ほかの風邪症状のない咳は要注意!
鼻がぐしゅぐしゅする、喉が痛い、胃がシクシクする、軽く頭痛がするといった不調。病院へ行くほどではないかと、薬局に向かう人も多いのではないでしょうか?
そこで薬局の薬剤師や登録販売者などに相談しながら薬を選ぶ人、店頭のポップなどを見て自分で選ぶ人もいるでしょう。
「症状が軽い場合はそれですみますが、市販薬では治らないケース、なかには命にかかわったり、重症化する病気が隠れていることもあります。その見極めの目安を知っておくと安心です。
例えば、致死率が30%というくも膜下出血では、おもな症状は頭痛です。後頭部をバットで殴られたような強烈な痛みを経験する人が約半数、そこまでではないものの、いつもしない頭痛がしたというケースもあります。
これを市販薬で様子を見ていたら、命にかかわる事態となります。直ちに医療機関、場合によっては救急車を呼ぶべきでしょう。
風邪をひいたかな? と思ったときの市販薬では、すべての症状を網羅した総合感冒薬を選ぶ方法のほかに、咳などの症状に対応した薬を選ぶこともできます。なかでも注意が必要なのが咳(咳止め)と頭痛(解熱鎮痛剤)です」(鈴木素邦さん)
そこで、よく使われる3大市販薬について、知っておきたい危険な症状をまとめました。
【咳止め薬】
咳や痰(たん)、息苦しさを改善したい場合も市販薬を利用する人が多いと思います。
「特に痰の切れをよくする薬は安全に使えるものが多いので、あまり問題はありません。しかし、風邪症状によくみられる鼻水、鼻づまりなどのほかの症状がなくて、咳だけ、もしくは咳と発熱がある場合は注意が必要です。
頻度は少ないですが、肺炎や肺結核などの感染症、喘息(ぜんそく)の場合もあります。これらは通常の市販薬の咳止めでは病状を改善できませんし、放置すると命にかかわる病気です。さらに、喘息に使うと悪化させる咳止めもあるので、喘息の既往がある人は医療機関の受診は必須です。
下記の症状がある場合は、市販薬ですまそうと思わずに医療機関を受診することをおすすします」
注意が必要な咳
●寒気が続き、震えが止まらない
●鼻水、喉の痛みなどの症状がなく、咳と高熱が続く
●咳が3週間以上続き、だんだん悪化している
●痰を伴わない空咳
●呼吸時にゼーゼー、ヒューヒューと音が鳴る
●呼吸困難になることがある
●咳で胸が痛む、血痰が出る、体重減少がみられる
●咳が出始める前に海外にいた
今までにない頭痛は直ちに病院へ!
【解熱鎮痛剤】
発熱や痛みの症状を緩和する薬です。痛みでは頭痛、腰痛、背部痛、生理痛などによく使われます。
「痛みは体になんらかの危機を知らせるシグナルです。その感じ方は人により違いますが、放っておいていいものではありません。特にいつもと違う痛みを感じたときは、医療機関で原因を診断してもらう必要があります」
注意が必要な体の痛み
●電気が走ったような・やけるような痛み
●脚やお尻にしびれがある
●発熱と体重減少も見られる
●安静にしていても痛む
●痛みが2週間以上続いている
●痛くて冷や汗が出る
●痛む部位を押しても、痛みが強まらない
注意が必要な頭痛
●首に痛みや硬くなっている部位がある
●バットで殴られたような強烈な痛み
●痛み止めの薬を月に15日以上飲んでいる
●視野に異常がある
●片頭痛の症状が重い
●最近、頭をぶつけた
花粉症の薬は軽度なら市販薬でOK!
【アレルギー性鼻炎薬】
花粉症などのアレルギー性鼻炎薬も、市販薬のお世話になるケースが多い代表的なもの。
「処方薬の大部分の成分が、市販薬にも使われているため、軽度の花粉症であれば市販薬で十分対応できます。医療機関を受診している時間がない、毎年同じ薬で症状が落ち着いているので医師の診察を受ける必要がないといった人は、市販薬がおすすめです。ただし、下記の症状がある場合は医療機関へ!」
注意が必要なアレルギー症状
●喘息やじんましんなどの、ほかのアレルギーの病気が疑われる
●鼻づまりに頭痛を伴っている、または薬を飲んでも鼻づまりが治らない
●点鼻薬を頻繁に使っている
●年々、花粉症の症状がひどくなっている
●2歳未満の乳幼児のアレルギー症状
手軽に買える市販薬はとても便利。その半面、自己判断で重病を見逃してしまうこともあります。その判断力を持っておくことはとても大切ですね。
【教えていただいた方】
イラスト/いいあい 取材・文/山村浩子