のほか、きくらげや干ししいたけなどのきのこ類、牛レバー、チーズ、卵黄などにも含まれています。
厚生労働省のデータによると、ビタミンDの1日当たりの摂取推奨量は、成人で600IU。
例えば、うなぎの蒲焼き 1/2尾(80g)分で、ビタミンD約608IUをとることができます。
ビタミンDは油に溶ける脂溶性のビタミンなので、油と一緒にとると、体への吸収がよくなるのでおすすめです。
サプリメントもうまく活用して、欠乏を防いで
日光を浴びる時間が少ない人や、食事が偏りがちな人は、推奨量を満たしにくいので、サプリメントを利用するのもおすすめ。
サプリメントに使われるビタミンDには、植物由来のビタミンD2と、動物由来のビタミンD3がありますが、いずれも血中のビタミンDを増加させるとされています。
日本人はビタミンDの摂取量が必要量に達していないというデータもあります。
女性は閉経後に骨粗しょう症のリスクが高まりますが、ビタミンDが欠乏すると、さらにそのリスクを高めてしまうので、それを防ぐためにも補う必要があります。
──40代、50代の更年期の女性は、健康維持の基本となるさまざまな部分が急速に衰えたり、それらを守る力が衰えたりします。
ビタミンDはそれらの不調から守ることをサポートしてくれる栄養素。
日々、できるだけ意識してとりたいですね。
■参考文献
論文、研究資料、関連機関のWEBサイトなど
●「ビタミン D 栄養に関する最近の知見
~ビタミン D の骨代謝調節作用およびそれ以外の生理機能と必要量~」
神戸薬科大学衛生化学研究室
津川 尚子 氏
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oleoscience/14/12/14_531/_pdf
●「カルシウムとビタミンD摂取量と糖尿病との関連について」
国立研究開発法人 国立がん研究センター
がん対策研究所 予防関連プロジェクト
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/384.html
●「法政大学学術機関リポジトリ」より
「ビタミンDの健康効果」
宮川 路子 氏
http://doi.org/10.15002/00022388
●厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』より
「ビタミンDの推奨摂取量」「ビタミンDと健康」など
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/17.html
※「本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。」と注意書きあり。
●厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』より
「ビタミンDの推奨摂取量」など
https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/10.html
※「本項目の説明・解説は、米国の医療制度に準じて記載されているため、日本に当てはまらない内容が含まれている場合があることをご承知ください。」と注意書きあり。
●「グレープフルーツ果実エキスに皮膚のバリア機能改善作用を発見」
ファンケル ビューティサイエンス研究センター
桜井 哲人 氏
https://www.fancl.jp/laboratory/report/34/index.html
●「コロナ禍の新しい生活様式におけるビタミンDの充足度を調査」
ファンケル ヘルスサイエンス研究センター
https://www.fancl.jp/laboratory/report/62/index.html
●「国民のビタミンD不足を補うための日光照射の勧め
—新たに札幌・横浜・名古屋・大津・宮崎を含めた
国内10地点における準リアルタイム情報の提供開始—」
国立研究開発法人 国立環境研究所
地球環境研究センター
https://www.nies.go.jp/whatsnew/20170410/20170410.html
●「ビタミンDと新型コロナ感染率」
満尾クリニック
https://www.drmitsuo.com/2020/10/07/vitamindpcr2020/
●「ビタミン D が不⾜すると新型コロナウイルス感染症が重症になる」
菊池中央病院 中川 義久 氏
https://www.nobuokakai.ecnet.jp/nakagawa240.pdf
取材・文/和田美穂 写真/写真AC