【教えていただいた方】

1962年生まれ。一橋大学法学部卒業。株式会社RCTジャパン代表取締役社長。過去10年間で1万件以上の化粧品、機能性表示食品、医療機器などの薬機法、景表法案件をコンサル。機能性表示食品制度の普及と啓蒙に努めることを目標に、商品開発、届出支援に特化した機能性表示食品検定協会株式会社を設立、会長に就任。2017年から「機能性表示食品検定講座」をスタート。
「効きます」って、言っていいの?
今回お話を聞いたのは、健康食品の制度や広告の薬事ルールに詳しい専門家、持田騎一郎さん。
RCTジャパン代表として、薬機法(旧薬事法)や景品表示法、そして機能性表示食品制度のコンサルを行うプロフェッショナルです。
ところで。
テレビCMで「効果がありました」と話す人の映像、よく見かけますよね?
でもあれ、具体的に「何に効く」とは言っていないの、ご存じでしたか?
「『何に効く、どこに効く』とは薬機法では言えないため、ぼんやりとした表現になっています。
さらに、本当に効くかどうかのエビデンスがないので、『個人の感想です』『効果には個人差があります』というお断りを添えているんです。
ただ、景表法ではそれもNGなんですけどね」(持田さん)
つまり、薬機法で効能効果をはっきりと言えないので、使用者の声で「なんとなく効果をにおわせている」というのが一般的な健康食品の広告のリアル。
「夜中に何度も…」だけで、わかってしまう時代
例えばノコギリヤシのサプリ。パジャマ姿の中高年男性の写真で「夜中に何度も・・・」のキャッチコピー。
どこに行くのか、何が起きるのかにはひと言も触れていないのに、「トイレの話だな」と察してしまう私たちの脳。
「花粉症に効くと伝えたい場合でも、一般的な健康食品では『鼻グズグズ』も『花粉症』も言えません。
『鼻』も『症』も言ってはいけない。NGだからです。
『グズグズする季節に』なんて、天気か体調かわからない文学的表現でごまかすしかないんですよ」
主語も動詞も目的語もないのに、なぜか意味が伝わってしまう。
それが一般的な健康食品広告の薬事コピー戦略!
言ってはいけないから「薬事回避表現」で逃げているだけ。
逆に「言ってもいい食品」とは大きな差があるのです。
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国がOKを出している「保健機能食品」の3兄弟とは?
健康食品の中でも、機能性(効能効果)を「合法的に」表示できるものがあるのをご存知ですか?
それが「保健機能食品」と呼ばれるジャンル。なかでも代表的なのがこの3つです。
■ 特定保健用食品(トクホ)
国(消費者庁)が審査して許可を出すタイプ。ヨーグルトやお茶でおなじみ。
■ 機能性表示食品
販売者が科学的根拠を添えて、国(消費者庁)に「届出」し、書類審査をすればOK。
近年ぐっと増えています。
■ 栄養機能食品
ビタミンやミネラルなど決まった栄養素に限って、基準を満たせば「届出」なしで、決められた機能性を表示可能。
この3つを「保健機能食品の三兄弟」といいます。
保健機能食品の3つ、何がどう違う?
3兄弟の違いは、ざっくり言うと「審査の厳しさ」と「言っていい内容」の違いです。
■特定保健用食品(トクホ):お墨付き型
国の審査を受けて初めて許可が出る。信頼度は高いが、申請にはコストと時間がかかる。
1991年にスタートしたが、近年は申請件数も伸び悩み。1000製品程度にとどまっている。
■機能性表示食品:届出審査型
企業が科学的根拠とともに国に書類を提出。
2025年4月からガイドラインが改正され、審査が厳しくなった。
届出内容は消費者庁のデータベースで公開されている。
2015年4月スタート。10年間で、9000製品以上が届出受理されている。
■ 栄養機能食品:規格基準型
栄養成分(カルシウムやビタミン、ミネラルなど)が対象。
規格基準を満たせば届出不要で、成分の機能性は表示できる。
例えばカルシウムなら、204 mg~600 mgが一日摂取量で、「カルシウムは骨や歯の形成に必要な栄養素です」と書くことができる。
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このうち、国(消費者庁)の許可が必要なのは先のふたつですが、表示できる内容にも違いが…。
【特定保健用食品(トクホ)】
「お腹の調子を整える」「コレステロールを下げる」など効能効果を書けるが、表現には規制がある。
【機能性表示食品】
「記憶力の維持に」「肌の潤いを守る」「睡眠の質の改善」など、トクホより幅広い表現が可能。
ただし、どちらも医薬品のように「病気に効く」「病気を予防」とは言えません。
だから「言っていい食品」を、どう見つけるかが最重要!
「なんとなくよさそう」ではなく、「何がどれだけ入っていて、何に役立つか」がきちんと書いてある食品を見つけるコツは、やはりパッケージをよく見ること。
機能性表示食品には「機能性表示食品(の文字)」「届出番号」「届出表示」「機能性関与成分」「機能性関与成分の含有量」「栄養成分成分」「摂取目安量」「注意書き」などが書かれています。
機能性表示食品の見方を知れば、より選ぶことが楽しくなりますよね!
取材・文・画像制作/蓮見則子