効き目は処方薬のほうが上?
あなたは薬をどこで買っていますか? ドラッグストア? 調剤薬局?
「薬には大きく分けて市販薬と処方薬の2種類があります。その違いは、市販薬は自分の意思で買えます。別名OTC(Over The Counter)で、その意味は薬局のカウンター越しに薬剤師や登録販売者などと話をして買えるという意味です。
一方、処方薬は自分の意思では買えない、医師の処方が必要な薬です。
一般的には処方薬は市販薬より効き目が強い成分が使われていたり、同じ成分でも含有量が多いのが特徴です。確実に効果が出るように、医師の診断のもと、その人の症状に最適な薬と量、組み合わせが処方されます。
市販薬は効果も副作用も少なめですが、医療機関を受診しなくても、手軽に買うことができることが大きなメリット。一方で保険がきかないのがデメリットです。
効き目は処方薬のほうが強いと言いましたが、花粉症の薬のアレグラFXやアレジオン20などは市販薬も処方薬も同じ成分が同量配合されているので、同じ効き目ということになります」(鈴木素邦さん)
では、どちらが得なのでしょうか?
「価格面を比較すると、処方薬は保険がきくので1~3割負担ですが、ほかに医療機関に払う受診料や調剤料がかかります。一方で市販薬は全額負担ですが、薬代だけですみます。
この花粉症の薬の価格問題は、健康保険組合連合会(健保連)が2019年に発表した結果では、患者の負担額は両者大差がないようです。ただし、これに点眼薬や点鼻薬などが必要となると、受診料・調剤料は変わらないので処方薬のほうがお得になる可能性はあるかもしれません」
負担額に大差がないとなると、パッと行って買える市販薬に対して、医療機関を受診する時間と手間をどう考えるかが問題になりそう。今後、オンライン診療がもっと一般的になれば、その点も解決するのかもしれません。自分のそのときの症状や生活スタイルを考えて選択するのがいいでしょう。
薬に頼りすぎて体を壊しているケースも!
「薬にはその病気を治すものと、症状を緩和するもの、健康な状態を維持するもの、予防するものがあります」
- 病気の治療をするもの/痛みを抑える、炎症を抑える、感染症と戦う
- 症状を緩和するもの/痛み、吐き気、咳、発作など、病気の症状を緩和する
- 健康な状態を維持するもの/心臓病や脳卒中などを防ぐために、高血圧や脂質異常をコントロールする
- 予防するもの/インフルエンザなどの感染症を予防する
「患者さんの中には、医療機関に行くのは薬をもらうためという人がいます。確かに、抗がん剤や抗リウマチ薬、難病の治療薬など、病気を治すため、症状を悪化させないために飲む薬もあります。
一方で、高血圧などの生活習慣病の治療には、生活習慣の改善が欠かせません。薬により血圧やコレステロール値、血糖値などの数値を安定させておいて、その間に食事や運動などに取り組むことで、体を健康体へと導きます。
しかし、実際には薬を飲んでいることに安心して、生活改善を怠る人が多いようです。薬は万能ではありません。体を治すのは自分自身の治癒力です。薬はあくまでその補助であることを忘れてはいけません。
病気を治すのは薬ではないのです」
飲み薬は全身を巡って患部に届く
飲み薬の場合、頭痛薬も胃腸薬も飲むことで効果が表れます。それはどうしてでしょうか? 薬はどうやって患部に作用させることができるのでしょうか?
【飲み薬を口から摂取したあとの流れ】
1 まず胃の中で溶けて、錠剤から有効成分が放出されます。
2 その有効成分は小腸で吸収されます。
3 小腸で吸収された成分は血流に乗り、肝臓に集まります。肝臓では入ってきた薬の成分を代謝(分解・解毒)します。
4 代謝されていない薬、代謝を受けた薬も大静脈を通って心臓に送られ、血流に乗って全身を回ります。
5 有効成分は全身の細胞に送られ、患部にたどり着いたところで作用します。
6 血流に乗り、再度、肝臓に運ばれて代謝され、腎臓で処理されて尿として排泄されます。
「こうして飲み薬は小腸で吸収され、肝臓を通って、全身を巡って患部に届くので、効果が出るのに時間がかかります。一方で、注射や点滴はすぐに静脈に入って全身を巡るので、短時間で効果が表れます。
また、貼り薬や塗り薬も皮膚から吸収され、血流に乗って患部に届きます。胃腸や肝臓の負担が少なく、有効成分を安定的かつ持続的に効かせることができ、副作用が少ないのが特徴です。飲み込むことが難しいお年寄りなどにも、使いやすいメリットがあります」
こうしたことを知っていると、薬を購入するときの選択肢の参考になりますね。
【教えていただいた方】
イラスト/いいあい 取材・文/山村浩子