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思いつきで行動してすぐに挫折するのは大人の発達障害「ADHD(注意欠如多動症)」の多動・衝動型かも!?

才気みなぎるアイデアやひらめきがあり、あれにもこれにも手を出すけれど、すぐに挫折して長続きしない…それは、大人の発達障害であるADHD(注意欠如多動症)の多動・衝動型かもしれません。そんな人の困り事について、医学博士で発達障害を専門とする司馬理英子先生に伺いました。

とても発想力が豊かで、行動力もあるのですが、ちょっとした問題や面倒くさいことにぶつかると、すぐに諦めて投げ出してしまう。結果、どれも中途半端で、時に人に迷惑をかけてしまうことも。こんな人はひょっとすると大人の発達障害かもしれません。

 

「大人の発達障害のひとつADHD(注意欠如多動症)には、大きく多動・衝動型不注意型、その混合型があります。特に、ピンときた思いつきで行動するが、うまくいかずに挫折したり、長続きしないというケースは多動・衝動型に多く見られます。

一見、アイデア豊富で行動力があるので問題なさそうですが、こんなタイプの人にも困り事があります。そんなケースを見てみましょう」(司馬理英子先生)

 

※大人の発達障害についての基礎知識は第1回参照。

 

ADHD多動・衝動型のT子さんの場合

発想力豊かで思いつきですぐに行動する

大人の発達障害 ADHD 多動・衝動型 イメージイラスト

T子さん(38歳)は広告系の会社勤務で夫と二人暮らし。発想力が豊かで人当たりのよいキャリアウーマンです。

 

アイデアが命の広告関係の仕事は、発想力豊かなT子さんには適職です。新しいプランが次々に浮かび、それをすぐに行動に移します。人当たりもよく、新しいクライアントを獲得する能力にも優れています。

 

しかし、思いついたことをよく検討したり吟味したりせず、上司や仲間に相談することなく先走ってしまうこともあり、その結果、失敗することもしばしば。

 

あれにもこれにも手を出し行動に移しますが、肝心な部分の詰めが甘くなりがち。ちょっとした問題にぶつかると、それを解決する地道な努力が苦手で、部下に丸投げしてしまうこともあります。

 

締め切りギリギリで行動して、周囲をハラハラさせる

また、行動がいつもギリギリでバタバタと慌てているので、周り人はハラハラ。ほかの人と連携する業務を先延ばしにしがちなので、効率よく仕事が進まないことも。

ミスや遅刻、締め切りを守らないことが多いので、仕事仲間やクライアントをたびたび待たせて怒らせてしまいます。

 

しかし、こうした仕事の遅れが周りの人を振り回していることに、本人は気づいていません。ギリギリだとしても、最終的な納期に間に合っているのだから大した問題ではないと思っているかもしれません。

 

そのためか部下からの信頼度が低く、上司もその問題点を知っており、どんなに成果を出しても、それに見合った評価が伴いません。

 

【ADHD多動・衝動型の特徴】 ★がT子さんに強く見られる特徴で、〇は不注意型と共通。

★思いつきですぐに行動する

★落ち着きがなく、じっとしているのが苦手

★行動がギリギリになる

★自分が面白いと思うことややりたいことを優先して、面倒なことは後回しにする

〇段取りよく物事を進められない

〇言うことがコロコロ変わる

〇待ち合わせの時間に毎回のように遅れる

〇せっかちで早とちりが多い

〇気が散りやすくて、忘れっぽい

〇整理整頓や単純作業が苦手

〇お金の管理が苦手で、衝動買いが多い

 

「アイデア豊富で、あれもこれもできると考えて、いくつもの仕事に手を出してしまうことがあります。そのベースにあるのは『面白そう』ということを優先してしまうから。どんな仕事でも、そこには地道な準備作業や粘り強い交渉などの仕事がありますが、ADHDの人はそれが苦手。面倒くさいことは避けようとしがちです。

 

そのため、せっかくの企画も途中で仕事を投げ出したり、ほかの人が業務を引き継いで後始末をするはめになることも。こうしたことを何度も繰り返していると、『いい加減な人』と見られて周りからの評価が下がってしまうのです。

 

面白くない仕事を後回しにしたり投げ出すのは、ADHDの脳の特性と関係しています。これは神経伝達物質がうまく働かないことで起こります。薬物療法で症状が改善することもありますが、まずは環境整備や心理教育から始めるのがいいでしょう」

 

 

【周りのサポート】

「ADHDの特徴として、本人はパッと思いついて行動に移すことがどうして悪いのか理解していないことも。業務の遅れや締め切りギリギリでバタバタすることで周りに迷惑をかけているという自覚がありません。

 

ADHD傾向のある部下がいる場合は、仕事の進行をしっかりチェックする必要があります。重要なメールはCCに入って共有したり、どこまで進んでいるのか、そのつど確認する習慣をつけるといいでしょう。

 

イライラしたり、何かあったあとで叱ったところで、怒り損になりかねません。失敗しないように、前もってサポートしていくといいと思います」

 

【当事者へのアドバイス】

「仕事はチームワークが肝心です。単独行動をせず、各要所で上司や仕事仲間と確認をとる習慣をつけましょう。『ほう・れん・そう=報告・連絡・相談』を徹底するように努力してください。

大人の発達障害 ADHD 多動・衝動型 対処法 イラスト

また、『ギリギリ・バタバタ行動』は自分が思っている以上に、周りに多大なストレスを与えることを自覚しましょう。今日やるべきこと、今週やることを書き出して、優先順位をつけて取り組む習慣をつけてください。常にスケジュールは余裕を持って立てる努力を!」

 

※ASD(自閉スペクトラム症)受動型、A子さんのケースは第3回、Y美さんのケースは第6回参照。

 

※ASD積極奇異型、H美さんのケースは第4回、M子さんのケースは第5回参照。

 

 

【教えていただいた方】

司馬理英子
司馬理英子さん
医学博士
公式サイトを見る

司馬クリニック院長。岡山大学医学部・同大学院卒業後、1983年渡米。アメリカで4人の子どもを育てながら、ADHDについて研鑽を深め、1997年に帰国後、東京都武蔵野市に発達障害専門のクリニック「司馬クリニック」を開院。著書は『のび太・ジャイアン症候群』(主婦の友社)をはじめ、『わたし、ADHDガール。恋と仕事で困ってます』(東洋館出版社)、近著『もしかして発達障害?「うまくいかない」がラクになる』(主婦の友社)など、多数。

イラスト/小迎裕美子 取材・文/山村浩子

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