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老化は遺伝が1割、生活習慣が9割!

例えば、ぽっちゃり体型が「親譲りの遺伝なの」といった話をよく聞きます。確かに、親が実年齢よりも若く見えると、その子どもも若く見えるような気がします。老化も遺伝的な要素が大きいのでしょうか? 抗加齢医学、糖化研究の第一人者である米井嘉一先生に伺いました。

遺伝子自体が生活習慣の影響を受ける!

「実は私は以前には、病的な老化は遺伝の影響が3割、生活習慣が7割と考えていました。しかし、老化に関するメカニズムの解明が進むにつれて、最近は遺伝が1割、生活習慣が9割と考えるようになりました。

 

それはどうしてか? 遺伝子も生活習慣の影響を受けるからです。

糖化 遺伝9割 若い人 老けて見える人

ひとつの細胞には遺伝子が4万~5万個ほどあります。それらの遺伝子がすべて働いているわけではありません。若いときに働くものと、高齢になってから働き出すものがあります。遺伝子にも『オン・オフ』のスイッチがあるのです。

 

遺伝子ごとに、若者パターンと老化パターンがあって、老化のスイッチが入ってしまうと老化するわけです。ですから、いかに遺伝子を若者パターンに維持できるかで、老化スピードが変わってくるのです。

 

その遺伝子の変化を「エピゲノム変化」といい、老化スイッチへの切り替えを誘発します。遺伝子の中のDNAの一部や遺伝子を調整するヒストンタンパク質が、メチル化や脱メチル化という化学変化を起こすことで、遺伝子のタンパク質の合成にオンとオフの切り替えをするのです。

 

例えば、肌にハリをもたらし若々しく保つものにコラーゲンがあります。若いときは、このコラーゲン合成酵素をつくる遺伝子が活発に働くのですが、年齢を重ねると、コラーゲンを壊す酵素の遺伝子のほうが強まります。その結果、肌の老化が進みます。

 

その老化スイッチをオンにしてしまうのが生活の悪習慣です。

 

糖質や脂質、アルコールの過剰摂取、喫煙、運動不足や睡眠不足など。不摂生な生活を続けていると、たとえ若い世代であっても老化スイッチがオンになります。こうなると、必要なタンパク質が合成されず、体の機能年齢の老化が進み、さまざまな機能の低下や不調が表れます」(米井嘉一先生)

 

機能年齢については第3回参照。

 

まずは「水を1杯飲む習慣をつける」! これで老化スイッチはオフに

生活習慣を整えることは必須ですが、もっと簡単な方法があるとか…。それが「水を1杯飲む習慣をつけること」だそう。

 

「ある実験中に、水を飲むだけで遺伝子の働きが変わることがわかったのです。

 

それは、アントシアニンという抗酸化物質の入ったドリンクの効果を調べていたときです。2週間飲み続けたところ、遺伝子の働きに変化がありました。血管が開いたり、血圧が下がるというよい作用をしたのです。

 

一方で、比較対照として水を飲むグループも調べていたところ、朝に1杯の水を飲むだけでも遺伝子の働きに変化が表れました。結論として、水を1杯飲む習慣をつけるだけで、遺伝子によい影響のあることがわかったのです」

 

水だけでよい変化…これなら実践できそうですね。

 

記事が続きます

それ以外に、生活習慣の改善は必須です。心あたりがあるものを改善していくのですが、そこで参考にしたいのが「パイレーツの法則」なのだそう。

 

「パイレーツの法則とは、海賊がどこかの島を占領しようとしたとき、敵の兵隊が10人いたら、その中のもっとも強そうなふたりを先にやっつけると成功するというものです。

 

つまり、生活習慣を改めるのに、いちばん苦手だと思っているところから取り組むといいのです。運動が大の苦手なら、運動習慣をつけることから始めます。甘いものがやめられないなら、甘いものを控えることから始めましょう。

 

自分が苦手と思うこと、あまりやりたくないことから始めると、効果は大きくなります」

 

【教えていただいた方】

米井嘉一
米井嘉一さん
同志社大学 教授
公式サイトを見る

1958年、東京都生まれ。2005年、日本初の抗加齢医学の研究講座、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター/糖化ストレス研究センター教授。日本抗加齢医学会理事、糖化ストレス研究会理事長。公益財団法人医食同源生薬研究財団代表理事。抗加齢医学研究の第一人者として、研究・臨床に従事。近年の研究テーマは「老化の危険因子と糖化ストレス」。著書に『糖と脂で体は壊れる 疲労、病気、老化の原因「糖化」の正体』(池田書店)など、多数。 米井先生 著書 糖と脂肪で体は壊れる 書影 『糖と脂で体は壊れる 疲労、病気、老化の原因 「糖化」の正体』著者・米井嘉一(池田書店)

 

 

イラスト/かくたりかこ 取材・文/山村浩子

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